2021年4月27日火曜日

かの国の民草は

2021/4/5、中国河北省唐山市の検問所で、金徳強という51歳のトラックドライバーが2000元の罰金を支払うよう命じられ農薬をその場で飲んで自殺
彼は死ぬ直前、トラックドライバーの仲間らに自分がなぜ死を選んだのかを訴えた文章を残していた
この事件は中国の下層労働者の悲惨な実態や、地方政府による厳しい罰金の取り立てなど、多くの問題を社会に投げかけた

河北省滄州市のトラックドライバーだった金徳強さんはこの日
唐山市豊潤区の過積載などの検査をする検問所で違法行為があったとして、車を差し押さえられ、罰金2000元を命じられた
違法行為とは、車載していた衛星測位システム北斗の端末が未接続の状態になっていたということ
北斗は中国政府が米国のGPSに代わり独自開発した衛星測位システム
トラックやバスにはこの端末を装着することが義務化
目的は運送データの収集に加え、速度超過への警告、さらにドライバーが過労運転防止で4時間ごとに20分の休憩を取らせるため
現実には渋滞やサービスエリアが満車など、十分な休暇が取れないのが実態
だが肝心の端末に不良品が多く、掉線(未接続、オフライン)の状態になっていてもドライバーが気づかないとか
さらに運転中たばこを吸ったか、居眠りをしたか、電話をかけたかなどドライバーの行動も監視
・・・はあ?
当局
「長時間運転を隠すため、電源を切るなどして故意に未接続にした」
として罰金を科すことが常態化
報道によれば、トラックドライバーの日々の稼ぎは200~400元
金さんは70代の母と3人の子供、妻を養い、死後家にはわずか6000元の蓄えしかなかった
今回の罰金は彼が残した蓄えの3分の1に相当
数日分の稼ぎをいっぺんに失う額だった
トラックドライバーは個人業主が多く、各地の運送荷物仲介所で仲介業者に手数料を払って仕事を紹介してもらい、運送料は配達後の出来高払いであることが多い
だがドライバーの業界は過当競争が激化
過労運転による交通事故も頻発

今回と同じ河北省唐山市の検問所で今年2月、金さんのように未接続だった、として2000元の罰金を支払わされたドライバー
「まったく信じられなかった。車載端末のライトは煌々とついているのに、北斗は昨年からオフライン状態だったというのだ」
北斗の端末は取り付けには3000元前後がかかる
トラックを購入する際に、端末を取り付けないと運行許可が取れず、加えて毎年数百元のサービス料を支払わなければならない
この料金も各地の業者により600~1200元とまちまち
北斗の端末は(ドライバーに道案内をする)ナビゲーションではなくブラックボックス
運行中の記録は各省の交通プラットフォームに伝送され、さらに交通運輸省の指定する分析会社に送られる
あるドライバー
「現在トラック運転はますますやりづらくなった。数年前はお金を稼げたが、今は参入する人がますます増え、競争は激化している。そして最もつらいのが各種の罰金や費用だ。トラック運転手はまるで犯罪者と同じ扱いを受けている」

事件後の10日、唐山市は調査結果を発表
「取締官は金徳強のトラックの北斗測位システムが未接続のまま運転しており、法律違反だとして、車を検問所に停車させ、金に調査を受けるよう告げた。金はすぐに応じることはなく、現場を離れ、付近の売店で農薬を買って戻ってきた。取締官は罰金2000元を支払うよう告げたが、この間、処罰もしておらず、過激な言動も、言葉や身体の衝突もなかった。まったく事前の兆候もない状況で、金はポケットから農薬を取り出して飲んだ。取締官はすぐに救急電話をかけ、病院に連れて行ったが治療のかいなく死亡した。公安部門は金が農薬を飲み自殺したと認定、家族もこれに異を唱えていない」

ある方々
「交通運輸業界では、ほぼすべての大型トラックには北斗測位システムが強制的に装着されている。すべてのトラックが国営独占企業に高額の装着費と年間費用を支払っている。これは中国政府が社会を全面的に管理する措置の一つであり、専制主義政権における多くの独占事業同様、このような商売は腐敗の温床となっている」
「金徳強さんが死をもって抗議したのは、この(北斗)システム自身なのではなく、その中で行われている不公正で腐敗した法執行なのだ」
「疑いないことは、このシステムが広く、深く運用されることで、政府はより遠くまで監視の目と手を伸ばせるようになったことだ。言い換えれば、監督を受けず、制限を受けない政府の権力がより遠くまで行き届くようになった。その結果必然的に市民の権利が圧迫され、自由はより少なくなる。その影響は交通運輸や経済などだけでなく、社会により深い影響を与えるだろう」。
「中国の労働者、そして社会各層は、利益の共同体や独立した労働組合を持つことも、報道や出版の自由もなく、街頭で自らの要求を訴えることもできない。教育水準も低く、政府の小役人に手心を加えてもらうだけのお金もない金さんのような貧しい労働者にとって、死とは一種の解脱だ。なぜなら生きることは大変つらく、対価が高すぎるからだ」
「彼の死は、教育水準と関係もあり、政府の横暴な法執行とも関係があるが、より重要なのは自らの力ではどうすることもできない時、生きる道を与えてくれる社会的な組織がないことだ。このドライバーの置かれていた希望の見えない困難な状況こそ、あらゆる中国人が置かれている状況だ」
「我々は根無し草のような孤立無援の存在だ。たとえ2000元が大した罰金でなかったとしても、彼を落胆、絶望させたのだろう。なぜなら今後も次々と2000元がのしかかってくるからだ。2000元は重荷を負ったラクダを押しつぶす最後の稲わらだったのだ」

こうした声に対し、普段は愛国主義を鼓吹するメディアからは社会的な弱者を守れとの声が聞こえない
タカ派で知られる環球時報の胡錫進編集長も事件後の8日、ブログに
「我々の社会に14億人がいるからと言って、1人の金徳強事件が『不可避』と考えてはならない。このような悲劇をどのように防ぐか、我々の社会主義国家はこの目標のため全力で努力するに値する」と
すぐに削除されたという(チャイナ・デジタル・タイムズによる)

今日は~
キバナイカリソウ/Epimedium koreanum

花が咲き始めた
4月半ば
これから花が開ききるまで花の形がかわってく

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