2023年1月17日火曜日

下院議長選挙のドサクサでアメリカ国債がデフォルトに?

政治哲学者ニコロ・マキャベリ
「現実主義者が誤りを冒すのは、相手も現実を直視すれば自分と同じように考えるだろうから、馬鹿な真似はしないにちがいない、と判断した時である」

2022/11/8の中間選挙で僅差ながら多数派を奪回した共和党下院
第118連邦議会が開会した1/3、マッカーシー氏を新議長に選出するはずだった
同党下院議員団が22/11/15に行った投票で、188対31でマッカーシーが勝利していたためだ
しかし、議長候補としてマッカーシー氏に敗れたアンディ・ビックス議員(アリゾナ州)を含め保守強硬派の議員連盟”フリーダム・コーカス”に属する4人と
トランプ前大統領支持の1人から成る共和党議員が反発
造反の輪は20名超に広がり、議長選出に4日、15回の投票を要する羽目に

1回目の投票で下院議長を選出できなかったのは1923年以来、100年ぶり
15回の投票を数えたのは1819年以来
歴代5位
・・・それでも5意なんだ

1位は1955年の133回、2位は1949年の63回、3位は1959年の22回と、いずれも南北戦争が勃発する1961年以前
足元、米国の分断を“南北戦争以来”とする表現が適切である一つの証左と言えよう。
シリコンバレーやウォール街を抱える東西と、南部や中西部との間で格差が広がっており
マッカーシー氏が15回に及ぶ投票過程で、保守強硬派とトランプ支持派に提示した妥協案は、経済と株相場に暗い影を?

共和党の保守強硬派とトランプ支持派がなぜ造反に動いたのか
彼らの主張は主に以下の5つ
・中間選挙で共和党を大勝に導けなかった指導部の責任追及
・マッカーシー氏と提携したPAC(政治活動委員会という政治資金団体)が共和党の予備選挙 に関与した問題対応
・マッカーシー氏から権限を奪い、議員に付与するなど規則変更の必要性
・バイデン大統領など現政権メンバ―に対する弾劾への積極姿勢の欠如に対する批判
・連邦政府支出拡大への不満(23年度包括歳出法案成立に猛反発していた経緯あり)

1/9マッカーシー氏を議長に選出してまもない
下院は第118回議会の規則を220対213と、共和党の賛成多数(1人は212名の民主党議員と共に反対、1人の共和党議員は投票せず)で採択
2024年末まで、2年に及ぶ下院の運営方針を定めたもので、マッカーシー氏が下院議長選出を賭けて保守強硬派に譲歩した内容が・・・
55ページにまとめられた規則の主なポイントは

1) PAYGOからCUTGOへの転換
これまで、義務的支出の拡大や減税による歳入の減少に際し
別の義務的支出の削減や増税など歳入増加によって相殺
財政均衡を目指す“pay-as-you-go(PAYGO)”を規則として盛り込んだ
今回、共和党下院が可決した運営規制法案では
5年または10年の予算枠で義務的支出の純増を禁じ
新規の支出を相殺するための歳入増即ち増税も認めない“cut-as-you-go(CUTGO)”に切り替わる
なお、深刻な景気後退局面などで必要な減税などの措置が完全に封じ込められるわけではない
むしろ減税での赤字を問題視せず、義務的経費の拡大を防ぐもの
例えば共和党は2025年に期限切れとなる2017年成立のトランプ減税の延長を推進できる(他の減税はすでに期限切れ)。

2) 増税に必要な票数を引き上げ
増税の承認につき、下院ではこれまで過半数で可決されてきたが、今後は60%の賛成(425議席の場合は261票)が必要となる
ただし、共和党が僅差ながら過半数を掌握しているだけに、象徴的な変更

3) 予算と債務上限引き上げ法案の一本化要件を撤廃
下院は予算決議を採択すれば債務上限引き上げ法案と一本化させ、上院に送付できる通称“ゲッパート・ルール”を適用していたが、これを撤廃
足元、米政府債務の上限は$31.4兆のところ、22年10月時点で既に$31兆を突破
超党派政策センター(BPC)によれば、財務省による特別措置を講じても23年7~9月に債務不履行(デフォルト)に陥る見通し
回避するには上限の引き上げ実現が必要だが、ゲッパート・ルールの撤廃に伴い債務上限引き上げ法案交渉がチキン・レース化するリスクが強まる
格付け会社S&P(現S&Pグローバル)が米国の格付けを最上級のトリプルAから1段階引き下げた2011年のような、アメリカ国債ショックを彷彿とさせる混乱が・・・

4) 下院議長の解任動議をめぐる提出要件を引き下げ
下院議長の解任動議の提出要件を1人へ引き下げた
マッカーシー氏は当初5人への引き下げを提示していたが保守強硬派の要請が通った
提出後に下院が過半数で可決すれば、議長は解任される
マッカーシー氏は議長に就任したとはいえ、不安定な舵取りを迫られる
なお、2019年に民主党が下院で多数派を奪回するまで提出要件は1人の議員だった
しかし同年、民主党下院は規則を修正
「党の会派や会議の指示によって申し出があった場合」のみ解任動議を提出できるよう、より高いハードルを設けていた

5) 連邦政府職員の解雇や特定プログラムの削減を意図した歳出法案の修正が容易に
連邦政府職員の給与削減や解雇の他、特定のプログラムの削減を意図して歳出法案を修正することを認める規則
19世紀に誕生した“ホルマン・ルール”の復活を盛り込んだ
主党陣営からは、有能な人材を政争の具にするリスクがあると問題視している

6) フリーダム・コーカスの議員、下院規則委員会での議席確保
法案や修正案が議場に持ち込まれるかどうかに大きな影響力を持つ下院規則委員会の9議席のうち、フリーダム・コーカスの議員は3議席を獲得

7) 下院司法特別小委員会を立ち上げ、連邦政府による情報収集に関する調査
共和党が“連邦政府の武器化”と呼ぶ、連邦政府による個人に対する情報収集に関し一元化して調査を行う司法特別小委員会を立ち上げ
調査対象にはコロナ対策、並びに進行中の犯罪捜査などが含まれる見通し
トランプ前大統領のマールアラーゴにある邸宅でみつかった機密文書押収などに関する調査の他
コロナ対策の正当性などについて調査する可能性がある
初代委員長には、フリーダム・コーカスの初代議長で、今回の下院議長選でいくつかの票を集めたジム・ジョーダン議員(オハイオ州)が就任予定

8) 72時間ルール
下院での採決の少なくとも72時間前に法案本文を公表
議員に法案を読む時間を付与することを義務づける
22年12月に成立した23年度包括歳出法が法案として公開された直後、採決された動きへの報復措置

9) 戦略石油備蓄の中国への売却禁止、IRS向け予算拡大取りやめなど
民主党が財政調整を活用し与党のみで通過させたインフレ抑制法では、今後10年間で内国歳入庁(IRS)に$800億の資金が割り当てられたがその撤回を目指す
また戦略的石油備蓄の中国への売却を禁止する
その他、補助金を経由した人工妊娠中絶の禁止を盛り込んだ

規則内容が明記された55ページに盛り込まれていない最も重要な要件
今後10年の裁量的支出の規模(各会計年度に予算法の制定が必要)を22年度の$1.5兆を上限とする案
23年度の包括歳出法は約$1.7兆
そのうち国防費は、ウクライナ戦争や中国の軍事的脅威の高まりから、共和党の主張が通り前会計年度比10%増の$8580億と過去最大に
非国防費は、民主党の主張を盛り込み同5.5%増の$7725億となった
しかし、裁量的支出を22年度水準で制限するならば、これが巻き戻される
共和党のトニー・ゴンザレス議員(テキサス州)が今回採択された下院規則に反対票を投じた理由はこれが一因
ロシアや中国など軍事的脅威が一段と高まる中
「数週間後に訪台する予定だが、(米国では防衛費の削減が視野に入るなか)同盟国などに防衛費引き上げを要請できようか」
何より、11月消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.5%とピーク時の9%を下回るとはいえ物価は高止まりしている
年末にかけインフレが大幅に鈍化しなければ、想定以上の予算削減につながりかねない

さらに今後の予算をめぐって、マッカーシー氏は23年度包括歳出法のような一本化した法案内容ではなく
個別に採決する方向で譲歩
ただでさえ、予算案が予定通りに上下院で可決しない状況が続くなか
予算協議の長期化と妥結への不確実性をもたらし、政府機関の閉鎖リスクが高まった

下院議長の解任動議が容易になったのも、予算協議が暗礁に乗り上げる要因
下院議長ポストを巡り、再び議会が空転しかねない
2015年7月には他ならぬフリーダム・コーカスの議員1人が解任動議を提出
ジョン・ベイナー議長を数カ月後に辞任・引退に追いやった
当時もマッカーシー氏は次期議長の最右翼だったが党内での結束を引き出せず、ポール・ライアン議員(ウィスコンシン州、トランプ大統領誕生後の2018年には同氏との対立などを受け引退)が結果的に選出された

ワシントンD.C.在住のある政治評論家
「さすがに共和党の保守強硬派でも、2024年の米大統領選を控え、政府機関閉鎖やデフォルトのリスクを冒すような行動は控えるだろう」

・・・己の主張のタメなら
何がどうなろうと・・・

今日は~
レプトテス ビカラー/Leptotes bicolor

画は20年3月の終わり
ツボミがついてる
その後
花を見てない
一体何だったの?

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