2020年12月25日金曜日

CO2をジェット燃料etcに

航空業界はこの10年、ジェット機が吐き出す二酸化炭素(CO2)を相殺するために、業界全体のカーボンフットプリントを世界的に減らす方法を模索してきた
植林プロジェクトや風力発電所など、いわゆるカーボンオフセットのプログラムの導入
サンフランシスコやシカゴ、ロサンジェルスの空港は、ヨーロッパにある十数カ所の空港とともに環境に優しい代替燃料へ切り替えた
2020/12/20付の学術誌Nature Communicationsより
オックスフォード大学の研究チームが、あらゆるガス燃焼エンジンから排出される温室効果ガスであるCO2をジェット燃料に変えられる可能性のある実験的プロセスを考案
鉄をベースにした化学反応を利用するこのプロセスがうまく作用すれば、航空機からのCO2排出が実質ゼロになるかも・・・
オックスフォード大学化学科のシニアリサーチフェロー シャオ・ティアンツン(肖天存)
「気候変動は加速しており、大量のCO2が排出されています」
「炭化水素燃料のインフラはすでに実現しています。このプロセスによって気候変動の影響が軽減され、現在あるCO2インフラを持続可能な発展のために利用できるようになる可能性があります」
石油や天然ガスなどの化石燃料を燃やすと含有される炭化水素がCO2や水になりエネルギーが生み出される
今回の実験はそのプロセスを逆転させ有機的燃焼法(organic combustion method:OCM)という方法でCO2を燃料に戻す

クエン酸と水素に熱(350℃)を加え、鉄・マンガン・カリウムでできた触媒をCO2に加えてジェットエンジンで使える液体燃料を生み出すことに成功
実験はステンレススティールの反応炉で実行され生成された燃料は数g
実用段階では大量の温室効果ガスを工場もしくは空気中からじかに取り込み、それを環境から取り除くことになる
大気中からCO2を取り除けば温暖化の抑制に効果がある
しかし世界のCO2排出はここ数十年間で増え続けており、このままいけば・・・

シャオと研究チーム
今回の新たな手法は水素と水を燃料に変える水素化と呼ばれる既存の方法よりコストが安くなると説明
その主な理由は消費電力が少ないこと
製鉄所やセメント工場、石炭燃焼式の発電所の隣にジェット燃料プラントを設置し、余分なCO2を回収して燃料を製造することを想定
大気からCO2を吸い取る直接空気回収と呼ばれる方法も使える可能性が
利用できる触媒は地球上にふんだんにあり、また高付加価値の化学物質を合成するほかの方法よりも手間が少なくて済むと論文で説明している

デイトン大学で機械・化学エンジニアリングを研究する准教授のジョシュア・ヘイン
「ほかの方法とは明確に違いますし、実用性があるように見えます」
「大規模化は常に問題になります。そして大規模化した際には想定外の事態が新たに生じるものです。それでも長期的な解決策という観点では、炭素循環型経済は間違いなく未来の選択肢のひとつでしょう」

こうした炭素循環型経済(サーキュラー・カーボン・エコノミー)においてCO2は、廃棄物の発生源であると同時に、燃料源にもなる
代替施設としてのジェット燃料プラントを風力や太陽エネルギーから生み出されたグリーンな電力で稼働できるなら効率的にCO2を再利用できる

オランダ企業のSkyNRGで未来の燃料部門のプロジェクトリードを務めるオスカル・メイジャリンク
ジェット燃料とCO2の発生源が、両方とも持続可能な方法で生み出されることになるSkyNRGは多くの空港向けに持続可能な航空燃料を生産・売買している
「持続可能な電力の使用が求められています」
「製鉄所から排出されたCO2を使う場合、その製鉄所自体をカーボンニュートラルにするにはどうしたらいいのかという課題があります。理想的な解決策は、あらゆる産業の持続可能性を高め、それを利用して直接空気回収を実施することです」

現在さまざまな代替燃料の検証が進んでいる
都市のごみやわら、木質バイオマスなどetc
廃棄された食用油も研究対象

シャオは2006年にグリーンな燃料の企業としてOxford Catalysts(現在はVelocysに改名)を創業した
Velocysは都市ごみを原料として使うイギリスの施設において、シェルやブリティッシュ・エアウェイズ向けの代替航空燃料を開発している
またミシシッピ州のプラントでは古紙や木材からトラック用のディーゼル燃料を生成している
今回の新たなCO2変換技術について業界大手のパートナー数社と交渉中
「十分に実現可能なものです。しかし、プロセスを最適化して効率を改善する必要はあります」

今日は~
スズラン/Convallaria majalis var keiskei

正当派 日本スズラン近影
5月ですね~

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