2020年9月21日月曜日

低出力・長寿命原子力電池


ブリストル大学教授で材料工学の専門家であるトム・スコット 仲間の研究者たちとドラゴンエッグの低出力・長寿命原子力電池の開発に取り組んできた。化学反応によって電気をつくる化学電池とは異なり、スコットたちの電池は放射能を帯びた人工C14ダイヤモンドから放出される高速の電子(β線)を電力に変換する。このため電池の寿命は数千年で充電も交換も必要ない。

2020/8スコットとブリストル大学の化学者ニール・フォックス、ダイヤモンド電池の商用化に向けてArkenlightという会社を立ち上げた。爪くらいの大きさしかない電池はまだ試作段階だが、既存の原子力電池と比べて効率がよく、電力密度も高い。スコットたちは電池の設計が決まり次第、量産に向けた生産設備を建設する予定だ。そして24年の市販化を目指している。ただし、ノートPCのような身の回りにある電化製品に搭載されることはないだろう。スマートフォンのリチウムイオン電池やリモコンに入っているアルカリ乾電池はガルバニ電池と呼ばれ、短時間に大量の電力を供給する用途に向いている。

リチウムイオン電池は1回の充電で数時間しか放電できないし、数年経てば劣化が進んで充電容量は減少する。これに対して原子力電池の一種であるβボルタ電池は、微量の電力を長時間にわたって発電できる。スマートフォンを動かすために十分な電力を供給するのは無理だが、電力をそれほど必要としないデヴァイスであれば、適切な放射性物質を使えば1,000年以上も動かし続けることが可能になる。

Arkenlightの最高経営責任者(CEO)のモーガン・ボードマン 「電気自動車(EV)を走らせることができるかと言われれば、答えはノーです」と言う。大量のエネルギーを消費するものを動かしたいと思ったら、バッテリーの質量は車両よりはるかに大きくなってしまう。ダイヤモンド電池が力を発揮するのは通常の電池を利用できないような状況で、例えば遠隔地や危険な場所であるため定期的なバッテリー交換が難しい場合が考えられる。具体的には、人工衛星や放射性廃棄物の貯蔵施設など。

一方で、心臓のペースメーカーやウェアラブルデヴァイスなど、もう少し身近な用途も想定されている。かなり先の将来には、電池より先にデヴァイスを交換するようになるかもしれない。

ボードマン 「バッテリーはそのままで、火災報知器のほうを買い直す時代がやってくるでしょう」

身の回りに放射性物質があるのは・・・ただ、βボルタ電池の健康へのリスクは非常口のサインと同じ程度でしかない。非常口のサインの赤い色はトリチウムという放射性同位体が基になっており、微弱ではあるが放射線が出ている。放射線にはいくつかの種類があるが、Γ線のような電磁波とは違い、β線は数mmの薄い板などで簡単にさえぎることができる。

アメリカエネルギー省の下部機関であるパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)の科学者で材料科学を専門とするランス・ハバード 「通常は電池の外装だけで十分です」と説明する。ハバードはArkenlightにはかかわっていないが、「内部も放射線は微量で非常に安全です」また、自然崩壊が終わって放射線が生じなくなれば、電池の寿命も尽きる。

βボルタ電池は1970年代に発明され、当初はペースメーカーに使われていた。しかし、外装が破損するなどした場合に危険なことから、安価なリチウムイオン電池にとって代わられた。その後は特に使われることはなかったが、最近になって電子機器の省エネ化が進むなか注目されるようになっている。

ハバード 「μWや㎺といった本当にごく微量の電力しか必要なければ、素晴らしい選択肢です」「モノのインターネット接続の流行は、原子力電池の復活における原動力になりました」

βボルタ電池は一般的に、半導体素子の間に放射性物質が挟まれた構造になっている。放射性物質は放射線崩壊の過程でβ粒子と呼ばれる高エネルギーの電子もしくは陽電子を放出するが、これが半導体によって電気エネルギーに変換される。電池の仕組みは太陽電池に似ているが、βボルタ電池では半導体は光子ではなく、β粒子を電力に変える。センサー基板に組み入れられたβボルタ電池は、自己発光する非常灯や夜光灯に使われるトリチウムを利用している。C14のダイヤモンド電池とは違い、この電池はトリチウムを使った一般的な原子力電池と同じサンドイッチ構造になっている。また、太陽電池と同様に原子力電池の発電量には上限がある。放射線物質と半導体素子の距離が広がれば電力密度は低くなるので、電池の厚さが数μを超えると容量は大きく低下する。さらにβ粒子の進む方向はばらばらで半導体素子はすべてを捉えることはできず、電力に変換されるのはその一部。β粒子から電力への変換効率について、最先端の技術を使っても7%程度。変換効率は理論的には最大37%程度で、まだ改良の余地はある。

・・・このアタリは?だったので改変

ここで登場するのがC14と呼ばれる放射性同位体。C14は考古学試料などの年代を調べる手法のひとつである放射性炭素年代測定に使われることで知られ、放射能源になると同時に半導体素子の役割も果たし半減期は5,730年。文字の歴史は5,000年ほど前にさかのぼるとされるが、C14を使った原子力電池は人間が文字を使ってきた時間より長い期間にわたって電力を供給できる計算になる。

スコット率いるブリストル大学の研究チームはC14のメタン同位体から人工ダイヤモンドをつくり出している。特殊な反応装置を使ってメタンと水素をプラズマ化すると、分解したメタンのC14が積層化してダイヤモンドの結晶ができあがる。一般的なβボルタ電池のように半導体で放射性物質を挟み込むサンドイッチ構造ではない。放射性ダイヤモンドを通常の炭素原子の人工ダイヤモンドに混ぜ込んだかたち。こうすることでβ粒子の移動距離を短くし、電力への変換効率を最大化する。

Arkenlightのボードマン 「ベータ粒子を電気に変えるダイオードと放射性物質は別々になっていましたが、この電池は画期的です」

C14は、宇宙線が大気に入射する際にできる中性子と大気中の窒素との化学反応によって生じる。一方で、原子力発電所で原子炉の減速材に使われる黒鉛ブロックからも生成される。原発の黒鉛ブロックは使用後に放射性廃棄物となるが、ボードマンによるとイギリスだけでも10万tの黒鉛廃棄物が存在する。イギリス原子力公社(UKAEA)は、やはり原子力電池の放射能源として使えるトリチウムを、放射性黒鉛35tから回収している。ArkenlightはUKAEAと協力し、黒鉛廃棄物からC14を分解回収する方法を模索している。

UKAEAの試算ではC14が100ポンド(45.4kg)程度あればダイヤモンド電池が数百万個はつくれると。つまり黒鉛廃棄物からの回収に成功すれば、電池の原材料がほぼ無尽蔵に入手できる。さらに、C14を取り除くことで黒鉛ブロックの放射能レヴェルが下がって低レヴェル廃棄物になるため取り扱いや貯蔵が容易に。

放射性廃棄物から取り出したC14を利用したダイヤモンド電池の試作品はまだ完成していない。実用化には数年かかる?それでも、すでに宇宙産業や原子力産業が関心を寄せており、Arkenlightはヨーロッパ宇宙機関から通信衛星に搭載される信号装置向けのダイヤモンド電池の開発を受注している。装置は微弱な無線信号を発することで個々の衛星の識別を可能にするためのもので、ボードマンはこれを衛星のRFIDタグと呼ぶ。

Arkenlightはダイヤモンド電池だけでなく、放射性廃棄物の貯蔵施設からΓ線を利用する電池の開発にも取り組んでいる。また、原子力電池の実用化を目指す企業は、Arkenlight以外にもたくさんある。アメリカでは以前からCity LabやWidetronixといった企業がトリチウムを使ったサンドイッチ構造のベータボルタ電池の商用開発を続けている。

コーネル大学の電気工学教授でWidetronixの共同創業者でもあるマイケル・スペンサーは、原子力電池は用途を考えた上で放射性物質を選ぶ必要があると・・・例えば、C14はトリチウムと比べてβ粒子の放出量が少ないが、半減期はトリチウムの500倍以上。つまり、寿命の長い電池が必要なら最適だが、同量の電力を供給したい場合、サイズはトリチウムを使った電池よりはるかに大きくなる「同位体を選ぶときには、さまざまなトレードオフを考えなければなりません」

・・・ただ駆動する機器の回路の一部にコンデンサーとか使うと

今日は~

セッコク/Dendrobium moniliforme播磨黄花


狂い咲き

播磨黄花の狂い咲きは初めてな気が・・・

黄色が薄く花ビラにうっすら紅がのってイイ

これ、春にもでねえかな


0 件のコメント:

コメントを投稿