2022年10月12日水曜日

グリーン経済が・・・

EVシフトとグリーン経済の弊害
昨年から今年にかけて、電気自動車(EV)の車載電池に含まれるリチウムやニッケル、コバルトなどの価格が高騰
元々、これら鉱物資源(ミネラル)の市場価格は上下動が激しい
たとえば一昨年の末頃に付けた直近の底値と比べると
今年はリチウムが約9倍
ニッケルやコバルトなどは2~3倍
こうした資源価格の高騰には、供給と需要の両サイドが影響してる

まず供給面では、2020年以降の新型コロナ禍や今年に入ってからのロシアのウクライナ侵攻などによるサプライチェーンの混乱が
これにより市場に出回るニッケルをはじめ各種の鉱物資源が不足した
一方、需要面ではEV市場の急成長が大きな要因の一つ
2020年頃から電気自動車の販売台数は、中国・欧米市場を中心に毎年ほぼ倍増の指数関数的な成長局面に
今年に入っても、その勢いは衰える気配がなく、おそらく年末までには世界で発売される新車の約10台に1台はBEVに?

これらの電気自動車には、従来のガソリン・エンジン車(conventional car)の何倍もの量の鉱物資源(minerals)が使われている
EVの販売台数が急増すれば、当然リチウムをはじめミネラルの需要も急激に高まる
これが供給面での逼迫と相まって資源価格の高騰へ
銅や亜鉛、あるいはリチウムやニッケル等のレアメタルは単にEVのみならず
風力・太陽光発電のような代替エネルギーにも大量に利用されている
今後、自動車のような交通手段や発電設備など社会インフラが脱炭素化(グリーン経済)の方向へと進めば、当然そこで使われるミネラルの量も急増 

つまり世界は今、20世紀の経済活動を支えた化石燃料の象徴である石油から
21世紀のグリーン経済を支えるミネラルの時代へと大転換を遂げようとしている
昨年から今年にかけての鉱物資源の価格高騰は、ロシアのウクライナ侵攻など一時的な要因はあるものの、基本的には世界経済のベースとなる天然資源の歴史的な転換を先取りした動きと見ることもできる
これらの貴重なミネラルを求めて今、グローバルな資源争奪戦が加熱
アメリカや中国のような超大国に加え、ヨーロッパや日本、韓国など各国・地域の企業や政府機関等が世界中の資源産出国に足を運び
それら鉱物の採掘権を獲得しようと躍起になっている

かつて20世紀の物質文明を支えた石油や天然ガスなど化石燃料を産出(Extraction)するのは、アメリカや中東、ロシアなど世界でも一部の国や地域に偏っている
これに対し21世紀のグリーン経済を支える各種の鉱物資源ではチリやアルゼンチン、インドネシアやフィリピン、コンゴ民主共和国さらにはオーストラリア等、かなり広範囲の地域に産出国が分散している
これら広範囲の国や地域で産出されるレアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)等のミネラルを精錬・加工Processing)する工程は、ほぼ中国に集中
本来、世界各国に分散して眠っている様々なミネラルは結局のところ中国へと流れ込み
そこで何らかの形で製品化されている
特にEVの主要部品となるバッテリー(二次電池)では、それに必要な鉱物資源の採掘(Mining)から素材加工(Material processing)
中間製品のバッテリー・セル、そして最終製品の電気自動車に至るまで
サプライチェーンの大部分を中国が握っている

このバッテリーに代表されるグリーン経済のサプライチェーンを独占するため
中国はこれまで国を挙げて取り組んできた
2015年、習近平政権は中国製造2025と呼ばれる国策を打ち出し
それまでの繊維業のような労働集約的な産業から
ITのようなハイテク産業へと得意分野の転換を図った
そこに含まれる重点項目の一つが
EV用バッテリーや太陽光・風力発電などに必須となる各種ミネラルの確保だった
この政策が打ち出されるや否や、中国の資源開発会社は政府の支援を後ろ盾に世界中のミネラル産出国へと進出していった
それが最も露骨に現れたのが、中央アフリカのコンゴ民主共和国におけるコバルトを巡る動き
コバルトはEV等のリチウムイオン電池の正極材として使われる重要なミネラル
現在、世界のコバルト産出量の約7割はコンゴで採掘されている
中国政府はコンゴ政府との交渉で、中国がコンゴ国内の電力網や道路、病院などインフラ整備を肩代わりする見返りに
コンゴ側は中国の資源開発会社にコバルトの採掘権をほぼ独占的に与える約束を取り付けた
その一方で中国政府はコンゴに進出した資源開発企業を財政的に支援
コンゴ国内にある19のコバルト採掘場のうちの15は中国企業によって買収された
そのための総額$120億以上もの費用は、主に中国の国営金融機関による融資等で賄われた
こうした中国政府の支援によって、特に中国の資源開発最大手であるチャイナ・モリブデン(CMOC)は2016年と2020年
それぞれコンゴでコバルト生産量のトップ1、2を記録する採掘場を手に入れた

これらのコバルト採掘場は元々アメリカの資源開発会社が所有していた
深刻な経営不振により手放さざるを得なくなった
しかし、そのあまりの経済的な重要性から2020年以前には国務省関係者が当時のトランプ政権に中国企業による買収を阻止するよう促したが
トランプ大統領は聞く耳を持たなかったとされる
トランプ政権は国連気候変動条約の枠組みパリ協定を離脱したことからも明らかなように
EVやグリーン経済よりもむしろ自国の石炭産業を保護する道を選んだ
こうしたアメリカ側の言わば失政にも助けられ
中国はコバルトに代表される鉱物資源の世界的サプライチェーンを着々と確立していった

CMOCなど中国の資源開発会社はコンゴの採掘労働者を低賃金、かつ劣悪な環境下で働かせている、といった国際的な批判が浴びせられている
また中国政府がコンゴ政府に約束したインフラ整備も忠実に履行されていない
いずれコンゴ政府が中国企業の立ち退きを要求してくる可能性も?

EVシフトとグリーン経済化は、本当に地球にやさしい?
結局天然資源の大量消費いう意味においてはこれまでと何も変わらない?
2021年、アメリカでバイデン政権が誕生すると、それまでのトランプ政権の方針を180度転換してグリーン経済へと舵を切った
政府機関などを通して世界中の鉱物資源の探索・確保に乗り出しているが
基本的には市場経済の国である以上、企業努力が中心にならざるを得ない
たとえばEVメーカーのテスラは最近、南太平洋のニューカレドニアにあるフランス植民地時代からの伝統的鉱山の採掘権を手に入れ
ここで車載電池に使われるニッケルの自主生産に乗り出した
ただ、テスラの進出以前から、こうした鉱山を運営する会社と
そこで働く先住民族との間で採掘権や労働環境を巡る争いが絶えないなど
難しい問題を抱えている
アメリカにとってリチウムの確保も喫緊の課題だが
いわゆるリチウム・トライアングルと呼ばれる南米のチリ、ボリビア、アルゼンチンの主要埋蔵国はいずれも左派政権
アメリカ企業の進出を快く思っていない
もっとも、これらの国々はリチウム採掘場等を国有化したくても、そこから十分な量の鉱物を産出するノウハウを持っていない
本来ならアメリカをはじめ西側企業の技術力を活用したい
いずれにせよ海外での資源開発が難しいアメリカは最近、国内に眠るリチウム資源の活用に乗り出した
リチウムを取り出すには、鉱山等の鉱石からリチウムを採取したり
リチウムを含んだ、かん水と呼ばれるアルカリ塩水を地下からくみ上げたり、巨大な湖から吸い上げたりして、これを蒸発させることで他の成分から分離するなど
いくつかの方法がある
カリフォルニア州やテネシー州をはじめアメリカには、これらのリチウム資源が豊富に眠っているが
いずれの採取方法でも地下水の大規模な汚染を引き起こすなど
環境破壊の危険性を抱えている
それでもアメリカ政府がゴーサインを出したことによって
巨大資本を有する資源開発会社やGM(ゼネラルモーターズ)のような大手自動車メーカーが
アメリカ内のリチウム資源開拓に向けて動き出している

ただ、もし現在のペースで世界のEV市場が拡大した場合
どれほどの鉱物資源があっても足りないと見る向きが強い
このため天然資源の最後の宝庫とされる海底にまで各種ミネラルを求めて探索する動きが進んでいる
太平洋深海の海底には銅やニッケル、コバルト、マンガン、リチウムなどを豊富に含んだ岩石が大量に眠っている
仮に、これらの鉱物資源を自由に使えるようになれば
今後極めて長期間にわたって世界のEVバッテリー生産を賄えるとする見方も
すでに国連の外郭団体による環境影響評価などの調査を経て
早ければ今から数年以内にもアメリカの資源開発会社などを筆頭にこれら海底資源の商業利用が始まる
ところが深海に眠る鉱物資源を採取するためには、掘削船につながれた水中ブルドーザーのような機械で海底を掘り起こす必要がある等
拙速に進めれば広大な深海の生態系を破壊してしまう恐れも

海はあらゆる生命の源である以上、その生態系を傷つけることは取り返しのつかない事態を招いてしまう
本来、EVやグリーン経済は気候変動対策を目的としているはずだが
皮肉にも、そのために必要となるミネラルなどの資源開発が
気候変動に匹敵するような環境破壊を引き起こす可能性が・・・

結局、20世紀の石油にせよ21世紀のミネラルにせよ
大量の天然資源を消費するという点で人類は本質的に変わらない
EVシフトやグリーン経済がようやく始動した今
そんなことを言って水をかけるのは良くないかもしれない
が、逆に私たちが最初からそのような危機感と心構えをもって臨めば
今回の結果はだいぶ違ってくる?

・・・甘い
ヒトは短期的な利に奔る

今日は~
セネシオ アルティクラタス/Senecio articulatus

多肉の植溜めに出てきた
多分、根っこが植わってた
コイツがプックラしてくるのは何時?

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