ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に
長谷川 幸洋ジャーナリスト
プロフィール
テロ攻撃を1年以上前から把握
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。
2023/11/24イスラエルの有力紙ハアレツ
ネタニヤフがテロ計画を知っていた?と報じた
イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていたと
2023/11/30ニューヨーク・タイムズ
攻撃計画の全容を報じた
同紙が入手した ジェリコの壁 と呼ばれる文書によれば
ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった
これは10/7に実際に起きたテロと、ほとんど同じ
文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた
イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も
イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか不明
双方のスパイが暗躍していたのかもしれない
ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある
最初は11/20にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった
ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から異変に気づいていた
男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた
戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた
また高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された
彼女たちは上層部に異変を報告したが無視された
軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちにそれを連絡しなかった
結果的に彼女たちは無防備のままテロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった
彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露した
2023/11/21アメリカメディア、ポリティカヨーロッパ版
ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた
イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は実名でハアレツの取材に応じ
「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」
彼はネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスでありパーフェクト・ストーム(完全な嵐)になると警告していた
最高裁の機能を弱める司法改革案はイスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた
それが敵の攻撃を招くとみたのだ
11/24には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊8200部隊の下士官も内部告発に加わった
彼女はハアレツに匿名で
「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」
こうした流れのなかで、イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていたという特ダネが出てきた
攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズ
「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」
そして
ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していた?
それはテロ攻撃の前から指摘されていた
2021/5/16ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏
〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉
〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた
そうすれば、アメリカの議会で
「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉
〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、ヨーロッパやリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉
つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。
こうした分析は、いまや広く世界で共有されている
2023/10/20歴史家のアダム・ラズ氏はハアレツ紙上で
〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉
〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉
〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉
2023/10/20イギリス ガーディアン
2019/3ネタニヤフ氏が自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している
〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉
政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た
11/21ポリティコ
イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介
〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ニューヨーク・タイムズ報道後の2023/12/1政権のスポークスパーソン、アメリカCNNで
「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」
防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏
「責任は私にある」
世論調査ではニューヨーク・タイムズの報道前から政権与党の支持率が急落している
11/26ワシントン・ポスト
「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」
・・・ネタニヤフさん
国より自分を優先させた?
今日も~
トイレと玄関の吊ものの水やり風景
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