2021年11月27日土曜日

イベルメクチンは効く?効かない?

 臨床試験は続行中で有効性は未確認だが、リベラルと保守の対立で論争がヒートアップして冷静な判断が困難
決定的な治療法がない病気に効く薬が見つかれば、長年の苦労は全て吹き飛ぶ
イギリス リバプール大学の薬理学者アンドルー・ヒル
HIVに有効な抗ウイルス薬の開発に関わった経験から、そのことをよく知っている
「何百万もの人々の命を救えるんだ。研究者冥利に尽きるよ」
そんなヒルも昨年、イベルメクチンに大いに期待を抱いた1人
動物用では40年の使用実績があり、既に特許が切れてジェネリック薬品も販売されている
この薬に新型コロナウイルスの増殖を抑える効果があると、昨年春に複数の研究チームが発表した
イベルメクチンは人と動物用の抗寄生虫薬として既に量産されているため、新型コロナに有効であれば世界で多くの感染者が救われる可能性がある
ただし、そのためには試験管内だけでなく、臨床でも有効と認められなければならない
初期の論文の一部はその後、データの不正など数々の問題があることが発覚
当初は胸を躍らせたヒルも、関連論文を詳細に検討した結果、期待されたほどの効果はなさそうだと結論付けた

ヒルら科学者や医師、規制当局は新型コロナ感染症の治療薬としてイベルメクチンを推奨していない
こうした姿勢にアメリカでは右派が猛反発している
右派に言わせれば、イベルメクチンは新型コロナの奇跡の特効薬
共和党の一部有力議員は、ワクチンやほかの治療薬で儲けたい大手製薬会社が専門家を抱き込んでイベルメクチンをたたいていると主張
その筆頭であるランド・ポール上院議員は、リベラル派がイベルメクチンの効果を認めないのは、ドナルド・トランプ前大統領を憎むあまり錯乱したせいだと
リベラル派も負けてはない
イベルメクチンが新型コロナに効くというのは危険なデマにすぎず、そんなたわ言を真に受けるのは科学不信のいかれた反ワクチン派だけだと、リベラル寄りのメディアは断じている

感染症専門医のデービッド・ブルウェア
「服用者の大半がトランプ支持者であるのは事実だが、メディアはそこに乗じて偏向報道をしている」
ブルウェアはミネソタ大学の研究者で、イベルメクチンなど新型コロナの治療薬候補の臨床試験の責任者の1人
今のアメリカでは、科学も左派と右派の政治的対立と無縁ではない
まだ確立された定説がなく、科学者の間で議論が続き、市民や政治家がそれに聞き耳を立てている状況ではなおさら
確かに現時点でのコロナ対策について、科学は既に明快な結論を出しているように見える
今のところ重症化を防ぐ効果が認められ、安全性も担保された手段はワクチン接種のみ
アメリカ食品医薬品局(FDA)は新型コロナの治療薬としてはイベルメクチンを承認していないし
アメリカ疾病対策センター(CDC)に加え、アメリカの主要な医師薬剤師の団体もイベルメクチンの大量服用は深刻な健康リスクを伴うと警告している
ただ、コロナ治療薬としてのイベルメクチンの有効性を調べる大規模なランダム化比較試験は今も行われており、まだ十分なデータは出そろっていない
そのためわずかながら科学的な不確かさがあり、そこに付け込んで左右両陣営が事実をゆがめ、過激な主張を競い合っている

デービッド・ブルウェアさん
「政治的な論争になっているが、もっとデータが集まらないと結論は出せない」
大半の科学者はイベルメクチンも抗マラリア薬のヒドロキシクロロキン同様、新型コロナの治療薬としては承認されないだろうとみている
しかしその予想が当たっても政治的熱狂を帯びた議論は収まらない
有効性と安全性が実証されていない薬でも、使用するのは個人の自由
と主張する人々がいる
その是非をめぐる議論はアメリカでは建国以前からあったが、パンデミックで再び火が付いた

主要メディアはおおむね、イベルメクチンは家畜用の駆虫薬であり、新型コロナに効くなどという考えはナンセンスだと一蹴
だがこれは、この薬のより興味深い背景を無視した主張
イベルメクチンを開発した製薬会社メルクは、かつてこの薬で年間10億ドルの売り上げを得ていた
大半が家畜用に販売されていたとはいえ、イベルメクチンは人の寄生虫駆除にも広く処方され、おかげで熱帯地方の風土病であるリンパ性フィラリア症やオンコセルカ症をほぼ撲滅できた
アメリカではアタマジラミと疥癬の治療薬として威力を発揮しており、日本の大村智博士らはこの薬の開発につながる発見で2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した

イベルメクチンは抗ウイルス薬ではないが、パンデミックの初期に相次いで発表された論文は、感染細胞を使った実験で新型コロナの複製を抑える効果が認められたとしている
人間の患者に投与した初期の試験でも強力な効果があったと報告され、新型コロナの安価な治療薬になると期待された
用法・用量を守れば、副作用はごくわずか
アメリカ病院薬剤師会のマイケル・ギャニオ
「抗寄生虫薬としては数十年に及ぶ安全データがある」
メディアはイベルメクチンの信奉者が馬用の薬を買いに走って大量服用しているなどと伝えたが、ギャニオによるとこれは誤報だと
彼らは適応外使用、つまり承認された用途以外での処方を医師に求めただけで、そこに違法性はない
薬剤師は安全性に懸念があれば処方薬の提供を拒否できるが
「むげに断ることはまずない」
デービッド・ブルウェアさん
有力メディアはイベルメクチン論争の微妙なニュアンスを無視して、馬の駆虫薬というレッテルを貼り、インチキだと騒ぎ立てた
「奇跡の薬ではないにせよ、そこまで目の敵にするのはいかがなものか」

右派の間では昨年からイベルメクチンが新型コロナに効くという噂が広がっていたが、ブームに火が付いたのは今年初め
FOXニュースの司会者ローラ・イングラムが言い出してから
医療従事者や科学者、規制当局は有効性を裏付けるデータが大幅に不足していると反論した
これに対して、上院議員のポールは地元ケンタッキー州での集会で
トランプ支持者が支持しているからとの理由で、研究者はイベルメクチンにわざと背を向けていると発言したと
(ポールは後に、自身の見解が誤って報じられたと主張)

保守派著名人のこうした姿勢によって、政府や医療業界は新型コロナ治療ではなく
製薬会社がワクチンから得る利益の保護により関心を持っているとの主張が強固になった

ミネソタ大学のブルウェア
これは「ナンセンスの極み」
「政府は複数の新たなイベルメクチン臨床試験に資金を提供している」
アメリカでは現在、全国規模の臨床試験として
患者1万5000人(推計)が参加するデューク大学主導のACTIV-6や
患者1200人を対象にしたミネソタ大学の研究チームなどのCOVID-OUTが実施されている

アメリカ医師会(AMA)や規制当局は今年に入って、より明確なデータが不足したまま新型コロナ治療にイベルメクチンを用いることに強い反対を示し始め処方箋の入手がより困難になった
イベルメクチンの熱狂的支持者が、処方箋なしで購入できる動物用医薬品店に足を運ぶようになったのはそれから
おかげで、ブームの危険性は増し
人間より体重が重い馬や牛に使われる家畜用イベルメクチンは一般的に濃度が高く、人間の上限用量の最大15倍に達する
軽度の過剰摂取でも吐き気や筋肉痛、下痢などの副作用が確認されており、摂取量が増えれば副作用も深刻
アメリカ全土での過剰摂取件数の把握は難しいが、CDCとFDAにはイベルメクチン過剰摂取による重度の中毒症状の報告が相次いでいるという
イベルメクチンを求める人が急増したとみられる今年8月には、オレゴン州ポートランドの毒物センターが入院事例5件を報告
そのうち2件は集中治療が必要だった
深刻なリスクを冒してイベルメクチンを自己投与することで期待できる効果は?
答えは、おそらく、ほぼゼロか皆無
当初の研究は主に昨年、および今年の早い時点で行われ、重症の新型コロナ患者に大きな効果があるとの結果を示しているように見えた

リバプール大学のヒルは、これらの研究のメタ分析を最初に手掛けた1人
ランダム化比較試験11件の情報を統合し、今年7月に発表した論文で
イベルメクチンによって死亡率が56%低下したと結論付けた
だが対象とした研究の1つにデータの誤りがあるとの指摘を受け、結果を見直した
肯定的な結果はどれも虚偽データやお粗末な研究デザインのせいで信憑性に欠けることが明らかになった
ヒルさん
「不正やバイアスを排除したら、後には何も残らなかった」・・・

ただし、初期研究が間違っていたからといって、イベルメクチンが全否定されることにはならない
答えを明らかにするため、対照群と比較して医薬品の有効性を注意深く検証する大規模な臨床試験を行うべきだ、科学者らは主張している

イギリスではオックスフォード大学主導の下、患者5000人が参加する臨床試験PRINCIPLEが行われている
いずれも今年末までに予備的な結果が出る予定
アメリカ国立衛生研究所(NIH)には、より小規模な臨床試験約75件が登録されており
今後1年以内に豊富なデータがそろうだろう

イベルメクチンの有効性が実証される可能性について、ヒルやブルウェアは楽観的な見方をしていない
とはいえ、重要なのはデータが出るまで待つことだと

だが臨床試験をしようと、未承認の新型コロナ治療へのアクセスを要求する大勢の声が消えることはないだろう
アメリカン大学(ワシントン)のルイス・グロスマン教授(法学)
こうした風潮は、政府や医療界が推奨するワクチン接種を拒む姿勢と表裏一体だと・・・

アメリカにおける医学的助言・規制への反発を研究するグロスマンさん
政府や医師への不信感は個人の判断や信条を重視する医療の自由というムーブメントの本質
いつの時代にもアメリカに存在していたこの動きは、以前に増して強まっているのかもしれない
「政府と医療と大企業はある種の闇の協定を結び、市民にそれを押し付けているとアメリカ人は昔から感じてきた。この薬は服用すべきでないと自分に命じる権利は誰にもない、という感情はその一環だ」
・・・まあ、前科が・・・
新型コロナのパンデミックは、医療の自由というイデオロギーの中でも強く表れた
もう1つの要因が、リベラル派の「ディープステート(国家内国家)」に不安を抱く保守派という構図を取った政治的分断
・・・逆の見方も・・・
ルイス・グロスマン教授(法学)
パンデミックの下、党派的偏向が医療不信を過熱させている
そのせいもあって、ヒドロキシクロロキンや消毒液注射、より最近では過酸化水素吸入など、時に危険なエセ治療法の誇大宣伝が加速している

医学的審査に合格する見込みは薄いものの、新たに幅広い支持を獲得しそうなのが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)系抗鬱剤フルボキサミン
イベルメクチンと同様、初期研究ではフルボキサミンの抗炎症作用に効果が期待できそうだとの結果が出た
アメリカでの大規模臨床試験は、否定的な予備結果を受けて9月半ばに中止された
だが、ほかに複数の試験が継続中

リバプール大学のヒル
イベルメクチンの初期研究を否定して以来、絶え間ない憎悪の標的になり
「イベルメクチン支持者は執拗で攻撃的だ」
棺桶や首つり縄の画像付きの脅迫状も送り付けられている

・・・淡々と事実を積み重ねる
だけではスまない信条?
誰しも色眼鏡はかけてるけど・・・

今日は~
アジアンタム レニフォルメ/Adiantum reniforme

ガラス容器・ハイドロもどき仕様
コツボゴケをトッピング

今日は水やり日
エケベの2種を除いてオール
まだ冬体制になって初めての水やり
ちと時間がカカった
馴れれば早くなる
時折、小雪が舞う中なんで凍結しないかとヒヤヒヤ
風も無く、気温もそんなに低くならなかったのでセーフ

0 件のコメント:

コメントを投稿