2021年12月13日月曜日

ドイツが感染爆発を防げなかった理由

 コロナ対策優等生ドイツが感染爆発を防げなかった理由
ドイツの感染症研究機関ロベルト・コッホ研究所(RKI)
20212/11/25には7万6414人という同国で最多の新型コロナワクチン新規感染者が確認された
死者数は、357人
前週に比べて約2万3000人の増加
10/10の新規感染者数は1万934人だった
累積死者数は10万人を超えた
直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数(7日間指数)は11/25時点で438人
フランス(208人)、イタリア(114人)、スペイン(90人)を大きく上回る

RKIのローター・ヴィーラ―所長
「現在の状態は零時5分すぎだ」
「取り返しのつかない、最悪の事態が起きた」
「新規感染者の0.8%は死亡する。つまり5万人が新たに感染すると、その内400人の命が失われる。思い切った措置を取らなければ、我々は悲惨なクリスマスを迎える」

ドイツ集中治療・救急医学協会(DIVI)
11/25の時点で同国の集中治療室(ICU)2万2163床の内、89.5%に相当する1万9829床が埋まっており
その内4202床がコロナ重症者の治療に使われている
使用可能なICUのベッドは残り10.5%
多くの病院では、急患を除いて、コロナ以外の患者の手術を延期せざるを得ない状態に追い込まれている
・・・一時期の日本

特に旧東ドイツ・ザクセン州
この州では7日間指数が1075人と全国で最悪
重症者の約90%が、ワクチン未接種者
ザクセン州ではワクチン接種率が57.8%と全国で最も低い
同州医師会のエリク・ボーデンディーク会長
「このままの状態が続くと、我が州の病院はトリアージを迫られる可能性があり、そのための準備を始めなくてはならない」
トリアージとは戦争や自然災害時に用いられる手法
医療資源が逼迫した時に、命を救える見込みが高い患者を優先的に治療する
救命の見込みが低い患者は、後回し
去年3月~4月に、イタリアやスペイン、フランスの一部の病院はトリアージを余儀なくされた
このためザクセン州などの病院から約50人の重症者が連邦軍の輸送機やヘリコプターで、北部の病院へ搬送された
ICUのベッドが不足しつつあるバイエルン州の病院からも、イタリアへ重症者が搬送された
去年春にはイタリア北部ベルガモの重症者がドイツへ搬送されたが、今年は逆の状態
ドイツは去年の第1波ではイタリアやフランスなどに比べて死者数を低く抑えることに成功し、欧州のコロナ対策の優等国と呼ばれた
その国が、今年はなぜ感染爆発を防げなかったのか?

その原因は
一つは、ワクチン接種の遅れ
11/24の時点でドイツの接種率は68.2%
イタリア、スペインやフランスは、去年のコロナ第1波で多数の死者を出し、長期のロックダウンが経済に深刻な打撃を与えた
何の備えもなく未知の病原体に襲われたイタリア北部やマドリードでは、病院を中心に急激にウイルスが拡大し、多くの高齢者が次々に命を落とした
イタリアとスペインで接種率が高い理由は、市民の間でこの恐るべき経験が骨身にしみているから
ドイツ人たちは去年このような悲劇を経験しなかったので、南欧諸国に比べると切迫感が低かった
今年の夏以降規制が次々に緩められ、ワクチンを2回受けていればクラブ(ディスコ)や映画館ではマスク着用や社会的距離の維持義務も廃止
レストランやバーは久々に満員になり、一時町にはコロナ前のような活気が戻った
ドイツのウイルス学者たちは今年の夏から
「接種率を80~90%に引き上げなければ、冬に再び新規感染者が急増して危険な状態になる」
と警告したが、当時のメルケル政権は対策を強化しなかった

これに対し2020年に辛酸をなめたイタリアやフランスは、今年夏から秋にかけて、接種率を引き上げるための厳しい措置を次々に実行
イタリアのドラギ政権は今年9月
「全ての就業者に、接種済み、治癒または陰性証明の提示を義務付ける」
10/15以降、この規則に反する者には出社を禁止し、自宅待機中には給料も支払わないという強硬な措置を取った
ドイツがこの措置を導入したのは11/24で、イタリアに比べて約1カ月遅れた
パンデミックでは、1カ月の遅れが大きな違いを生む

フランスのマクロン政権も今年9/15に全ての介護・医療従事者にワクチン接種を義務付けた
この結果、約3000人が接種を拒否して事実上解雇
ドイツでは、介護・医療従事者に対する接種義務について議論は行われているものの11/26時点では義務化されていない
病院関係者らは、医療資源が逼迫している今、接種の義務化により看護師や介護職員の数がさらに減ることを懸念
さらに政府関係者は、接種を拒否して解雇された従業員が連邦憲法裁判所で違憲訴訟を起こす可能性もあると見ている
しかし11/2には、旧東ドイツ・ブランデンブルク州の介護施設で高齢者11人が新型コロナウイルスに感染して死亡
介護職員の約半数がワクチンの接種を受けていなかったことがわかり、政府関係者に強い衝撃を与えた
3回目のワクチン(ブースター)の接種開始も遅れている
イスラエルは今年7月に、2回目のワクチンの投与から6カ月を経過した市民に対しブースターの投与を始めた
この結果、11/24の時点でイスラエルの7日間指数18人で、ドイツの24分の1
ドイツ連邦保健省の常設予防接種委員会(STIKO)が、ブースター接種を推奨したのは10/18
11/22の時点で人口100人あたりに投与されたブースターの本数はイスラエルが43.6本、イギリスが22.9本
ドイツでは7.3本
しかも当初STIKOがブースターを推奨したのは年齢が70歳を超えた市民だけ
政府は11月になって事態の深刻さに気付き、ブースター投与の対象を、18歳以上の全ての市民に拡大
STIKOのトーマス・メルテンス委員長
「イスラエルのデータの分析に時間がかかってしまった。ブースター投与の勧奨が大幅に遅れたのは失敗だった」

あとワクチン反対者またはワクチン懐疑者と呼ばれる人々がいる
ネット上に流布される
「コロナワクチンは、市民をコントロールしようとする政府の陰謀だ」
これを信じている人や
薬草などを使う自然療法を重視するために、あらゆるワクチンの投与を拒む人々
ワクチンの長期的な副作用を懸念する人々
あるいは政府のあらゆるコロナ対策を市民権を抑圧しようとする試みだとして拒否する人々
RKIが11/22に発表したアンケート調査
回答者のうち約8.6%がワクチンを打つつもりはないor決めていない
ドイツの人口約8200万人にあてはめると、約700万人
ドイツの接種率を引き下げているのは旧東ドイツ
この地域では、旧西ドイツに比べて接種率が大幅に低い
ザクセン州の接種率は全国で最も高いブレーメン市(州と同格)より21.9ポイントも低い
ドレスデン工科大学が今年6月に発表した世論調査では
ザクセン州では 絶対にワクチンを打たない、と答えた人の比率が12%
全国平均(5%)を大きく上回る

なぜ旧東ドイツでは、ワクチン忌避者の比率が高いの?
その背景には、政治的な理由も
極右政党「イツのための選択肢(AfD)」支持者には連邦政府のコロナ対策に反対する者が多い
彼らは屋内でのマスクの着用やワクチン接種を
「市民の自由を抑制する政府の策略」として拒否
・・・トラさん支持者と同じ
最近ベルリンの連邦議会議事堂で、AfDの一部の議員たちが議場で義務化されているマスク着用を拒んだために、着席を禁止され参観者の席に座らされたことがある
AfDの支持率は、旧西ドイツよりも旧東ドイツの方が高い
今年9月に行われた連邦議会選挙では、AfDがザクセン州で25.7%、テューリンゲン州で23.7%の得票率で、これらの州で首位
極右政党への支持率と、ワクチン忌避者の比率には相関関係があるかも
接種率が低いこれらの州では、現在7日間指数が高い傾向にあり、医療資源の逼迫が深刻化
かつてソ連によって支配されていた旧社会主義圏の国では、西欧の自由主義国よりも接種率が低い

11/23付のドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)
ベルリンのフンボルト大学で歴史学を教えたハインリヒ・アウグスト・ヴィンクラー教授
旧社会主義国で接種率が低い理由について
ソ連の影響下にあった時代に、これらの国々の政府は、マルクス主義のドグマを社会科学の一種として市民に押しつけた
社会主義政権は、一党独裁を正当化するために社会科学を悪用
その結果、1990年代のソ連と社会主義政権の崩壊後には、市民の間で科学に対する不信感・敵意が広がった
ロシア正教会やブルガリア正教会などの多くの保守的な聖職者の間で、近代思想や科学、変革に対する反感がある
身体にワクチンを取り入れることは、神の御業を人間が冒瀆することになる
ヴィンクラーは、ルネサンスや宗教改革、啓蒙思想が、ロシアやルーマニアなど正教会の影響が強い国々ではなく、西欧の国々で起きたことも東西間で進歩や変革に関する違いがあることの証左であると見ている

旧東ドイツは、1945年~1990年までソ連の影響下に
社会主義政権は市民が党の路線から逸脱することを許さず、政府批判者を厳しく処罰した
社会主義時代の東ドイツでは多くの市民が、生活の糧を得るために政府に服従するふりをしながら、心の底では反感を抱いていた
多くの市民の心に政府の指示を鵜吞みにせずに、まず疑う精神を植え付けた?
・・・ロシアでは、そもそも自国のワクチンが不安だと・・・
かの国も・・・でも表立った声は聞こえない
その意味では、ロシアはまだマシ

ドイツのコロナ対策が大幅に遅れたもう一つの理由は
8~9月に政治家たちが連邦議会選挙に時間とエネルギーを集中させて、コロナの冬への備えを軽視
ドイツがコロナ第1波に襲われた2020/3には、アンゲラ・メルケル首相が異例のテレビ演説で国民に語りかけ
第二次世界大戦後初めてのロックダウンを実施する理由を切々と説明
「事態は深刻だ。そのことを理解してほしい」
という首相の言葉を多くの市民が信じ、他人との接触を制限した
だが今回の第4波では、メルケル首相のテレビ演説、もしくはそれに匹敵する国民へのアピールは行われていない
メルケル首相は、16年間の任期を終えて12月に政界を引退することが決まっている
退陣間際のメルケル政権にはもはや統率力がない
ショルツ政権も11/26日の時点では正式に発足していない
社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)は11/24にようやく連立契約書を完成させた
オラフ・ショルツ首相の就任は12月の第1週になる予定
この三党も、本腰を入れてコロナ対策を指揮する状態にはなかった
ドイツは権力の空白期に、コロナウイルスに襲われた

RKIのヴィーラー所長
「我々は今年夏以来、接種率を高めるように政府に何度も勧告したが、政府は耳を傾けなかった」

経済日刊紙ハンデルスブラットのガボア・シュタインガルト元編集長
「政治家たちは、選挙戦の期間中に支持者が減らないように、『冬へ向けて接種率を高めるなどの措置が必要だ』という、国民にとって耳が痛いメッセージを避けた。この結果市民の警戒感が緩み、同国の接種率は低い水準に留まった」

ドイツの公共放送局ARDの記者
「現在のドイツ政府のコロナ対応はDesaster(大失敗)としか言えない。秩序を重んじ効率的なはずのドイツは、一体どこへ行ったのか?」
しかも、ドイツ政府は2020年とは異なり、全国規模のロックダウンをもはや実施できない
メルケル政権のイェンス・シュパーン保健大臣のイニシアティブで去年3月に施行された
国家規模の緊急疫病事態は、今年11/25に終了
ショルツ次期政権を構成する3党も、終了に賛成した
国家規模の緊急疫病事態の終了により、全国または州規模のロックダウン、商店やホテルの営業禁止、国内旅行の禁止などは、原則として不可能になった
ドイツ連邦政府は、大規模なロックダウンなしに、経済活動や社会生活を通常に近い状態で続けながら、現在の感染爆発を抑え込まなくてはならない
・・・日本の手法?
まあ日本は軟弱なだけなんだけど

このため各州政府は11月下旬から、クラブの一時的な営業禁止、職場や公共交通機関での3G規則(ワクチン接種者、治癒者またはコロナ検査実施者〔3G〕のみの立ち入りが可能)の導入
映画館、コンサートホール、劇場などへの2Gプラス規則(接種者と治癒者〔2G〕は、接種または治癒証明書だけではなく、抗原検査による陰性証明書も見せなければならない)の導入
テレワークが可能な企業では経営者がテレワークを許可するよう義務づけるなどの措置を実施
ただし各州政府は、ウイルス拡大が特に深刻な地域については、町や郡単位でロックダウンなどの厳しい措置を実施できる
つまりドイツ連邦政府と州政府は
ロックダウンを未接種者に限ることによって、経済や学校教育への悪影響を最小限に留めようとしている
未接種者の生活を不便にすることで接種を促す目的も
で・
12.2連邦政府と州政府は感染者数を抑制するために、さらに厳しい措置を取ることで合意
政府は今年末までに3000万人にワクチンを接種する
法改正によって薬局の従業員や歯科医、介護職員も接種作業に動員する
新規感染者の増加速度が特に高い地域では、地方自治体はクラブ、バー、レストランなどの営業禁止を命じる
食料品店や薬局を除いて、商店にも2G規則を拡大
接種者か治癒者以外は入店を禁止
ワクチン拒否者には接触制限を実施し、自分の家族以外は2人までしか接触できないようにする
オラフ・ショルツ次期首相は来年2月までに、小児などを除く国民全員に対するワクチン接種義務を法制化する作業を始めることを宣言
義務化された場合には、接種拒否者は罰金を科される
政府は、市民の自主的な判断に任せていては、もう接種率は上がらないと判断
だが義務化するには、政府が法案を連邦議会に提出し、議員たちが票決で法案を可決させなくてはならない

・・・たぶんドイツはイロイロな意味で、あの頃には戻れない
例えば移民とかで理想を追おうとしても
膨れ上がる移民という現実が、ソレを許さない
外交でも対ロシアとかで強いドイツを演じても
それをバックアップする軍は、かなり前から弱体化
おかげで?財政は健全化、アメリカ、日本とは比較にならない

今日は~
ネケイロプテリス オバタス/Necheiropteris ovatus?

11月半ば
玄関避難の前
鬼板から露骨にハミ出すように
見なかったことにしたけど
来春は分けるしかないか

0 件のコメント:

コメントを投稿