2023年3月4日土曜日

中国版KGB 中央内務委員会 創設

2023/2/28中国共産党の第20期中央委員会第2回全体会議(2中全会)が閉幕
コミュニケ(公式声明書)が発表された
この2中全会で、両会(3月4日に開幕する全国政治協商会議=全国政協および3月5日に開幕する全国人民代表大会=全人代)で提出される人事と
党と国家の機構改革方案などが採択された
両会は“ゴム印国会”のようなものなので、2中全会で採択されたことはすでに決定事項
習近平の専制独裁のための権力集中がさらに進められる?
例えば
「思想と行動の統一を党中央の政策決定に反映させ、党中央の政策決定の権威性と厳粛性を断固維持し、改革の自信と決心を堅く定め、組織指導を強化し、機構改革任務を100%徹底的に行う」
「反腐敗闘争の持久戦に断固として打ち勝つ」
大粛清のシグナルも?

人事は、習近平の腹心で経験の浅い李強が首相となる国務院(内閣)のメンバーの顔触れや
習近平の秘書役の党中央弁公庁主任に誰がなるか、などが注目されている
だが、それ以上に関心の的となっているのが、党と国家の機構改革方案の中身
習近平は過去10年の間にも軍制改革、国務院機構改革を行ってきた
その目的は習近平個人への権力集中であったが、今回の党と国家の機構改革方案は
それだけでは済まないと

特に懸念されているのは香港紙 明報(2月23日)などが報じた中央内務委員会の創設
これは、中国版KGBではないかと噂されている
まだ詳細は不明ながら、おそらく、国家安全部と公安部その他の機能を国務院から離脱させて共産党中央の直属機構にしようという構想
国家安全部はいわゆるインテリジェンス、諜報機関
公安部は国内治安維持機関
公安・司法系のシステムを指導するのが党の機構が中央政法委員会(国家安全部に関しては中央国家安全委員会も)
習近平は長らく国家安全部と公安部を信用できなかった
かつて党中央政法委員会書記の周永康が、当時の重慶市書記の薄熙来と組んで、公安と軍の一部武力を利用して習近平から権力奪取しようというクーデターを画策したことがあった
また、国家安全部副部長の馬建が習近平らの弱みを探ろうと盗聴していたこともあった
馬建は曽慶紅の秘密兵器と呼ばれる諜報員だった
結局クーデター未遂に終わり、薄熙来も周永康も馬建も習近平に失脚させられた
だが、こうした事件から習近平は軍と公安と国家安全部にずっと不信感と恐れを抱いていた

これを解消すべく、軍に対しては2012年の習近平体制発足直後から軍制改革を行い、その過程で膨大な反習近平派の将官をパージしていった
また国家安全部に関しては、2014年に中央国家安全委員会を作り習近平自身が主席を務め、国家安全委員会弁公室を中央弁公庁内に設置した
公安部に関しては、2018年の国務院機構改革で人員の総入れ替えを行っている
公安警衛部に関しては、現役警衛部隊員を一旦全員引退させ、再度警察宣誓儀式を経て入省させた
さらに公安部内の警衛局(八局)を廃止
新たに特勤局(監察局に相当)を八局として創設し、党内部内の反習近平派や長老を監視させた
この特勤局のトップ(特勤局書記)には、習近平の最も信頼する警察官僚の王小洪を就けた
王小洪はその後、公安部長に出世
昨年(2022年)の第20回党大会では中央書記処書記を兼任
公安部出身者が公安部長(閣僚)になるケースは1998年以来
そして現役公安部長が中央書記処書記を兼任するケースも周永康以来2人目という異例の出世
周永康は行政経験も積んだ政治家なので、公安プロパーの王小洪が中央書記処入りしたのは特殊なケース
このように大規模な公安・国安改革を行った上に
今回さらに中央内務委員会を創設するのは・・・

中央内務委員会は、公安、移民、戸籍、交通、反テロ、反スパイ、民生部の組織管理機能まで盛り込んだ超級委員会?になるとみられている
スターリン時代の内務人民委員部(後のKGB)のような秘密警察的なものになる可能性が
スターリンの内務人民員部より恐ろしいのは、すでに中国はデジタル監視コントロールのシステムを構築しており
これが内務委員会に取り入れられれば、デジタル・レーニン主義(注)以上のデジタル・スターリン主義が完成するのではないか・・・
(注)デジタル・レーニン主義:ドイツの政治学者セバスチャン・ハイルマン氏が表現した、デジタル技術で社会を監視する手法と思想
そしてそのトップに就くと目されているのが王小洪

習近平が福建省福州市書記だった頃、王小洪は福州市公安副局長として出会い、気に入られて出世してきた
人民公安大学卒で公安畑一筋を歩んできた
習近平に忠実で、公私の隔てなく尽くしてきたと
福建勤務時代、休日は習近平の家で娘の子守りまでしていた、とも
王小洪ならば習近平のために、えげつない汚れ仕事も・・・

中央内務委員会と中央政法委員会や中央国家安全委員会はどういう関係になるのか
国家安全部の対外インテリジェンス分野も内務委員会に入れ込まれるのか?
現時点では中央内務委員会がどんなものになるかまだ不明な点が多すぎるので想像の範囲でしか語れないが
中央政法委員会、中央国家安全委員会が中央内務委員会に統合されるならば、その権力はかなり巨大なものに
その場合、目下の公安トップの中央政法委員会書記で、やはり習近平に忠実な福建閥の陳文清が内務委員会トップに就く可能性に言及する人も
ならば王小洪は中央弁公庁主任という習近平の秘書役に収まる可能性も
いずれにしろ、この大きな権限を持つ新機構や中央弁公庁の中枢を警察・司法官僚が牛耳るということは、中国がより警察国家化する?

この機構改革の習近平の本当の狙いは、単なる習近平の権力集中ではなく
国務院の無力化?
目下の体制は、本当の実力者は影の党機構なのだが表に国務院があるという二重構造
このため総書記の習近平と首相の李克強の二つの司令部が権力を二分する現象も起きることがあった
そこで国務院の機構を統廃合し、その分、党中央に新たな機構を新設
国務院の機能を減らし、その影響力を有名無実化
党中央に機能と権力を集中させて、すべて習近平の命令どおりに動くような政治体制を打ち建て、毛沢東式の政治強人に・・・
李強は経験が浅く、国務院の首相としては明らかに実力不足
今のままの国務院では李強では官僚たちをコントロールできないだろう
この機構改革は習近平の独裁権力強化と同時に、習近平があえて選んだ能力の低い首相・李強の負担を減らし、仕事をしやすくする?

また首相の仕事といえば経済政策が一番とされるが、李強はやはり力不足
その点で、2中全会のもう1つの注目点が金融・経済関連分野の人事と機構改革

byウォール・ストリート・ジャーナル
中央金融工作委員会が復活?
この委員会は1998年から2003年の間に設置され、アジア金融危機後の対応にあたった
機能や目的が同じなら、中国の金融システムを主管し、中央銀行を監督し、金融監督機構と国有金融機構の政策と人事事務を一元的に主管する機構となる
かつての中央金融工作委員会書記は、国務院副首相だった温家宝が兼任
金融の仕事の経験が浅かった温家宝の大きな経験値となって首相に出世できたといわれている
とすると、復活した中央金融工作委員会書記は
丁薛祥が副首相として兼任し、李強の力不足を補う役目を担うかも?
また、人民銀行の次の総裁が国務院系大手金融企業の中信集団(CITIC)会長の朱新鶴?
人民銀行書記は何立峰が副首相職と兼任?

人民銀行の現総裁は易綱、書記は郭樹清で、いずれも国際金融会議の場で外国の専門家たちと対等以上に論争できるということで一目置かれる存在
次の人事予測で名前が挙がっている朱新鶴、何立峰は彼らに比べるとずいぶん小粒
だが、この人民銀行人事も、習近平が人民銀行の政策の独立性を縮小させるのが目的ではないかと・・・
マクロ経済政策の要である通貨政策は高度な専門知識と経験が必要とされ、金融エリートたちの独壇場だった
彼らは国際金融都市上海での経験を積んでいたり、アメリカ、イギリスで金融を学んだ経験がある場合が多く
それは習近平が嫌う上海閥につながっていたり西側自由主義経済志向の人材だったりする
こうした金融エリートたちは、習近平の命令よりも自らの知識と経験を優先させて政策を打ち出すので、習近平は気に食わない
不動産・金融リスクが緩和されないのは彼らが習近平の命令通りに動かないからだ、といういらだちも
・・・アブねえ
中国がコロナみたく恐慌の発生元に?

そうした習近平の思惑を反映してか、2/23に中央規律検査委員会
「金融エリート論を打破せよ、金融領域の反腐敗を持続して拡大せよ」
と主張する文章を発表
「金融エリート論」「唯金銭論」「西側にならえ論」など誤った思想を打破
産業界の暗黙のルールや不正の空気を正し、金融、国有企業などの腐敗問題への統治と懲罰を強化し、シャドーバンキングや政商斡旋など新たな形の腐敗の捜査を強化し、金融・国有企業に対する腐敗抑止力を強めよ・・・

この文章は、中国の投資銀行チャイナ・ルネッサンス・ホールディングス創業者で会長の包凡が“失踪”させられた直後に発表された
(後に、当局に身柄拘束され当局の調査に“協力”していることが明らかにされた)
包凡の失踪も含め、今後の官民金融界に対する大粛清の狼煙ではないか?とも

習近平が一番の政敵とみなす曽慶紅や温家宝らファミリーが金融領域の利権に関わっており、権力闘争の側面も
中国経済を揺るがす可能性がある金融領域の粛清を、なぜ今のタイミングで本格化しているのか?
大きな理由として、3年間の不合理なゼロコロナ政策によって地方、中央の財政が深刻な赤字に見舞われているということも
国庫に金がないため、金融領域の粛清を通じて、金融官僚や習近平の政敵らと癒着する民営金融企業らの貯め込んだ富を没収してやろうという狙いも?


以上のように習近平第3期目は、中国版KGBを創設し、西側かぶれの金融エリートたちを大粛清し、その富を収奪しよう?と
数年後に中国は、かつての旧ソ連、あるいは北朝鮮の拡大版のような世にも恐ろしい国になっているかも

・・・カンベンして・・・

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