2022年1月18日火曜日

アナレーナ・ベアボック ドイツ外相

ドイツに新政府が発足してからすでに1カ月
CDU(キリスト教民主同盟)のメルケル政権を引き継いだのは、社民党(SPD)のオラフ・ショルツ政権。緑の党、自民党(FDP)との3党連立政権

社民党は言うまでもなく、社会民主主義を信奉する人たちの政党
緑の党は、今では環境党のような顔をしているが、元はと言えば新左翼の流れを汲むかなりの左翼
今も外は緑だけれど中身は赤く、スイカとも言われる
この2党を見る限り、EUの真ん中に左寄りの政権が誕生したことは間違いない
3つ目の自民党は、自由な市場経済を重視するリベラル党
信条としては保守。元々緑の党とは反りが合わない
つまり、3党がどのように折り合いをつけていくかが新政権の課題

この政権内で無視できない力を振るっているのが緑の党
先の総選挙で、緑の党を率いて戦ったのは、ダブル党首の一人であるアナレーナ・ベアボック氏(41歳・女性)
選挙戦中にスキャンダルが出たこともあり、得票率は14.8%にとどまった
政治経験の浅いベアボック氏が、いきなり女性で初のドイツ外相に就任
そんな素人が欧州の重要国ドイツの外交を担えるのかと不安を覚える国民は多い
まだ正式に政府が発足していなかった昨年11月
北京五輪の外交的ボイコットにまで言及
さらに12月の日刊紙ディ・ターゲスツァイトゥンクのインタビューで
「雄弁な沈黙は長期的には外交ではない。たとえ、これまで多くの人がそう思っていたにせよ」
雄弁な沈黙というのは、多弁でありながら言うべきことは何も言っていないという意味
・・・なんかドッカの・・・

これまでのメルケル政権の親中路線に対する痛烈な批判
メディアと国民が偉大な政治家と持ち上げるメルケル前首相にここまで盾突く?
怖いもの知らずと、自らの理念に忠実?
新政権の施政方針には、南シナ海、台湾、香港、さらに新疆ウイグルなど各種中国問題がてんこ盛り
ベルリンの中国大使館はすぐさま
「われわれが必要としているのは壁を作ることではなく、橋を架けることだ」
中国側にすれば、せっかく長年かけて培ってきた独中の枢軸が、こんな小娘の生意気な言葉で覆されるなど
・・・ドイツでこんな目にあうなんて

ベアボック氏、正式就任と同時にG7の外相会議に出席
その翌日からはパリ、ブリュッセル、ワルシャワ、そして、新年明けたらワシントンと、精力的に飛び回っている
・・・ドッカの首相は?

そして、それら一部始終をドイツメディアが非常に好意的に追う
風見鶏のマスメディアがベアボック氏にエールを送り始めた理由は、最近、世界で高まりつつある中国批判と無関係ではないだろう
これまで彼らはメルケル前首相に忠実で、中国批判は極力控えていた
さすがにそろそろ修正が必要だと思い始めている
そこで、ちゃっかりベアボック氏の反中旋風に便乗?

ドイツの政界ではここのところ、これまでの親中政策を修正しようという動きが
それは緑の党だけでなく今までメルケル首相の権力の下、中国批判が封じ込められていたCDU内でも同様
肝心の社民党は、これまでの16年のうちの12年もメルケル政権と連立を組んでいた上
メルケル政治の継続を謳い文句に選挙に臨んだため、思い切った政策転換が打ちにくい
今やショルツ首相にしてみれば、ベアボック氏の人気はまさに渡りに船
そういう意味でベアボック氏は今、波に乗ってる

ドイツと中国の密接な関係はよく知られている
中国の資本によるドイツ企業の買収も、ここ10年ほどで急速に進行
例えば、フランクフルトにあるもう一つの空港、ハーン空港
以前、米軍が空軍基地として使っていたもので、一時はドイツ国の航空母艦とまで言われた
90年の終わりよりアイルランドの格安航空会社ライアン・エアが使用
空港の持ち主は、95年からはラインランド=プファルツ州(82.5%)とヘッセン州(17.5%)だった
2016年、それを買収しようとしたのが上海のSYT社(Shanghai Yiqian Trading)
交渉はSYT社の全権代表であったチョウ氏が取り仕切った
取引値段は€1300万と言われる
チョウ氏によれば、SYT社は中国でも有数のホールディングカンパニー
資金を提供するGuo Qing社も20万人の従業員を抱えるゼネコンという話だった
ハーン空港を、中国人旅行者のメッカにする、ドイツ・中国貿易に特化した空港として大開発をするetc
これが実現すれば雇用も増え、地域の活性化に役立つと地元の政治家は浮足立った
ところが第1回目の支払いがなされず調べてみると、SYT社の存在を、中国の商工会議所は知らなかった
南西ドイツ放送(SWR)の上海特派員が同社の本社を訪ねてみると
小さな部屋で、積み上げられた段ボール箱の間に5人の従業員が座っていた
典型的なペーパーカンパニーだが、部屋に積み上げられた段ボール箱にちなんで
ドイツの新聞は同社を段ボールカンパニーと呼んだ
・・・ずさん・・・の一言

当然、商談は潰れ、結局ハーン空港は、その翌年に中国の海運大手の海航集団が買い取った
しかし昨年、同社も倒産
空港は閉鎖されてはいないが、すでに展望はない
それにしても不思議なのは、普段は用心深いドイツ人が、なぜ中国に対してだけはこれほど無防備?
産業ロボットの先進技術を持つKUKA社が中国に買収されて大問題になったのも、やはり2016年
以来、さすがのドイツ政府も慎重に
その後、中国の福建芯片投資基金(FGC)が試みたアイクストロン(Aixtron)社の買収は認めなかった
アイクストロンは半導体の生産設備(有機金属化合物半導体用MO-CVD装置)を手がけるハイテク企業
正確に言えば、この買収をドイツ政府に止めさせたのはアメリカだった
同社の技術が中国へ流出し、核技術、ミサイル、人工衛星など軍事産業に流用されることを懸念
しかし今や北京のメルセデスの最新工場では、KUKAのロボットが活躍
現地スタッフは「ドイツの技術と中国のスピード」と豪語
ま、アイクストロン社の持つ技術も、おそらく中国はすでに他の方法で手に入れているに違いない

さらに今年の新年早々、衝撃的なニュースが
ドイツの伝統的な造船企業であるMVウェルフテンの経営が破綻
同社は豪華クルーズ船の建造では世界一
中でも現在建造中のグローバル・ドリーム号は破格
最高9500人の乗客と2500人の乗務員を収容し、甲板には遊園地やジェットコースターまである
こういう巨大なアイデアを出すのはもちろん中国人
2016年よりMVウェルフテンはゲンティン香港の所有
豪華クルーズブームの最中、中国の富裕層の需要を見込んで€20億が投資された
ところがコロナでクルーズもカジノも立ち行かなくなり
お金の尽きたゲンティン香港は、MVウェルフテン救済のための出資€6000万も拒否した
1/10時点で12月の給与も支払われていない
そこで仕方なく経済省が€6億を注ぎ込み
今、手がけている豪華船だけは完成させるというが、すでに1900人の雇用が揺らいでいる
MVウェルフテンの経営破綻が何を示しているかというと
従来の懸念材料であった技術の流出とは別に
これからは救いの神だった中国企業が災いのもとに変わるかもしれない
ドイツ人は破格なことに憧れがちで、それだけに中国人の広げる大風呂敷に魅了される
そして中国人とウィン・ウィンの関係を構築した自分たちの才覚に酔った?
中国人と歴史問題などで躓つまづいている日本人を少しバカにしていた
しかもドイツ・中国の共栄はこれからもずっと続くと思い込んでいた
しかし、今、その幻想がガラガラと音を立てて崩れ始めた

ただ実際問題として、ドイツはすでに中国から離れられない
ドイツの自動車産業は巨大な中国市場に完全に依存
しかも2025年には中国での車の販売数は、現在の2400万台から3550万台に伸びると言われ投資も衰えていない
ディ・ヴェルト紙によれば、昨年BMWは中国に新たに€10億を投資する予定だったと
70年代から中国に進出しているフォルクスワーゲン社は
今では生産した車の4割が中国市場向け

5Gの整備に関しては、他の多くの国々がセキュリティ問題を懸念してファーウェイの技術を排除しているにもかかわらず、ドイツは採用?
ファーウェイの排除などドイツにはできない
ドイツ・中国ウィン・ウィンの時代は終わって、中国が優勢に
すでにフォルクスワーゲン社は、自動運転技術の開発でファーウェイとの提携を検討
同社のEVが走る盗聴器となることを懸念する声も
国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が中国の言いなりなのは日本でも知られているが
ドイツのオリンピックスポーツ連盟のトーマス・ヴァイカート会長も
今回のベアボック氏の冬季五輪のボイコット案に関して
「いい加減にすべきだ!」

2007年、首相に就任してそれほど間もなかったメルケル氏
首相官邸にダライ・ラマ14世を招き、激しい中国の攻撃に晒さらされた
以来、氏は中国の嫌がることは一切言わなくなり(常にアリバイ程度)
商売一筋に切り替えた
一方、メルケル氏はプーチン大統領とは仲の悪そうなシーンを演出しつつ、実は深いところで共感していたと?

今後、ベアボック氏がどんな外交を紡ぎ、何を成功に導き、どこから反発を受けるのか
すべてはまだ霧の中
肝心なのは、氏の中国に対する挑戦をドイツの産業界がどこまで大目に見てくれるか?
またショルツ首相がこの元気な外相をどのように利用し、どの程度コントロールできるのかも興味深い

ショルツ新政権は何が飛び出すか分からないガチャ政権
16年のメルケル政治に退屈しきっていたドイツ国民にとっては楽しみな政権?
しかし激しい脱線はヨーロッパ全体に混乱をもたらす
そういう意味で緑の党はかなりの危険ファクター

・・・はてさて・・・
風見鶏な?ドッカの首相
口は・・・
何をスル?
もしかして
中身スカスカ?
アナレーナ・ベアボック氏
立場は別として
今時まれな、先々を見たい政治ヤさん

今日は~

え~っと
なんだったっけ?
よくあるヤツ
一瞬
アジアンタム?
な・ワケないんだけど

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