2021年4月21日水曜日

新しいタイプのワクチン

 ブラジル、メキシコ、タイ、ベトナムで臨床試験(治験)が始まろうとしている新たな新型コロナウイルスワクチン
世界的にパンデミックとの戦い方を変えることになるかもしれない
NDV-HXP-Sと呼ばれる新ワクチンには、現行のワクチンより強力な抗体を生み出すと広く期待されている新たな分子設計が用いられている
この分子設計を使ったワクチンが治験入りするのは初めて
これまでのワクチンに比べ生産がはるかに容易になる可能性も

ファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの現行ワクチンは入手の難しい原料を使って特別な工場で生産しなければならない
これに対し、この新ワクチンは鶏卵を使って大量生産できる
世界中の工場で毎年何十億回分という量が生産されているインフルエンザワクチンと同じ手法が使える
安全性と有効性が確認されれば、NDV-HXP-Sはインフルエンザワクチンのメーカーによって年間10億回分を上回る量産が可能
現在ワクチンの入手に苦労している低・中所得国にも、国内生産や国外から安価に調達できる

。デューク大学国際保健イノベーションセンターのアンドレア・テイラー副所長
「衝撃的だ。これは(状況を劇的に変える)ゲームチェンジャーになるだろう」
治験の第1段階は7月に完了する予定
最終段階にはさらに何カ月という時間がかかる
ただ動物実験ではすでに期待できる結果が得られている

NDV-HXP-Sの開発で調整役を担った非営利組織PATH(パス)のブルース・イニス氏
「世界クラスのワクチンだと思う」
「効き目はホームラン級だ」

新型コロナウイルスの場合、免疫システムにとって最適な標的はウイルスの表面を冠のように覆うタンパク質
スパイクと呼ばれるそのタンパク質は細胞と融合し、ウイルスを細胞内に侵入させる役割を果たしている
(そのスパイクタンパク質に対応した抗体を体に作らせてウイルスを攻撃)
しかし単にスパイクタンパク質を人間に注射すればよいという話にはならない
なぜならスパイクタンパク質は形を変えることがある
間違った形のスパイクタンパク質を使用すれば免疫システムから間違った抗体を引き出すことになる
こうした知見は、新型コロナのパンデミックが発生するだいぶ前から知られていた
2015年には別種のコロナウイルスが現れ中東呼吸器症候群(MERS)と呼ばれる危険な肺炎を引き起こしていた
当時ダートマス大学ガイゼル医科大学院に所属していた構造生物学者のジェイソン・マクレラン氏は、同僚らとMERSのワクチン開発に乗り出した
マクレラン氏らはスパイクタンパク質を標的に用いる考えだったが、それにはスパイクタンパク質が形を変えるという事実を考慮する必要があった
スパイクタンパク質は細胞への融合プロセス中に、チューリップのような形状から投げ槍のような形状に変形するからだ
科学者らはこれら2つの形状を、それぞれプレフュージョン(構造変化前の)構造、ポストフュージョン(構造変化後の)構造のスパイクと呼んでいる
プレフュージョン構造に対する抗体は強い効き目を持つが
ポストフュージョン構造に対する抗体ではウイルスを食い止めることができない
マクレラン氏らはMERS用ワクチンを作るために標準的な技術を用いたが
結果として出来上がったのは、目的にそぐわないポストフュージョン構造のスパイクばかりだった
その後、同氏らはチューリップのような形をしたプレフュージョン構造にタンパク質をとどめておく方法を見つけ出す
スパイクタンパク質内にある1000を超す構成単位のうち、わずか2つをプロリンと呼ばれる合成物に変えるだけでよかった
出来上がったスパイク(2つの新たなプロリン分子を持つことから2Pと呼ばれる)
狙いどおりにチューリップ状の姿を取る可能性がはるかに高くなった
マクレラン氏らが2Pスパイクをマウスに投与すると、MERSコロナウイルスにかなり感染しにくくなることがわかった
研究チームはこのように手を加えたスパイクで特許を申請したが、世界はこの発明にほとんど注意を払わなかった
MERSは致死性こそ高かったものの、感染力は高くなく、さほど大きな脅威とはならなかったため
MERSのヒト感染が初めて確認されてから現在までの死者数は累計で1000人以下

ところが、2019年末に新型のコロナウイルスSARS-CoV-2が現れ、世界に大きな被害を与え始める
マクレラン氏らはすぐさま行動に移り、SARS-CoV-2に合わせた2Pスパイクを設計
その数日後、モデルナがその情報を利用して新型コロナウイルス用のワクチン開発に着手した
他社もすぐに続いた
アメリカ国内でこれまでに承認されているジョンソン・エンド・ジョンソン、モデルナ、ファイザー/ビオンテックの3つのワクチンはすべて2Pスパイクを利用したもの

マクレラン氏らは2Pスパイクをワクチンメーカーに引き渡すと、タンパク質の研究をさらに深掘りしていった
2つのプロリンでワクチンが改善できたということは、プロリンの数を増やせば、さらなる改善が見込める?

現在はテキサス大学オースティン校で准教授を務めているマクレラン氏
「理屈からいって、一段と優れたワクチンを生み出せるはずだった」
マクレラン氏は昨年3月、同じくテキサス大学に所属する2人の生物学者
イリヤ・フィンケルスタイン氏およびジェニファー・メイナード氏とチームを組み、3つのラボで100種類の新たなスパイクを生成
ビル&メリンダ・ゲイツ財団から資金提供を受けた3人はこれらを1つ1つ試験
新たなスパイクの中から有望な変更を組み合わせることで目標にしていた単一のタンパク質をつくり出す

そのタンパク質には、2Pスパイクの2つのプロリンに加え、さらに別のプロリンが4つ含まれていた
プロリンの数が合計で6つになることから、マクレラン氏はこの新しいスパイクをHexaPro(ヘキサプロ)
ヘキサプロの構造は2Pよりもさらに安定
熱や有害な化学物質にも強いことがわかっている
こうした頑丈な構造によってワクチンの効果が高まることをマクレラン氏は期待している
さらにヘキサプロベースのワクチンなら世界の広い地域で利用できるようになるとも考えている
中でも状況の改善が強く求められている地域が低・中所得国
第1世代のワクチンは、こうした地域にほんのわずかな量しか届いていない
この目的にかなうようテキサス大学は、低・中所得国80カ国の企業と研究機関に対し
ロイヤルティーを支払うことなくヘキサプロを利用できるライセンス契約を用意した
その一方で、PATHではイニス氏らが新型コロナワクチンの生産量を上げる方法を探していた
彼らが求めていたのは、豊かではない国が自力で生産できるワクチン
PATHのチームが考えていたのは、鶏卵を使って安くワクチンを作れないか
この方法ならインフルエンザワクチンの工場で新型コロナワクチンを生産できるかもしれない

ニューヨークのマウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究者チーム
ニューカッスル病ウイルスという人体に無害な鳥ウイルスを使って、まさにそのようなワクチンを製造する方法を見つけ出していた
ニューカッスル病ウイルスを使って、さまざまな病気に対するワクチンを生み出す実験は何年も前から進められていた
エボラ出血熱のワクチン開発でも、ニューカッスル病ウイルスの遺伝子セットにエボラの遺伝子を付け加える手法がとられている
遺伝子操作したウイルスを鶏卵に挿入すると、そもそもが鳥ウイルスだから相性が良く、卵の中で急速に増殖
こうして科学者はエボラタンパク質で覆われたニューカッスル病ウイルスをつくることに成功した
マウントサイナイの研究者チームは、エボラタンパク質の代わりに新型コロナのスパイクタンパク質を使って、これと同じことを試みていた
そこに入ってきたのが、マクレラン氏が新たにヘキサプロをつくり出したという情
チームはさっそくヘキサプロをニューカッスル病ウイルスに付け加えてみた
するとウイルスにはスパイクタンパク質が密生し、その多くが望ましいプレフュージョン構造を有していた
チームはこれをNDV-HXP-Sと名づけた
ニューカッスル病ウイルス(NDV)とヘキサプロスパイク(HXP-S)を組み合わせた名称

PATHは、日ごろ鶏卵でインフルエンザワクチンを製造しているベトナムの工場で数千回分のNDV-HXP-Sを生産するよう手配
同工場から試験用のワクチンがニューヨークに送られてきたのは昨年10月
マウントサイナイの研究者チームは、NDV-HXP-Sがマウスとハムスターで強力な効き目を発揮することを確かめている

研究を指揮するピーター・パレーゼ氏
「ただ、人体についてはまだ結論が出ていない」
このワクチンは、さらなるメリットが
インフルエンザワクチンは1つの卵で1~2回分の量しか生産できないのに対し
NDV-HXP-Sは5~10回分の生産が可能かもしれない
「これにはとても興奮している。ワクチンを安く生産できるようになるからだ」

次いでPATHは、マウントサイナイのチームとインフルエンザワクチンのメーカーを結びつけた
そして3/15、ベトナムのワクチン医学生物学研究所がNDV-HXP-Sの治験開始を発表
その1週間後、タイの政府製薬機構がこれに続いた
3/26には、ブラジルのブタンタン研究所がNDV-HXP-Sの独自治験で当局に許可申請を行う考えを明らかにした
その一方マウントサイナイのチームはメキシコのワクチンメーカー、アビメックス社に点鼻スプレー形式のワクチンとしてライセンスを供与
鼻腔内噴射でワクチンの効果が高まるかどうかを確認するために、アビメックス社が治験を行う予定になっている

そうした中でマクレラン氏は、ヘキサプロよりもさらに優れたバージョン3のスパイクづくりに取りかかっている
「このプロセスに終わりはない」
「配列の数はほぼ無限だ」

・・・効果の?な新型コロナワクチンが多い中
これは朗報
変異の早いウィルスにも追随できそう?
ただ今までとタイプの違うワクチンなんで・・・
低・中所得国で生産できるとなれば、かの国のワクチン外交が・・・

今日は~
マメヅタ/Lemmaphyllum microphyllum

4月の初め
保護用の枯葉を取り除く
特に痛みはないもよう
このまま増殖してくれると
色々使えそう

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