2023年12月9日土曜日

ピンピン コロリは・・・

老いとは何か
体力が衰える・顔がシワシワになる・走れなくなる・病気になりやすくなるetc
一言で定義すると死亡率が上がること
なぜ歳をとると、ヨボヨボになるの?
おそらく多くの人は生き物は全て歳をとると体が衰える
老化は必然で誰もが避けられないetc
それは間違っています
ここ30年ほどで生き物の老化は必然の常識は大きく塗り替えられた
老いは避けられるという認識が研究者の間では広まっています
これは生き物としては決しておかしなことではありません
なぜかというと老化しない生き物が存在するから
歳をとってもなぜか若々しい生き物がいる

ハダカデバネズミというネズミの一種やアホウドリは生きている間
ほぼ完璧な健康を維持し、あらかじめ定められた時がくるといきなり死にます
インドの動物園で飼育されていたアドワイタという名前のアルダブラゾウガメは
死亡時に若いカメと見た目はまったく同じでしたが250歳でした
このように老化しない生き物がいるということは何を意味しているでしょうか
人間を含めて他の多くの生き物はわざわざ老化している
細胞には恒常性を維持するための仕組みが、オートファジー(細胞が自らの一部を分解する作用(自食作用))を含め色々備わっているのです
では、その選択にどのような意味があるの?
進化上有利だったという見方もありましたが、進化学者は否定的
なぜ老化するのかは、いまだに大きな謎

人間は老化のスピードが早いのも特徴
例えば子孫を残すという観点では人間は20~30代での生殖活動が大半
男性の場合は70歳で子どもをつくる人もたまにいますが、ほとんどいないのが実情
ところが死ぬ間際まで生殖活動を続ける生き物はいくらでもいます
人間に近い生き物ではサルは妊娠できる期間が長いことで知られています
サルの種類にもよりますが平均寿命が二十数歳にもかかわらず、二十歳を超えても出産します
子育ての経験があることから年寄りサルの方が若いサルよりモテるの
若い方がモテるのは人間くらい
老化は必然ではなく、多くの生き物は理由がはっきりしないものの、老いることを選びました
そして人間は老いを非常に積極的に選んだ存在である可能性が高い
死は避けられないにしても人間もアホウドリやハダカデバネズミのように死ぬ直前まで若く元気なままであるように生命科学の力でできないかと
そのカギを握るのがオートファジー?
オートファジーが活性化すると老化を防げる可能性が高まります
みなさんの多くはおそらくヨボヨボになりたくないはず
ヨボヨボにならないためにはオートファジーを活性化させればよい
どうしたら生き物の寿命が延びるかは、わかってきています

有名なのがカロリー制限
カロリー制限は一食ずつの摂取カロリーを減らしたり、食べすぎた時はお腹が空すいてから食べるといったプチ断食
食事を全くとらないと当然飢え死にしますので、通常の食事量より減らして活動できる程度のカロリーに下げます
そうすると寿命が延びます。マウスやサルですでに実験されています

他にはインスリンシグナルの抑制があります
インスリンは情報伝達に欠かせないホルモンのひとつです
これをあえてあまり働かないようにすると寿命が延びます

TORシグナルも抑えた方が寿命は長くなるといわれています
TORとはラパマイシン標的たんぱく質と呼ばれるたんぱく質
細胞の成長や代謝を制御しています
これはないと困りますが、やや抑制した方が寿命にはプラス

興味深いのは生殖細胞の除去
生殖と寿命は非常に深い関係にあります
子どもを産むと死ぬ生き物は少なくありません
もう役割は終わったから死んでいいよ、とばかりに死んでしまいます
生殖細胞を取り除いてしまうと長生きします
子どもをつくれないから、なかなか死ななくなります
これはいろいろな動物実験で証明されています
そして、この生殖細胞の除去は人間でも例があります、宦官
中国や朝鮮の宮廷に仕えた宦官は生殖機能を後天的にとりのぞいてしまいます
彼らは40代後半~50代前半で亡くなる男性が多かった頃に平均して70歳まで生きたとの記録もあります
生殖機能の喪失が長寿化の一因となっている可能性がある

ほかにも細胞の工場でエネルギーをつくるミトコンドリアの機能を抑えると長寿化するとの指摘もあります


専門家は寿命延長経路と呼んでいます。
全てに共通するのは、どれもが必要な機能だけれども、機能は抑えた方がいいという点
元気がありすぎると長生きできない
省エネで低空飛行が長生きの秘訣ひけつなのかもしれません
ただ、これらはいずれも、なぜか、ははっきりしていません

生殖細胞の除去によって長寿化するのは、体の持つエネルギーは限られているから
生殖機能を維持するか、その他の機能を維持するかのどちらかに使われるからではないか?そんな単純な話ではなさそう
ここで挙げた5つの経路は互いに関係性もありません
カロリー摂取の抑制と生殖細胞の除去には関係性はなく、連動して起きているわけでもありません
ただ、寿命を決定する理由がばらばらでも、一部の研究者は共通点があるのではないかと考えそれを探しました
それがオートファジーの活動

例えばカロリー制限によってオートファジーが活性化します
飢餓になった場合に栄養を補給するために細胞内を分解するのがオートファジーの第1の役割なので、それと同じ仕組みでオートファジーが活性化するのかもしれません

詳細は省きますが、インスリンシグナルもTORシグナルも抑制されるとオートファジーが活性化しますし
生殖細胞の除去やミトコンドリアの機能抑制も同様
ですからオートファジーが寿命を延ばすには重要かも
実際に実験結果があります
実験には線虫が使われました
あまり馴染みがないかもしれませんが、ギョウ虫の親戚しんせき
線虫は寿命が一カ月程度なので寿命の実験によく使います
寿命が縮んだ、延びたがわかりやすい
実験で線虫にカロリー制限をしたら寿命は延びたのですが
カロリー制限してもオートファジーが機能しないように遺伝子を操作したら、寿命が延びなくなりました
これにより寿命の延長にオートファジーが必要だとわかりました
この際オートファジーを活性化させる成分としてはウロリチンが報告されています
ウロリチンはザクロやベリーなどに含まれます

もうひとつ、わかっていることがあります
線虫やハエやマウス、そしてヒトでも、加齢とともにオートファジーの機能は低下するということが示されました
整理すると
オートファジーがないと延びていた寿命が縮んでしまう
オートファジーは歳をとると減ってしまう
ということがわかりました
研究の結果、オートファジーが歳と共に減るのは
細胞の中にルビコンと呼ばれるたんぱく質が増えることが原因
だった
ルビコンはオートファジーのブレーキ役のような存在
脂っこい食事はオートファジーには悪いのですが
脂っこい食事もルビコンを増加させオートファジーの低下をもたらします
このルビコンが今、オートファジー研究のひとつのカギとなっています

オートファジーの低下を防いだら寿命がどうなるかの実験もあります
この実験結果はみなさんのこれからの健康の常識を大きく変えることにもなるはず
寿命がどうなるかから結果を示しますと
遺伝子操作でルビコンをなくしてしまった線虫やハエの寿命は
オートファジーが活発化することで平均20%延びました
ルビコンを抑えることで寿命の延長がわかっただけでなく予想外の結果もわかっています
シャーレの中で線虫がゴニョゴニョ動いているのをビデオで撮影して、あとでどれだけ動いたかを測定してグラフにしました
そうするとルビコンのない線虫は老いてもゴニョゴニョ動き続け通常の線虫の2倍は動いていました
老化の特徴のひとつには運動量の低下がある
ルビコンを抑えると老いてもとてもよく動いたということは
オートファジーを維持できれば高齢になっても若い頃の体の機能を保てる可能性が
生き物はルビコンをコントロールできれば寿命も延び、老化を食い止められる可能性が

人間の場合、線虫のようにルビコンを操作できません(将来は薬でできるようになるかもしれませんが)
ですが、これまで見てきたようにオートファジーは活性化できます
ルビコンがあっても、高齢になって低下したオートファジーを再活性化することも可能
一方、老化を食い止められるからといって、食い止める必要があるのかというのは非常に重要な問題
老化は自然なのにそれに逆らうのか、ちょっと不自然では
などいろいろ意見はあると思いますが、今、日本では寝たきりや認知症が非常に増えています
医療費の国家財政の圧迫も社会問題になっています
解決策としては死ぬ間際まで元気でいてもらうしかありません
医療費の問題を抜きにしても誰だって寝たきりで生きたくない
大半の人は本音では健康で長生きしたいはず

老化の最大の特徴はさまざまな病気にかかりやすくなること
当然、重症化しやすくなりますし、死亡率も高まります
健康寿命を寿命に近づけることで老化を食い止められないか
オートファジーによって健康寿命が延びるということは高齢になっても病気にかかりにくくなることでもある
哺乳類の場合は老化すると必ず病気になります
それならばオートファジーの低下をもたらすルビコンを抑えることが病気の防止につながるのではと考えて実験すると
ルビコンを抑えてオートファジーを維持すると加齢に伴ってかかりやすい病気にかかりにくくなることがわかってきた

加齢に伴ってかかりやすい病気を加齢性疾患といいます
例えば、認知症の原因となるパーキンソン病や高齢者の失明原因として最も多い加齢黄斑変性、骨折しやすくなる骨粗しょう症などがあります
いずれも現代人にとっては身近な病気
オートファジーを低下しないようにしたマウスの実験では、実際にこれらの加齢性疾患にかかりにくくなる結果が出ています
あくまでもマウスの実験ですが、同じ哺乳類ですので、人間の場合でもオートファジーを活性化することで加齢性疾患を抑えることにもつながる可能性が

オートファジーは免疫力を上げてくれます
細胞内に侵入してきた病原体を捕捉ほそくして分解できますし、ウイルスなどの病原体に対する抗体を作る免疫細胞や病原体を殺す免疫細胞の能力の維持に働いています
ただ高齢者になるとオートファジーが低下するため、そういった免疫力が弱まります
そうなると感染症に弱くなり、肺炎などの炎症が命の危機にもつながりかねません
ワクチンも効きにくくなります
老化した人間の抗体をつくる細胞に納豆などに含まれるスペルミジン(オートファジーを活性化させる成分)をかけたところ
オートファジーが亢進こうしんして、抗体をつくる力が回復したという実験も
オートファジーの活性化は感染症への抵抗力を高める可能性があります
また、スペルミジンは歳をとって低下したがんに対する免疫を回復させます
これはオートファジーを介した効果なのかはまだわかっていませんが、その可能性が高い

脂っこい食べ物を食べすぎるとオートファジーの働きにブレーキがかかり脂肪肝になります
脂肪肝の他にも動脈硬化や糖尿病(糖尿病の95%を占める2型)もオートファジーと関係があります
インスリンを分泌する脾臓ひぞうの特定の細胞でオートファジーに必要なたんぱく質の遺伝子を破壊したマウスはインスリンが出にくくなり糖尿病になりました

パーキンソン病などの神経変性疾患や骨粗しょう症、加齢黄斑変性、腎臓の線維症などはオートファジーを活性化することで抑制できる可能性が高い
オートファジーの働きが鈍ると悪化すると

肝臓でオートファジーが働かないマウスはがんになるという報告が
この実験からはオートファジーが肝臓がんを防いでいる可能性が高いと
ちなみに、ほかの臓器でオートファジーの機能を止めてもがんにはあまりなりません
この理由はまだよくわかっていません

心臓でオートファジーが働かないマウスは、歳をとったり、心臓に負担をかけたりすると心不全になることがわかっています

加齢性疾患である腎臓の線維症以外でも、血液中の尿酸値が上がってなる腎症(腎臓に傷みが生じて腎臓の機能が低下する病気)にも関係があることがわかっています
オートファジーの働きが悪くなると腎症は悪化
健康なマウスでも腎臓でオートファジーが働かないと、歳をとった時に腎臓の機能障害を起こします

これらはオートファジーが低下すると発症したり悪化したりすることがはっきりしている病気です
オートファジーがどのようにして病気を防いでいるかは病気ごとに違いますし、仕組みがよくわかっていないものもあります
オートファジーの研究は人間と関係があることがわかってから飛躍的に増えました
そして研究の多くはまだ途上にあります
これからオートファジーと病気の仕組みがいろいろわかってくるでしょうし、さらに多くの病気との関係もわかってくるでしょう
オートファジーは神経細胞や内臓、筋肉、皮膚などあらゆる細胞に備わっているだけに、その働きの全貌はまだまだ見えていません。

・・・いわゆる新陳代謝?
ピンピン コロリは
運でなく努力?etcで実現できるかも・・・

今日も~
セッコク/Dendrobium moniliforme お局様

12月はじめ
そろそろ狂い咲の花がトボってきた
9月の終わりから咲いてたんで
2ケ月咲いてた

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