2022年8月4日木曜日

子供の精神的幸福度

先進国の子どもの状況を比較・分析しようと2000年から行われているユニセフ報告書 レポートカード
20年に発表されたレポートカード16で
日本の総合順位は38カ国の中で20位
子どもの貧困の研究者として、レポートカードのデータ提供や解説を行っている東京都立大学 人文社会学部教授で、子ども・若者貧困研究センターのセンター長を務める阿部彩氏
日本は総合順位が38カ国の中で20位、精神的幸福度はワースト2位
「『幸福度』という言葉に惑わされないでください」
原文で使われていた”ウェルビーイング”を日本語に翻訳した際に”幸福度”という言葉になった
ウェルビーイングとは、子どもの生活水準や心身の健康など、子どもの状況全体を表しています
レポートカード16では
生活満足度が高い15歳の割合 と 15〜19歳の自殺率 という2つの指標を基に精神的幸福度の順位づけ
ただし、これは文化的に差が出るところで、生活水準が低くても多くの子どもがハッピーだと答える国もありますし
そこそこの生活水準の子どもが満足していないと答えていたりします

日本の場合、生活満足度が高い15歳の割合は、全体の62%
多くの子どもが満足しているわけではありませんが、一方で40%近い子どもが満足していると答えています
しかし、この生活満足度以上に問題だと思うのが、15〜19歳の自殺率の高さ
日本では子どものウツも多い
精神的幸福度の国別順位だけを見てただ問題視するよりも
日本の中でどういった状況の子どもが自殺やうつになる傾向があるのか、そこを見て対策を打つべきと

それでは、どういった状況の子どもが追い込まれやすい傾向にあるの?
レポートカード16のデータではありませんが、この年齢の子どもの生活の満足度については、自己肯定感や友達関係が大きく関係
そして、自己肯定感が学校の成績に大きく左右されるのは日本的な特徴
もちろん、学力が高くなくても自己肯定感が下がらない子どももいます
サッカーが得意とか、絵が上手だとか、友達がたくさんいるとか
そうした多様な子どもが多様なやり方で自己肯定感を高めることができるといいのですが
日本はどうしても、勉強ができるかどうかということに左右されてしまう
学力重視・学力偏重の傾向は指摘すべき点だと
そして、学力や友達関係が悪くなる1つの大きな要因が経済的な格差

学力や肥満などは、親の所得と関係があることがわかっています
いじめや不登校も、親の所得が低いほど増える傾向
そこからヤングケアラーや、児童虐待という問題が起こる可能性も高くなる
今は、学力だけでなく、考える力や生きる力などが求められ、社会の中である一定の、子どもの望ましい像が蔓延している
親も勉強だけでなく、いろいろな体験もさせないといけない、と毎日お稽古事をさせるなど、子どもに多大の投資をしないといけないような風潮
そういった風潮が格差を生み、貧困の連鎖を生むのは当然
日本の子どもの貧困率は現在、13.5%
統計を取り始めた1985年の10.9%から徐々に上昇し、最も高かった2012年の16.3%に比べると、下がってはいる
しかし、このデータは18年の13.5%が最新
20年以降のデータはまだ出ていません

20年以降、コロナ禍の影響は子どもの貧困問題にどんな影響を
親の収入減など経済的な影響ももちろんありますが、度重なる休校による子どもの生活や健康上の変化、例えば友達に会えなくて寂しいとか、学力の不安、ゲーム依存、体力不足、肥満率の上昇はすでに表れている
児童虐待などの増加も指摘されてる
このようにコロナ禍の休校は、子どもの生活上のあらゆる面に影響を与えましたが
所得が低い家庭の子どものほうがインパクトは大きかった
所得が高い層なら休校の分の勉強を家で補完できますし、オンライン授業にも対応できた
小さな子どもを家で1人にさせられないという問題もありますが
所得が高い層では親が家にいることができます
また、休校による運動不足も、所得が高い層であれば、何とかできた
しかし、そういったことができない家庭がある
コロナ禍で、より子どもの間の学力格差、体力格差、情緒や不安感の格差が広まったのでは・・・

乳幼児より小学生、小学生より中学生、中学生より高校生と、子どもの年齢が高いほうが、子どもの貧困率が高い
要因はいくつかありますが、その一つが子どもを持つ年齢が遅くなったこと
とくに男性は30代以上で子どもを持つ方が増えてる
子どもが小さいうちは経済的なインパクトは小さいが、成長するにつれて大きくなっていく
50代は正社員なら最も所得が高い世代ですが
非正規雇用では厳しくなり、男性の自殺率も高くなる
子どもの年齢が高いほどひとり親世帯も増える
というのも、子どもの年齢が高いということは親の結婚年数も長くなるから
また、15歳は一つの境目
この年齢は経済格差が大きくなっていくタイミングですが
この年齢以上の子どもへの支援が少ない
日本では児童手当は中学校卒業までですし、市区町村による子ども医療費助成制度も長くて中学校卒業まで
高校無償化で授業料がなくなっても、食費や通学費、携帯電話料金など、子どもにかかるコストはむしろ大きくなる
昔は中卒・高卒で就職し、稼ぐ側に回る子も多くいましたが
今はこの年齢で稼ぐ側になる子は少ない
大学進学率が高まるのはいいことですが、家計に無理をして大学進学をするケースもある
卒業後に相応の収入が得られればいいのですが、非正規雇用となって借金だけが残ることも

貧困が危険因子であるのは確かですが、もちろんそれだけではない
日本では親も子どもも、勉強ができていい仕事に就かないと非正規雇用になって不幸な人生が待っていると恐れている
貧困とまではいかない家庭の子どもでも
「テストの成績が下がった。将来は非正規雇用になるのかな」
「将来、自分たちの世代は年金もなくて政府も破綻する」
といった未来に対するネガティブピクチャーを植え付けられてる
・・・それが今の世相

そのため、どの階層の子どもであっても遊ぶことが許されない、といった風潮
精神的な面で言うのであれば、学力偏重を変えることが必要
例えば、通信簿をなくした小学校もあり、すばらしい取り組みだと・・・
しかし、小学校でなくしても中学校では通信簿があるし、高校受験や大学受験で評価される
それを考えると、根本的な大学入試改革が必要
子どもを評価するその風潮を変え
多様な人材、多様なよさが評価され、報われるような社会になれば救われるのではないか
子どもへの支援は15歳を境に薄くなりますが、その拡充は財政との兼ね合いも
貧困を何とかするためには財源がないと・・・
政策上、日本の最も大きな制約は財政難で、しかも新型コロナ対策もあり、財政はますます悪化
そんな中で、どういった支援が不可欠なのか
どこは削れるのか、誰が負担増を引き受けるのか国民的な議論が必要
では、子どもへの支援では何が必要?
まず経済的に厳しい子どもの生活を守る措置として
学校給食や医療費の無償化を高校生まで広げてほしい
また、貧困に対する支援として無料の学習支援などさまざまな動きがありますが
塾に行かないと点数が取れない試験のやり方や、学力偏重の風潮が変わらない限り
根本的な状況は変わらない
だから国公立の受験方法を変えるといったことも同時に行うべきではないでか
お金がかかる改革だけでなく、社会のあり方を考えていく必要があると

これからの時代を生きていくうえで、子どもにはどんな力が求められる?
子どもが、自分の好きなことを自由にできる環境を整えることが重要
これは、経済的に厳しい家庭のお子さんが、経済的な理由によって進学や部活動などといったことを諦めてしまうことを解消するということ
また経済的に余裕のある家庭のお子さんでも、受験勉強のために遊ぶ時間がなくなる、スポーツができなくなる、自由時間がなくなるといったことを減らすことも
子どもが一人の人間として、子ども自身の考えや意見が尊重され、その子の人生に反映される社会を大人は用意するべき

・・・大人にも

今日は~
タネツケバナ

3月の半ば
ナズナと同じような白い花

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