2019年3月26日火曜日

虐待が脳を変える

ぼや川より
ポチは今・バカ飼い主に・悩んでる
・・・コマった・・・

虐待が脳を変える――脳科学者からのメッセージ』(友田明美、藤澤玲子著、新曜社)の著者である友田明美氏は、小児発達学、小児精神神経学、社会融合脳科学を専門とする脳科学者
友田の著書『いやされない傷』(診断と治療社)をベースとして、その後明らかになったことや検討を重ねてきた推論などを追加したもの
『いやされない傷』は、医学の専門書であり、もっと多くの人に読んでいただきたいという思いから本書
執筆は、わたしがこれまでに書いてきたものや話した内容を、共著者である藤澤玲子さんがまとめ、さらにインタビューや独自の調査で説明を加えるという形で進められた

友田さんは小児精神医学を研究するためにアメリカの
マサチューセッツ州ボストン郊外にある、マクリーン病院の発達生物学的精神科学教室に
同病院はハーバード大学の関連病院であり、全米で有数の質の高さを誇る精神科の単科病院
友田さん
マクリーン病院でのわたしのボスは、マーチン・H・タイチャー
わたしの永遠の師匠の一人である
タイチャーは、小児神経科医から精神科医に転身し、虐待が脳に与える影響を研究していた
面接で初めて先生に会った時、先生はこう言った
「子どもの時に厳しい虐待を受けると脳の一部がうまく発達できなくなってしまう。そういった脳の傷を負ってしまった子どもたちは、大人になってからも精神的なトラブルで悲惨な人生を背負うことになる。」
虐待が脳を変えてしまう――。当然ながら、それは目を背けたくなる事実
虐待を未然に防ぎ、影響を最小限にしていくためには、医療や福祉のみならず、たくさんの人がお互いに支え合わなければならないから
そこで著者は、虐待の種類や歴史と現状、脳の役割と発達などについて解説し、やがて虐待と脳の関係という核心と向き合っていく
本書において著者は、心理学者たちの見解に対して疑問を投げかけている
心理学者たちは最近まで、児童虐待の被害者は社会心理的発達が抑制され、精神防御システムが肥大するため、大人になってから自己敗北感を抱きやすいと考えていた
端的にいえば、精神的・社会的に十分に発達しないまま傷ついた子どもに成長してしまう
だから心理学者たちは、その傷ついたソフトウェアは、治療すれば再プログラムできると考えた
トラウマを引き起こす3つの要因(生物学的要因・心理学的要因・社会的要因)の中の、心理学的要因と社会的要因を修復すればよいということになる
周囲の環境(社会的環境)を整え、どう物事を捉え考えるかという認知の方法(心理学的要因)を改善すれば完治するという発想
しかし、マクリーン病院発達生物学的精神科学教室とハーバード大学精神科学教室のタイチャーは、共同研究をしていく中で、それだけではまだ足りないのではないかと考え始めた
子どもの脳は身体的な経験を通して発達していく
この重要な時期(感受性期)に虐待を受けると、厳しいストレスの衝撃が脳の構造自体に影響を与える
それは、ソフトウェアだけの問題ではない
いわば、ハードウェア自体、つまり脳(生物学的要因)に傷を残すのでは・・・
実際、近年の脳画像診断法の発達により、児童虐待は発達過程にある脳自体の機能や精神構造に永続的なダメージを与えるということが分かってきた
大脳辺縁系、特に海馬に変化が見られることは、動物実験によっても明らかになっている
本書ではその事例が細かく紹介されている
なかでも個人的には、虐待による神経回路への影響の大きさに衝撃
タイチャーらが、虐待を受けて育った人とそうでない人との神経回路の違いを調べたところ
身体感覚の想起にかかわる楔前部(けつぜんぶ)(ここには感覚情報をもとにした自身の身体マップがあると言われる)から伸びる神経ネットワークは、虐待を受けた人のほうが密になっていた
同じく、痛み・不快・恐怖などの体験や、食べ物や薬物への衝動にも関係する前島部も密になっていた
つまりはこうした情報が伝わりやすい脳になっている
一方、意思決定や共感などの認知機能にかかわる前帯状回からの神経回路は、被虐待歴のない人はたくさん伸びているのに、虐待を受けた人はスカスカの状態だった
これらの調査は病院で行われたものではなく、社会で普通に暮らしている人たちを対象にしたもの
どの人も18歳から25歳の調査時点ではPTSDを発症しているわけではなく、うつ病と診断されているわけでもない
大学に通ったり仕事をしていたりと、一般社会に適応している人たち
こうした脳の変化は、疾患や障害の影響で起きたものではない
にもかかわらず、トラウマの痕跡が脳に刻まれている
だとすれば、それが子ども時代の虐待によるものであることは、専門家でなくとも想像できる?
しかし、もしもそうであるなら、虐待を受けた人は、みんな不幸な人生を歩まなければならないのだろうか?
 この問いに対して著者は、それはまた別の話だと
幼少時代に十分な愛着を築けないというのは、傾いた脆弱な土台を築いてしまうようなもの
その上に家を建てるのは大変
思春期に小さな地震や嵐に遭遇するたびに、どこかしらの修理に追われることになる
脆弱な土台を持つ人が、硬い土台を持つ人よりも不必要に多くの苦労をしなければならない
とはいえ、思春期が終わっても小さな工事は続けられる
感受性期後の工事は大々的なものではない。使えるリソースも限られてくる
リソースが限られた中で、一度建ててしまった家の間取りを変更するのは簡単ではない
それでも、柱の数を増やして崩れにくくすることや、床や壁を新しくして頑丈にすることは可能
傾いた土台をまっすぐにすることはできなくても、階段に手すりをつけて、家具を配置して...。頑強な土台を持つ人に比べれば、費用も手間もストレスも多くなるかもしれないが、住みやすく、崩れにくい家に作り変えていくことは不可能ではない
虐待が脳に与える影響の研究は、まだ始まったばかり
大切なのは、研究によって明らかになっている結果を踏まえ、どうすれば虐待経験者を救うことができるのかを考えること
「先には明るい未来があると信じて研究を続けている」

今日は~
フクジュソウ/Adonis ramosa普通種
3月の初め
咲きだしの頃
この黄色もイイ

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