2024年2月20日火曜日

お医者様のプライド?

韓国政府が、高齢化社会の急速な進展を見据えて医学部の大幅な定員増を決めた
医師不足が懸念される中、本来なら歓迎されるべき方針のはずだが医師会は猛反発
出生率がOECD(経済協力開発機構)諸国で最も低い韓国
高齢化が驚異的な速さで進んでいる
近い将来、深刻な医師不足に陥ることが懸念されるなど、大きな社会問題となっている
そんななか韓国政府は2/6、2025年から医学部の定員を増やすことを決めた
現在の3058人から2000人増やして5058人にするという
1000人あたりの医師数は、日韓ともに2.6人(2021年)で、OECDの平均値3.7人を大きく下回っている
ところが、この医学部定員増の決定に対し、韓国社会で猛反発が起きている
ま、現場にいる医師たちが大反対している
定員増が発表された翌日の2月7日、大韓医師協会はゼネストなどの集団行動を予告
臨時代議員総会を開催し、定員増を阻止するための非常対策委員会を設置
15日には全国16の医師会により各地で決起大会が開かれた
また、専攻医(日本の研修医に相当)たちも定員増に反発
大韓専攻医協会は12日にオンラインで臨時代議員総会を開いて定員増を阻止すべく、夜を徹して議論した

医師が抗議集会に参加すれば、その間の医療現場は医師が不足し患者に対して十分なケアができなくなる恐れがある
医師たちがストライキをする可能性もあり、これに対して韓国政府は対抗処置をとることを表明
ストライキが決行された場合には、業務復帰命令を出し、従わない場合には医師免許の取り消しなど強硬的な手段を辞さないとしている

医学部の定員増の話は今に始まったわけではない
リベラル派?の文在寅政権下の2020年にも、医学部の定員を10年間かけて4000人増やし7000人程度にする方針が打ち出されたことがある
このときも大韓医師協会が猛反発
医師は足りているとして、コロナ禍だったにもかかわらずストライキに打って出た
結局、コロナ対策を優先するために政府は医師たちの要望を受け入れて定員増を見送った

医学部の定員増に反対する理由としてまず考えられるのは、選挙対策として医学部の定員増が打ち出されているのではないかという、政治への不信感
医学部の定員増は韓国社会が望んでいたものであり、発表後の世論調査ではその影響で、大統領支持率が1.9%アップして39.2%
一方で、韓国では4/10に国会議員選挙を控えており、与野党の支持率がほぼ拮抗
選挙まで2カ月に迫ったタイミングでの医学部定員増の発表が、選挙での票集めだと指摘されている
国民の意思に沿うように政策を打ち出して、選挙後に医師会の要望を聞いて医学部の定員を再調整するのでは?との意見がある
これに対して保健福祉部は13日に行ったブリーフィングで反論
そして医学部を目指す若者の動機が不純
昨年11月、日本の科学技術振興機構が運営する韓国コラムに掲載された記事で
済州大学医学専門大学院のイ・サンイ教授
「医師の数が足りないのは事実であり、増やすこと自体には反対しない。ただ、今は増やしても人気のある分野、収入が高い分野に集中するだけである。必要なのは、必須医療分野での医師の増加である」

つまり医学部の定員を増やしても、高齢化社会で必要とされる分野での医師の増加が見込めないと
韓国の大学入試は苛烈
韓国では以前より、医学部を目指す若者は医師という仕事そのものより
職業としての安定性や、収入の高さ、そして社会的な尊敬に関心をもっている
ちょうど1年ほど前になるが、韓国メディアのヘラルド経済で

医学部4年に在学中の学生は、「理系だと卒業して就職するまでに何年もかかるが、医学部だと落第さえしなければ就職が保証される」
また理系の浪人生によれば、医者が高収入であるために、「医学部に出願しないのは人生の損」
そうした状況では定員の増加が必要とされている医療の充実に必ずしもつながらないという理屈は理解できる
そんな若者の意識を醸成しているのが両親の価値観
韓国ネットメディアのファイナンシャルニュースの報道
子息を医学部に進学させたい理由として
安定した職業や高収入、さらに社会的な尊敬が上位に挙げられている
生活への不安、金銭欲、プライドが医学部進学の背景
韓国では空前の医学部ブームが巻き起こっている
ソウル大学の理工系学部よりも、地方大学の医学部の方が進学する学生のレベルは高いと
そのため医学部の定員が増加すれば、先の収入やプライドといった理由から
理系学生のなかで医学部に進学希望先を変える若者が増えるのはほぼ確実
そうなると医学部進学への競争は激化する
韓国では「人に負けるな」と小学生から教えられると韓国人から聞くが、近いうちに「理系学生であれば医学部を志願しなければ恥」といった状況が起こりかねない
優秀な理工系の人材が医学部に流れてしまったら、自動車やデジタル・ITなど韓国の重要な産業の基盤を中長期的に揺るがすことにもなりかねない

・・・日本も

高齢化社会の到来を見据えれば医師の増員は不可欠
だが選挙対策で拙速に医学部増員を決めたり、医学部を目指す若者の金銭欲やプライドを刺激したりするだけでは、本当に必要な医療の充実を実現させることも、社会・経済全体に必要な人材の育成もおぼつかない?

・・・学生の動機はともかく、増やさない訳にはいかない

2024/2/19韓国警察トップの尹熙根警察庁長
政府が医師不足などの対策として発表した大学医学部の入学定員増に反発し、医師たちが団体行動を予告していることについて
団体行動に関する告発がある場合は最大限迅速に捜査する
「主導者に対しては検察と協議し拘束まで念頭に置いて対応する」

韓国では先週、一部の専攻医(研修医)が退職届を提出したのに続き
ソウルにある五つの大型病院に勤務する専攻医全員が19日中に退職届を出し、20日から勤務しない方針を明らかにしている
保健福祉部は19日、全国の専攻医を対象に診療維持命令を出した

尹氏
「今回の事案は国民の生命・安全に直結するため、警察の役割が極めて重要だ」
「事態があまりにも大きく拡大したり長期化したりして国民に被害を与えないよう強力な捜査まで念頭に置いて対応する」
保健福祉部と合同で現場調査を行い、専攻医が実際に業務を行っているかどうかを確認する方針を表明
現在までに医療界の団体行動に関する112番通報(日本の110番通報に相当)は1件があった
通報は医師や医大生が利用するオンラインプラットフォームにストライキを実施して病院の電算資料を削除・変更し、システムをまひさせるよう呼びかける書き込みがあったと
警察が投稿者の特定を進めており業務妨害教唆容疑の適用が可能という

尹氏
「今後もこれと類似したフェイクニュースのような書き込みが飛び交うと予想される」
「相応の措置を取る」

・・・なんとも、らしい

そして
2024/2/22韓国・国民日報
「政府の医学部定員拡大の方針に反対した研修医らによるストライキが広がっている中、兵役未了の研究医の海外旅行問題をめぐり兵務庁と医療界が攻防を繰り広げている」
韓国のオンラインコミュニティに21日、ある医師から
「同僚が去って激務が続き、つらくて辞職した研修医の後輩が休養を兼ねて東京旅行に行こうとしたところ、兵務庁から出国禁止にされていたそうだ」
「ここは北朝鮮なのか。出国禁止令状も出ていないのに出国が禁止されるなんて、違憲ではないのか」

兵務庁はすぐさま反論
「これまでに適用されてきた指針に変更はない」
関連法によると本来兵役を終えていない男性が海外旅行をする際は兵務庁の承認が必要となる
医学部の学生が医務士官候補生を選択する場合、一般兵として入営するのではなく、研修を終えるまで兵役を先送りし、その後医務将校か公衆保健医として兵役義務を履行できる
研修中に海外旅行に行く場合は、所属病院長の推薦書を兵務庁に提出しなければならない
ただ本人の病気などの理由で正常に退職し、業務開始命令の対象者でない場合は所属機関長の推薦書を省略できる

「研修医の『辞職届提出』を『退職』とみなしてはならないため、旅行に承認が必要だというだけのこと」
さらに兵務庁21日に
「兵役を終えていない研修医が国外旅行を申請する際に兵務庁などの推薦書を添付しなかった場合は許可を保留とし、本庁にリストを提出せよ」
との文章をだした
これについて
「研修医の大量辞職事態が起きている状況で当該指針を再確認する意味で文書を送った」

一方、大韓医師協会の非常対策委員会関係者
「兵務庁が辞職届を出した兵役未了研修医らの海外への出国を事実上禁止する文書を送った。政府は研修医らを重大犯罪者と同一視している」

韓国のネットユーザー
「法律に沿った措置に何の問題が?旅行から必ず戻ってくる保証はないのだから、出国禁止が正解。重大犯罪者として扱っているのではなく、潜在的兵役拒否者と判断したものだ」「当然のことでは?兵役を終えていない成人の韓国人男性でしょ?他の一般人も同じ。自分たちだけ特別待遇しろと?」
「患者がどんどん死んで国民が苦しんでいるのに、辞職届を投げつけて海外旅行とは」
「他のことはともかく、手術はしてあげて。医者である前に1人の人間だよね?人情は忘れてはならない」
「海外に行きたいなら、医師免許を返納してから行くべきだ」


今日は~
モナンテス アミドロス/Monanthes amydros

去年の6月
なんか、アリエナイ花のつきかた
株の勢いは、そんなに無いのに・・・
2024/2/23
加筆

0 件のコメント:

コメントを投稿