2021年5月19日水曜日

ネットのワナ2

 スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン氏
人間の進化の見地から、スマホによる人間の脳や心身への影響を分析してきた

私たちは1日に平均して2600回以上スマホを触り、10分に1回スマホを手に取っている
3人に1人は(18歳から24歳では半数が)夜中にも少なくとも1回はスマホをチェックする
今やあまりにも当たり前に私たちの生活に入り込んでいるスマホやSNS
しかし、スマホが絶え間なく私たちの気を散らし続けることによって
メッセージのやり取りやSNS、エンターテインメントやゲームなど、たくさんの刺激をもたらすスマホがドーパミンを放出させ
その結果、人間はスマホがないと麻薬が切れたように禁断症状を感じることがある
人間はどれほど強くスマホに依存している?

アンデシュ・ハンセン氏(以下、ハンセン)
人間の脳は、考えたり、心地よいと感じたりするためにあるのではなく
生存のためにある
狩猟・採集をしていた時代と現代社会とでは人間のライフスタイルは大きく違う
しかし、生物学的には人間の脳は変わっていない
私たちの脳はデジタル社会に適応するようにできてない
私自身もスマホのない生活はできないし、その利便性はよく理解してる
デジタル社会のすべてを否定するつもりはない
しかし、スマホが一般的になってからのこの10年間、人類の行動やコミュニケーション、お互いを比べ合う手段は非常に大きく変化してる
それは私たちの脳にとって未知の世界
長期的な影響についてはまだ何も分かっていない
私たちはスマホを気にしないで1日を過ごすことは、もうできなくなってる
新しいニュースがあるかもしれない、メールやメッセージが来ているかもしれない
自分のスマホがどこにあるか、常に把握しておきたい
ドーパミンは、このかもしれないという期待に反応
ある音が聞こえたらジュースがもらえる
というマウスの実験が
マウスのドーパミンレベルは、実はジュースをもらって飲んでいる時ではなく
音を聞いた時に上昇
さらに音が聞こえてもジュースが時々しかもらえない方が、ドーパミンの量が増えました
脳はこのおそらくもらえるだろうという状況が好き
だから当たるかもしれない、当たる可能性があると期待するギャンブルが好き
しかし、このもしかしたら〜かもしれないという不確かな結果への偏愛は、デジタル社会ではネガティブな影響をもたらす
例えばSNSに写真を投稿したら、友だちがいいねを押してくれているか
何か更新がないか、スマホを手に取って確かめたいという衝動をよりかき立る
いいねが増えたかもしれないから見てみようと思うのは
ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそ勝てるはず、というのと同じメカニズム

スウェーデンだけではなく全世界で、精神的な不調を訴える人は増えてる
とりわけ若者に顕著です
WHO(世界保健機関)は、生まれてから最初の数年で脳が大きく発達するので
5歳以下の子供はデジタル・デバイスの使用に注意すべきだと警告
スウェーデンでは、この20年で睡眠障害の若者が11倍に増加
ある調査によると若者の約3分の1が、スマホをベッドの中に入れて寝てる
生まれてからずっとスマホが手元にあるような子供や若者への長期的な影響には特に注意し、心身へのリスクを回避する必要が・・・

人間の精神や脳がどう機能しているか
スマホが人間の脳にどう影響するのか
心理的にいかにスマホに取り込まれていくか
デジタルテクノロジーの素晴らしさとともに、その強い副作用についてももっと議論し、理解すべき
そして人間の生物性や精神性に適した、依存性の低い技術があればそれを選択していくべき

IT企業のトップやスマホやアプリなどの開発者は、人間が快感や刺激に弱いとよく認識していて
スマホに依存するような仕組みを作っている
その一方で、自分たちが生み出したテクノロジーに恐怖を感じ
罪悪感を持っていると・・・
IT企業の開発者は、私たちの関心や注目をいかに引きつけるか
心理学や脳科学を応用して、私たちの脆弱な精神に訴える様々な仕組みを生み出している
これらの商品を提供しているIT企業の幹部たちが自分たちは非常に注意深く、スマホやタブレット端末を使用している
自分の子供にはスマホを与えてない

アップルの創業者スティーブ・ジョブズは世の中にiPadの素晴らしさを説きましたが、自分の子供にはiPadに触る時間を厳しく制限
しかもそのことを黙っていました
マイクロソフト社のビル・ゲイツも、自分の子どもが14歳になるまでスマホを持たせなかった
アップル社のCEOティム・クック
「もしあなたが人の目よりスマホを見ている時間が長いなら、それは間違ったことだ」
いいねボタンを開発したジャスティン・ローゼンスタイン
ヘロインに匹敵する依存性があるとして自分のスマホに使用を制限するアプリをインストール
「製品を作る時には最善を尽くしたが、その思ってもみなかったような悪影響に気づいたのは後になってからだ」
テクノロジーに精通している人ほど、そのネガティブな影響を知ってる

学校ではタブレット端末の導入など教育のデジタル化が進められてる
しかし、学習効果を見ると手書きの方が記憶しやすく、
マホやタブレット端末はインターネットと繋がっているので勉強に集中しきれないという調査結果が
同じ文章を紙(本)で読むのと、パソコンやスマホのスクリーン上で読むのでは、紙の方が多くを学ぶことができ学びの質も高くなる
書かれている内容がシンプルなことであればそれほど違いはないのですが
内容が複雑になるほど紙の方が深く理解できる
就学前の子供を対象にした調査で手で紙に書くという運動能力が文字を読む能力と深く関わっている
小さい頃から長時間スマホやタブレット端末を使用している子供は
のちのち算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できていないという警告も
成績が上位の生徒は、学ぶツールにそれほど大きな影響を受けません
しかし勉強で苦労している子たちは、紙とデジタル・デバイスでその学習効果には大きな差が
タブレット端末より紙で学んだ方が、成績が上がることが分かった
集中力や記憶力、言語能力については、スマホをやっている時間が短い子供と、睡眠時間の長い子供の方がいい結果が出てる

人間は複数のことを同時にはできない
マルチタスクは集中力や思考力を奪う
しかしスマホはながらになりやすい
スマホは人間の思考する能力を奪っている?
人間は二つのことを同時に行うことはできません
できていると思っていたとしても、それは一つの行動からもう一つの行動へ移っているだけ
短時間に行ったり来たりするプロセスを繰り返して、前にしていたことに意識を奪われている
効果的に脳を使っていない
マルチタスクをこなすことに自信がある、という人も
実際はマルチタスクが得意と答えた人、のほとんど、集中がかなり苦手だという調査結果
が・・・
現代社会において価値があるのは集中力
勉強をしながらSNSをチェックしたり、スマホをスクロールしながら仕事をしたりしていては、学ぶために余計な時間がかかり脳にとっても非効率
深い思考に辿り着かないし、学ぶ喜びもないし、生きる助けにもなっていない

邪魔が入ると気が散るのは人間が生きるための習性
かつて人間は、現在のように癌や心臓病で亡くなるのではなく
動物に襲われ、感染症にかかり、飢餓や事故、争いによって死に、寿命も短かった
そういう世界では常に周囲に注意を払う必要があった
集中力は重要だが切れやすいもの
私自身も、集中したい時や読書の時、患者と会う時、原稿を執筆する時は、集中力が削がれないようにスマホを別の部屋に置くようにしてる

スマホをたくさん使うほど、なぜ人はうつに?
睡眠や運動、人と会うことはもっとも重要
だから、寝なくなり、運動しなくなり、実際に人と対面する機会も減ると不安やうつになりやすくなる
大事なことはスマホで何をするのか、ではなく
スマホを使うことによって何をしなくなるのか

SNS上で自分と他人を比較することが大きなストレス
これはとくに思春期の女性に強い影響
男子はSNS利用よりゲームに費やす時間が長いので影響が少ない
SNSには他人と自分を比べる構造的な性質がある
全世界的にメンタルヘルスを脅かす
自分がヒエラルキーのどこに位置しているのかという認識は、私たちの精神の健康に大きく関係する
ヒエラルキーの中で下降していると感じると
みんなより自分がだめだと思って不安感やうつ症状が増す
人間は150人くらいのコミュニティの中の、さらに20~30人との比較の中で生きてきた
しかし、SNSによってヒエラルキーの形成や認識をする対象の人数が激増
他人の体型や成功、お金、持ち物すべてがあなたを脅かす
本当は、それは人生そのものではなく見かけの一面に過ぎない
が、それは10代や20代の若い人にはわからないかもしれない
みんなが自分より賢く、美しく、成功しているように感じてしまう
1日に4~6時間もスマホに触れることによって、若者の不安とうつのリスクはより高まる

友人や家族とのやり取り、ニュース、情報検索、ネットショッピング、娯楽すべてがスマホの中にあり、なかなか遠ざけることができない
私自身もスマホなしでは生活できませんが、よく眠り、集中力を高めて、元気に過ごしたい人は、例えば次のようなことをやって

・自分のスマホの利用時間を把握する
・集中したい時は別の部屋に置く
・人と会っている時はスマホを遠ざけて目の前の相手に集中する
・学習能力が低下するので教室では使わない
・寝る時には電源を切る
・SNSでは積極的に交流したい人だけフォローする
精神科医として、患者が自分の感情を理解して言語化し、苦しみを言葉にできれば対策が立てられ、治療に繋がる
スマホやSNSによるストレスを言葉にできれば、スマホに翻弄されない?
不安やうつの症状は、必ずしも病気というわけではなく人間として正常な反応
人間が生存し、繁殖するためには、周囲に注意を払い警戒し、事故など悪い出来事が起こるかもしれないと恐れることは非常に重要
時には頭からブランケットを被って隠れることも、生き抜くためには必要
・・・ただし、実際の危険への不安と、自分の頭の中で作った不安を分けて考えないと
メンタルヘルスの治療のゴールは、患者に自分の精神を舞台に上げて、自分で客席から見てもらうこと
自分の感情を一歩下がって客観視、自分の思考を観察する
言葉にしてストレスの理由を見極めて距離をとることをメタ認知と言う
これは非常に意味のあることなので、ぜひやってみて
このメタ認知を今のデジタル社会に援用すると
一歩下がってだから私は今スマホを手に取るのだ、と理解することができる
無意識にスマホを弄ってしまうのではなく
自分のドーパミンシステムがスマホに乗っ取られていると自覚することができる

・・・ソノ果実だけを得て
ソレに支配されない生活・・・
できないことは無いと・・・

今日は~
ツクモドウダンツツジ/Enkianthus sp

今年は、早めに室出ししたせいか
ちゃんとした?花
小ぶりで、キュっと締まった花
いいわ~

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