2020年8月17日月曜日

日本の最低賃金が低すぎる

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の伝説のアナリストとして名をはせたデービッド・アトキンソン氏
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた
このままでは
①人口減少によって年金と医療は崩壊する
②100万社単位の中小企業が破綻する
という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える問題の本質を徹底的に分析
企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言
日本の最低賃金が低すぎることと、その何が問題なのか

2019年の世界の労働生産性ランキングで日本は前年よりさらに順位を下げ、世界34位
日本の労働生産性が低い原因の1つ、最低賃金が低いこと
日本の最低賃金の水準は、メキシコとあまり変わらない
近年、世界的に最低賃金の重要性が再認識されている
その理由は、経済の中心がサービス業に移り労働市場の規制緩和も進んでいるか
国が発展し先進国になると製造業を中心とした経済から次第にサービス業を中心とした経済に移行
また、生産性を高めるためにさまざまな国で労働市場の規制緩和を行っている
このようにサービス業を主体とした産業構造になったり、労働市場の規制緩和が進んだりすると企業の交渉力が強くなり、労働者の立場が弱くなることが専門家の研究で確認されてる

労使のパワーバランスが雇用側有利に傾く現象はモノプソニーと言われる
ノプソニーの力が働いていると交渉力の特に弱い低学歴の人、65歳以上の高齢者、若年層、女性、外国人労働者は、それぞれが発揮している生産性に比べ不当に安い給料しかもらえなくなる
そうなると本来払うべきだった給料との差額分だけ企業の利益が多くなる
のモノプソニーの力を使って利益を上げようとする経済合理性の低い小さい企業が次から次へと生まれる
しかしモノプソニーによって企業経営者が得るメリットより、労働者が被るデメリットのほうが大きいので、国全体としては次第に経済が弱体化
そうならないよう各国政府はモノプソニーの力をある程度、抑制しようとしてる

・・・えっ?
日本では真逆のような・・・

モノプソニーの力が効き過ぎないよう制限をかけるのに有効な手段が最低賃金
近年、先進各国が最低賃金を導入して、段階的に引き上げている理由はモノプソニーの力を制限するため
最低賃金の導入や引き上げは格差対策にも
交渉力の強い人はモノプソニーの影響をあまり受けない一方
交渉力の弱い人は安い給料しかもらえなくなるので格差がどんどん広がってしまう
日本はすでに大手先進国の中ではアメリカに次ぐ第2位の格差大国
そうなってしまった大きな原因がモノプソニー

・・・ぐろ~ばりずむ の結果

最低賃金を適切に引き上げることで、格差は確実に縮小
逆に言うと最低賃金は格差の下限になるので、その水準の設定によって政府が社会全体の格差の幅に大きな影響を与えることができる
日本では、この点について理解が足りていない?

たまに「日本の最低賃金が低いとは断言できない」と云う方が・・・
「日本の最低賃金は、国際比較すると低いとは断言できない」と主張する人は、OECDのデータを使うことが多い
OECDは各国の購買力調整済みの最低賃金のデータを公表
2018年のデータでは、日本の最低賃金は11位
OECD加盟国の加重平均が15位につけていますので、11位というと、それほど低い順位ではないように思われるかも・・・
しかしOECDのメンバーの中には、生産性が$11万2045の国もあれば、$1万6265の国も
これほど経済力に開きがある国の最低賃金を絶対値で比較することには、そもそも意味がない
日本は、同じクラスの先進国と比べるべきであって、生産性の非常に低いチリやメキシコより最低賃金が高いことを理由に、「低いとは断言できない」と言われても・・・
主要先進国の中では、アメリカも含めて日本は実質最下位
そもそも最低賃金の高低は、その国の賃金の中央値に対する割合を見て判断するべき
OECDはこのデータも公表
2018年では日本の最低賃金は中央値の0.42
これは最低賃金制度を導入しているOECDメンバー29カ国中、アメリカとスペインに次いで下から3番目の25位
ちなみに、賃金の平均値に対する最低賃金の割合は0.36で、29カ国中下から4番目

データの中では、最下位のアメリカの数字が際立って低いのが目につく
このように低い数字になっているのはアメリカの最低賃金は決め方が少し特殊であるため実態よりも低い数値が出てしまっている
データにある0.33という数値は、アメリカの賃金の中央値に対する「連邦政府が定める最低賃金」の比率
アメリカでは連邦政府の最低賃金を下限に、各州、各市が独自に最低賃金を決めることができ連邦政府が定める最低賃金は2009/7/24以降、$7.25で変わっていないが、2020/1時点では29の州とワシントンD.C.の最低賃金が、連邦政府のそれを上回る
結果、最低賃金で働いているアメリカの労働者の約90%は、連邦政府が定める最低賃金より高い賃金で働いてる
逆にいうと、連邦政府の定める最低賃金で働いている労働者は最低賃金で働いている人全体の約10%
0.33という数値で他の国と比べるのは適切な比較ではない
アメリカでは、2020/1に20の州が最低賃金を引き上げ
ワシントンD.C.やニューヨーク市は$15ドル、ワシントン州は$13.5、カリフォルニア州は$13など連邦政府の決めた水準を大幅に上回る
2019/5のアメリカ全体の最低賃金は、加重平均で$11.80連邦政府が定める最低賃金の1.6倍(出所:The Real Minimum Wage, Vanek-Smith, Stacey; Garcia, Cardiff, May 16, 2019)
このように考えていくと日本の最低賃金は低すぎる⇒日本では最低賃金の引き上げが急務
GDPは消費+投資+政府支出+輸出-輸入と計算され
このうち最大の項目である消費は究極的には人間の数と給料の掛け算
これから人間の数が減るので消費を守るには給料を引き上げないと・・・

最低賃金が低いことで、日本は高い国際競争力を維持できている。だから最低賃金を上げる必要はない?・・・
日本はGDPに対する輸出の比率が非常に低いだけではなく、そもそも最低賃金で働いている労働者の多くは飲食・宿泊など、輸出と関係がない内需の業種で働いている

最低賃金を引き上げると企業の経営者は労働生産性を向上させないといけなくなる
実際、海外では最低賃金を引き上げると国全体の労働生産性が上がることが確認されてる
逆に言うと、経営者が最低賃金の引き上げにこんなに反対するのは労働生産性を引き上げるという苦労を背負いたくないから?

最低賃金を引き上げると倒産が増え、失業者も増える・・・
実際には徹底的な分析とエビデンスをもとに、毎年適切に最低賃金を引き上げると失業者が増えるどころか、モノプソニーの原理によって失業者は減ることが確認されてる
失業者が増えるぞという脅しは、モノプソニーによる労働者搾取、ボッタクリができなくなることに対する反発

お隣の韓国では最低賃金を上げすぎた結果、倒産が増えて失業率が高まり、大混乱が起きた
しかしこの反論も実は最低賃金を引き上げた直後の状況しか見ていない近視眼的な誤解?

・・・う~ん
どうだろ 一気に上げすぎたから?

今日は~
キノコ
7月の終わり
雨が多かったせいか
地生のキノコが・・・
喰えるのが生えてほしい










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