2023年2月18日土曜日

愛党愛国不忘初心

中国の暗部、権力と癒着して弱者を叩く暴力団 天安社

ニューヨーク市立大学政治学教授の夏明(かめい)さん
10年以上前に中国で黒社会(暴力団)の調査を
一般的に暴力団は民間の結社から発展したものが多く、通常は政府や官僚が民衆に対して正義を提供できない時に何らかの作用を発揮した

現在の中国における暴力団の構成員や組織は昔の中国と比べて違いがあると
・・・いや同じ
昔の暴力団は、水滸伝であろうと哥老会(かろうかい)や紅幫(ほんぱん)、青幫(ちんぱん)といった秘密結社であろうと、彼らはまず初めに政府の役所に抵抗した
彼らは一種の庶民の正義、あるいは暴力団の正義と呼ばれるものを提供していたが
後に暗黒面に堕ちた
で、今も同じく・・・

2022/6/10唐山打人案(唐山市暴行事件)が
唐山市公安局路北分局は事件に関して、事件発生直後の状況説明に続く第二弾
6/10付で警情続報(重大事件続報)を発表
唐山警察は全力を挙げての業務遂行を経て、6/10に唐山市路北区の某焼肉店で発生した、因縁をつけて騒動を起こした暴行事件の容疑者のうちの主犯である陳某志と劉某を逮捕

初歩的捜査で判明したところでは
主犯の陳某志は焼肉店に入ると、食事中であった女性4人の中の1人に対してセクハラを行った上で殴打した
その後、陳某志に同行していた劉某などが店内へ突入して被害者を殴打し、被害者らを店外へ引きずり出してさらに殴打を続けた
事件発生後に犯罪容疑者は現場から逃走
現在2名の女性が医院で治療を受けているが、負傷の状況は安定しており、生命の危険はない
別の女性2名は比較的軽傷であり医院に入院はしていない
本日、主犯容疑の2名はすでに法に基づき刑事拘留しており、その他の犯罪容疑者は現在全力を挙げて逮捕すべく追跡中である
警察は法に基づく処置を厳格に行い、断固として被害者の合法的権利を擁護する
 唐山市公安局路北分局
 二〇二二年六月十日
(注)陳某志の実名は陳継志(事件当時41歳)、劉某の実名は劉涛(事件当時33歳)

この事件のニュースが中国全土へ報じられると
この種の流氓(ならずもの)がのさばるのは、『公安警察が「黒社会(暴力団)」と癒着し、彼らの保護傘(後ろ盾)として機能し
彼らの犯罪に手心を加えているからだ』という厳しい非難が全国で巻き起こった
これに驚いた中央政府公安部は河北省公安庁経由で唐山市公安局に対して当該事件の容疑者9人(男7人、女2人)を速やかに逮捕するよう命じた
結果、9人の容疑者全員が6/11までに逮捕されたのだったが、これは未だかつてないスピード逮捕だと世間は驚きを以て受け止めた
その後、主犯の陳継志や劉涛の関連から新たに19人が組織犯罪事件の容疑者として逮捕
2022/9/23に河北省廊坊市広陽区人民法院(地裁)で彼ら28人に対する刑事裁判の判決が下され
主犯の陳継志を懲役24年、その他27人には個々に懲役11年から6か月の刑が言い渡された

一方、これに先立つ8/29河北省紀律検査委員会は同委員会のホームページに
悪勢力(反社会勢力)の保護傘(後ろ盾)として機能していた容疑で唐山市公安局所属の役人15人の名前を公表
そこには唐山市路北区副区長で唐山市公安局路北分局長の馬愛軍を筆頭に路北分区派出所長など8人の管理職が含まれていが
その容疑は紀律・法律違反、職権濫用、贈収賄などであった

これを知った中国国民
「責任追及は市公安局の分局長止まりで、毎度のことながらトカゲの尻尾切りで一件落着だ」

ところで、2022/6/10に上述した事件の発生を報じた中央電視(中央テレビ)のニュース
事件の当事者9人中の3人は江蘇黒帮(江蘇省を根城にする犯罪組織)である天安社(正式名称:天安社兄弟商会)の構成員であり
彼らは価格が数百万元の高級車メルセデス・マイバッハを運転して逃亡中
当該車のナンバープレートは江蘇省の特別ナンバー蘇M-A7777であると報じていた

天安社とは起源を江蘇省に持つ黒帮(犯罪組織)
中国では非常に名高い存在
2018/1/24に中国共産党中央と国務院は連名で
『掃黒除悪(犯罪組織と悪党を一掃する)闘争』を3年かけて実施する旨の通知を出した
この闘争によって多くの暴力団や犯罪組織が打撃を受けたにもかかわらず天安社に大きな影響は出ていない
天安社のメンバーは全員が成年男子
常に坊主頭、全身に刺青(入れ墨)を入れるのが掟(おきて)?
彼らは集会のある時には
メンバー全員が白の短パンに黒のTシャツでいなせに決めたり、刺青の上半身を晒(さら)して白の短パンを穿くのが常
彼らは天安社メンバーであることを示す身分証として金属製の札を所持している
そこには所持者の天安社内における通称である
”天安XX(注:XXは漢字)”、”生年月日”、”天安社兄弟商会”の文字
さらに天安社内の登録番号である”結義兄弟:(数字)哥”(「哥」=兄)が刻まれている
その下には大きな文字で”愛党愛国不忘初心(共産党を愛し、国を愛し、初心をわすれない)”
と刻まれていた

2015/8/9河北省涿州市松林店鎮楼桑廟村にある三義宮(小説『三国志演義』の第1回で劉備と関羽、張飛の3人が『桃園結義(桃園で結んだ義兄弟の契り)』を行った場所)に天安社のメンバーが集結
その人数は109人で、小説『水滸伝』に登場する英雄の人数と同じ
彼らは三義宮で桃園結義をまねて、結義(義兄弟の契り)の儀式を行うために集合
彼らは桃園結義で3人の英雄が行ったのと同様に
「不求同年同月同日生、但求同年同月同日死(同じ年月日に生まれることを求めないが、同じ年月日に死ぬことを求める)」と天に誓った

そこで、天安社とは何か?
端的に言えば、上述した”愛党愛国不忘初心”を標榜した暴力団
彼らは中国各地で住民を強制立ち退きさせる現場や、反日デモの際に行われた破壊工作の現場、さらには反政府運動を鎮静化する現場で官側を支援することに活躍
彼らが何で金を稼いでいるかは?
砂利採取業界や葬儀業界などに利権を持ち、独占的に暴利を享受?
新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染で死亡した人々の火葬で千客万来の大儲け?

10年以上前にメディアが報じたところによれば
中国には少なくとも100万人以上の暴力団構成員が
その特徴は
(1)義兄弟の契りを結ぶ方式で徒党を組む
(2)内部では分業体制を取り、紀律は厳正である
(3)隠語や暗号を使う
(4)活動は隠密裏に行う
(5)政治的な保護傘(後ろ盾)を持つ、役人と悪党が結託、公安警察と悪党が結託
要するに、中国共産党と中国政府は今までに何度も黒社会(暴力団)一掃のキャンペーンを行って来たが
それは表面上のものであり、そこには天安社のような愛国黒帮(愛国犯罪組織)の例外がある

香港メディアは天安社メンバーの生活ぶりを
酒を飲み、カラオケを歌い、焼肉や海老・蟹のといった高級料理をたらふく食べ、暴行、ゆすり、たかりに、用心棒代の徴収をして、豪華な暮らしを享受しているが、その中の多くが質屋を営業しており、一部のメンバーは前科持ち

唐山市暴行事件では
事件の容疑者9人は事件発生翌日の6/11までに全員がスピード逮捕されたのだったが
その前後に 唐山市から約150kmの距離にある同じ河北省内にある廊坊市公安局発表
「河北省公安庁の指名により本件は廊坊市公安局広陽分局が捜査を担当する」
このように事件発生地点の地元公安局に代わって別地域の公安局が事件の捜査を担当することを中国語で”異地偵辦”という
地元公安局が犯罪集団と結託している可能性が高い場合などに実施
現在の唐山市公安局長である趙普進が元廊坊市公安局長であり
その在職中に廊坊市の公安部門を挙げて犯罪組織と悪党を一掃するキャンペーンを実施
成功させた実績に基づき、廊坊市公安局広陽分局に”異地偵辦”の白羽の矢が立った
のこのために事件で逮捕された28人の裁判は廊坊市広陽区人民法院で行われた
唐山市暴行事件を契機として15人もの唐山市公安局員が腐敗の容疑で摘発されたが
”異地偵辦”が実施されなかったならば、唐山市公安局内の腐敗局員により唐山市暴行事件はいつの間にかうやむやにされ
逮捕された28人も罪状軽微として順次釈放されていた可能性が
その理由付けとされるのが、天安社が標榜する”愛党愛国不忘初心”の精神
中国共産党と中華人民共和国の繁栄を図るために尽力するという大義名分
その実態は腐敗役人が暴力団のおこぼれで私腹を肥やすという構図

中国の黒社会(暴力団」が『愛党愛国』を標榜する限り、彼らが一掃されたり、撲滅される可能性は皆無
逆に言えば、暴力団員が労働者や農民による抗議行動を鎮圧するために雇用される状況が続く限り
役人と暴力団や公安警察と暴力団の癒着が消滅することはない

・・・前には日本でも
今も?

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