2024年2月5日月曜日

国際社会の法の支配は破綻?

2023/1/26南アフリカの訴えを受け国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)のガザ危機をめぐる仮保全措置の命令が下された
ジェノサイド条約に基づいて、イスラエル政府にジェノサイド的行為を慎み、予防することを求めた
この命令は法的拘束力を持つ
ICJは、世界法廷(world court)とも呼ばれ、国際法の解釈に関しては他の機関の追随を許さない絶大な権威を持つ
そのICJが行った判断は世界各国の政府の行動に、将来にわたって影響を与え続ける
ただ法的拘束力のある決定を行ったからといって、ICJが自らの決定に諸国の政府を従わせる実力を行使することができるわけではない
しかし 法解釈から思想や世界観といった広い領域での道徳的影響力の浸透を通じて、ICJの判断は政治的な重みを持っている

イスラエルは黙ってはいない
間髪を入れず、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)職員が10/7のハマスのテロ攻撃に加担していた、という糾弾の声を上げた
UNRWAのガザの惨状を訴える声明はICJの命令文で何度も引用された
1949年以来パレスチナ人の生活を支え続けてきたUNRWAとイスラエル政府と関係は、もともと複雑なものだったが、今や全面的なイスラエル政府の敵意の対象に
まずアメリカがUNRWAへの資金提供の打ち切りを表明
さらに欧州の主要ドナー国が週末の間に、次々と資金提供の打ち切りを表明
日本も28日日曜の深夜に追随する声明を出した
全て週末の間の動きで強烈な外交攻勢が起こっていた?
ICJはジェノサイドを防止する義務を果たすべくイスラエル政府が人道援助の提供に努力しなければならないことを命令していた
これに反旗を翻すようにUNRWAの最大資金提供国であるアメリカに訴えかけて、資金提供停止の国際的流れを作るように働きかけた
もちろんハマスのテロ攻撃に加担した可能性のある者を捜査対象にするのは当然
しかしイスラエル政府の動きは刑事事件としての犯罪捜査よりも、UNRWAの資金提供国に資金提供を停止することを呼び掛けている
ジェノサイド条約に基づく義務の遂行を命令したICJに真っ向から挑戦してる
UNRWAは、パレスチナ難民の生活を支えていた特別な国連機関
UNRWAがなければ占領下のパレスチナ人は生きていけない
逆に国際難民条約による保護対象になる
周辺国はパレスチナ難民が訪れたら受け入れなければならない
イスラエルはエジプトにガザの人々を難民として受け入れさせるつもり?
ICJの判決に真っ向から挑戦し、事実上パレスチナの地に生きるパレスチナ人をパレスチナから追放するための方策?

UNRWAの職員数は3万人
ガザだけで1万3千人いるが、そのほとんどが地元のパレスチナ人
UNRWAは、占領地で存在しない現地政府の機能の肩代わりをしている
本当にテロ攻撃に加担した者がいたとしたら問題だが
3万人の職員の全てを統制するのが難しいから組織全体がテロリストの温床であるかのようにみなすのは?

・・・UNRWAが動けなくなるとパレスチナ難民は困窮する
餓死も見えてくる

イスラエルを支持する欧米諸国にとっては、イスラエルの敗北も地獄だろうが、国際世論を敵に回すイスラエル完全勝利のシナリオも、また別の地獄
はっきりしているのは欧米諸国主導の国際社会の法の支配のお題目は破綻を迎えている

1/26に発表された仮保全措置の決定は、全体で27ページの文書によって説明された
その結論は第86(最終)段落目で説明されている
そこではICJの命令が6項目にわたって示されている
https://www.icj-cij.org/case/192

第一に、イスラエル国が、ジェノサイド条約で禁止されている活動を防ぐためにあらゆる手段をとることを求める命令
具体的には
(A)(パレスチナ人民)集団の構成員を殺すこと
(B)当該集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること
(C)全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を故意に当該集団に対して課すること
(D)当該集団内における子どもの出生を防止することを意図した措置を課すること
(E)当該集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと
の予防を求めた

第二に、上述の第一の点で禁止された行為を自国の軍隊が犯さないようにすること
第三に、ジェノサイドの直接的・公的な教唆を、防いだり、処罰したりすること
第四に、ガザにいるパレスチナ人に緊急に求められている基本的サービスや人道援助の提供を可能にする直接的で効果的な措置をとること
第五に、ジェノサイド条約に抵触する行為と指摘されている行為の証拠の証拠の保存し、その破壊を防ぐための効果的な手段を導入すること
第六に、導入した措置の報告を一か月以内にICJに対して行うこと

2022年のロシアの全面侵攻によって世界は分断されたと言われることもあったが
ガザ危機によって誘発された諸国の分断は、より深刻
バイデン大統領は就任前から頻繁に民主主義諸国vs.権威主義諸国の二元論的な世界観を披露
民主主義諸国の退潮に警鐘を鳴らすととも、民主主義諸国の陣営でのアメリカの指導的立場の強化を図ってきた

この試みはガザ危機によって大きく揺らいでいる
ロシアは非難してもイスラエルは非難しない姿勢は、仮にアメリカ国内では当然のことだとしても世界の大部分の人々にとってはダブル・スタンダード(二重基準)
パレスチナと南アに共感を示す世界の大多数の諸国は、欧州列強による植民地化を経験している
また対テロ戦争によって治安状況が悪化した諸国も数多く存在する
イスラエルの軍事行動の停止を意味する停戦を求める国連総会決議でも、アジア・アフリカでは多数の諸国が賛成票を投じている
ガザの人々をシナイ半島に追いやり、そこでイスラエルを含まない世界各国が巨額の資金提供をして類例のない規模の難民キャンプを設置して養い続ける
そしてガザにイスラエル人が入植する、というイスラエル右派勢力が描くシナリオを、周辺国だけでなく世界の大多数の人々が受け入れない

アメリカや欧州の政府で働く公務員800人以上が、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区での戦いに対する自国政府の政策は深刻な国際法違に相当する恐れがあると警告する文書に署名

BBCが入手した、大西洋を超える声明、の文書に署名した公務員たちは、自分たちの政府が「今世紀最悪の壊滅的な人道上の破局」に加担する事態になりかねないものの、自分たちの意見は度外視されたと批判
文書には、アメリカと欧州連合(EU)の当局者のほか、イギリス、フランス、ドイツを含む欧州11カ国の公務員が署名している

アメリカ政府の国家安全保障政策分野で25年以上の経験を持つ当局者
自分たちの懸念を何度繰り返しても「捨て置かれる事態が続いている」
「あの地域と現場の力学を理解する人たちの声は、聞き入れられていない」
「これまでと本当に何が違うかというと、自分たちは問題を阻止できていないというのではなく、自分たちは積極的に問題に加担している。これは自分が記憶する限り、これまでと根本的に全く異なる状態だ」

文書は
イスラエルがガザ地区で展開する軍事行動には「何の限界もない」とイスラエル自ら示している
その行動の結果、「民間人の死は防げたはずが、何万人もの民間人が死亡している。(中略)援助物資の搬入を意図的に阻止することで、大勢の民間人を飢餓と緩慢な死の危機にさらしている」
「国際法の深刻な違反、戦争犯罪、そして民族浄化や大量虐殺にさえ、我々の政府の政策が加担しているリスクが高い」
自分たちの政府が現在
「実際には無条件に、何の説明責任も求めないまま」イスラエルを軍事的、政治的あるいは外交的に支え続けるのは
パレスチナ人の命を引き続き危険にさらすだけでなく、イスラム組織ハマスに拉致された人質の命をも危険にさらし、かつイスラエル自身の安全保障や地域の安定性をも、危険にさらしていると
「イスラエルの軍事作戦は、(アメリカへの同時多発攻撃)9/11以来積み上げられてきた、重要な対テロ知見をいっさい無視している(中略)作戦はハマス打倒というイスラエルの目標に貢献せず、むしろハマスやヒズボラやその他の敵対勢力の魅力を強化している」
署名した当局者たちは、専門家としての自分たちの懸念は政府内で表明してきたものの、「政治的およびイデオロギー的な理由から、覆されてきた」
イスラエルの軍事作戦はガザで前例のない生命・財産の破壊を引き起こしているが
ハマスの脅威を取り除く実現可能な戦略はないように見えるし、イスラエルの安全を長期的に保障するための政治的な解決策もないように見えると
その上で声明は
「イスラエルの作戦の後ろには、戦略的で、かつ正当性を弁護できる論拠があるかのように、国民に向けて主張し続けるのをやめる」よう、アメリカと欧州諸国の政府に呼びかけている


かつてアルジェリアとシリアでアメリカ大使を務め、現在は引退しているロバート・フォード氏
複数の政府で働き、自国政府の方針に反対する公務員たちがこれほどの規模でまとまって声を上げるのは、前例のないことだ
「過去40年にわたり外交政策を見てきた経験からしても、かつてないことだ」
フォード元大使は先例として、2003/3に始まったイラク戦争をめぐり
開戦の根拠として入手した情報に欠陥があるのではないかと、当時のアメリカ政府内に懸念が募っていたケースを挙げる
ただし当時と今回の違いは、今の政府の対応に批判的な当局者が沈黙を守らなかったことだ
「(当時のアメリカ政府内には)本当はそうではないと実態を知り、自分たちの解釈に都合よく機密情報を取捨選択して政策を決めている、戦後について何も計画していないと知っている人たちがいたが、誰もそれを公言しなかった。それが深刻な問題につながった」
「ガザ戦争の問題はあまりに深刻で、その余波はあまりに深刻なので、(今の各国政府内には)その懸念を公表せざるを得ないと強く思う当局者たちがいたのだ」



イスラエル側はこうした批判に反論を続けている
今回の声明を受けて在ロンドンのイスラエル大使館
自分たちは国際法に従っている
「イスラエルは引き続き、戦争犯罪だけでなく人道に対する罪を繰り返し、大量虐殺を続けるテロ組織に対して、行動をとり続ける」

アメリカ政府
「あまりに多くのパレスチナ人がガザで殺されている」
イスラエルは10/7の事態が「二度と起きない」ようにする権利があるともしている

2023/1/23アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はUNRWA職員に関する報告について「とても憂慮」しているとコメント
UNRWAが責任の追及と見直しのために調査することが「不可欠」
「ガザで支援を切実に必要としている男性、女性、子どもたちが実際に支援を受けるうえで、UNRWAは絶対に欠かせない役割を担っている」
ガザ住民支援においてUNRWAが担ってきた役割を果たせる存在は、短期的には誰もいないUNRWAが役割を果たし続けることが必要


・・・イスラエル
かつては、不完全ながらも回りにそれなりに気を使ってた?
今は・・・
原理主義の政権では・・・

今は日本は原理主義者が権力をとる可能性は低いけど・・・



今日は~
フクジュソウ/Adonis ramosa秩父紅
画は3月はじめ
ちょっと紅が濃い

もうちょっとでコレが見られる

PS2024/2/6
加筆

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