2022年3月20日日曜日

プーさんの支持基盤

 ロシアによるウクライナ侵攻がつづいている
しかし、短期間でゼレンスキー政権を打倒し、傀儡政権を樹立、ロシアの要求を受け入れさせるという当初の計画は挫折
戦いは長期化し、国際社会はウクライナ支持で一体化している
ロシアは完全に孤立し、プーチンは現代のヒトラ」(プトラー)と呼ばれている
これまでプーチンを支えてきた支持基盤も、いよいよボロボロ?

プーチンには、大きく三つの支持基盤がある
一つ目の基盤は、シロビキと呼ばれる軍、諜報、警察など
軍は、戦争を遂行し、勝利することで、プーチン人気を支えてきた
プーチンは、チェチェン戦争、ロシア‐ジョージア戦争、シリア内戦への介入、クリミア併合、ウクライナ内戦への介入、IS攻撃、カザフスタンの大規模デモ鎮圧
などで、ことごとく勝利
プーチンは、戦争をすることで、高い支持率を維持してきた

諜報、プーチンは元々KGBの諜報員だった
ソ連崩壊後は、KGBの後継機関FSBの長官までのぼりつめた
諜報機関はプーチンの手足となって働き、反プーチン派を容赦なくつぶしてきた

警察は、ロシアで時々起こる大規模デモ(たとえば今なら反戦デモ)を、力で鎮圧

二つ目の基盤は新興財閥
そしてその新興財閥には、譜代新興財閥と外様新興財閥の2つが
譜代
プーチンが大統領になる前から、彼に従っている新興財閥
彼らは、東ドイツでプーチンがスパイ活動をしていた時期
あるいはサンクトペテルブルグの副市長だった時代に彼と知り合った
代表的な人物は国営石油会社のCEOセーチンと国営ガス会社ガスプロムのCEOミレル

外様新興財閥
これはプーチンが大統領になった後に忠誠を誓った新興財閥
プーチンが大統領になる前の90年代、ロシアの政治経済は新興財閥に支配されてい
当時の代表的新興財閥は
クレムリン・ゴッドファーザーと呼ばれたベレゾフスキー
ロシアのメディア王グシンスキー
ロシアの石油王ホドルコフスキーなど
3人ともユダヤ系という共通点がある
この3人は、2000年から03年にかけて、プーチンに挑戦、敗北
そしてベレゾフスキーは英国に、グシンスキーはイスラエルに逃げ
石油最大手ユコスのCEOだったホドルコフスキーは2003年、脱税などの容疑で逮捕され、シベリア送りに
(彼は2013年に釈放された後、英国に逃れ今も熱心に反プーチン活動を行っている)
新興財閥の超大物3人が敗れ、他の新興財閥はプーチンに勝てないことを悟った
それで彼らはプーチンに恭順を誓った

三つ目の支持基盤は、メディアと洗脳された国民
プーチンは2000年代、テレビを完全支配することに成功
ロシアの3大テレビ局はロシア1、1カナル、NTV
どの局でもプーチン批判はまったく聞かれない
それは他のテレビ局でも同じ
プーチンは、テレビを通して、国民を自由自在に洗脳しつづけている
だからプーチン政権は盤石に見えたのだが

シロビキの忠誠が揺らいでいる
軍については、以前全ロシア将校協会が1/31
「ウクライナ侵攻計画中止」と「プーチン辞任」を求める「公開書簡」を発表
つまり、プーチンの支持基盤であるはずの軍将校たちが、この戦争に反対し
これについてフェイクだと主張する人もいるが
公開書簡をまとめたイヴァショフ退役上級大将自身が、YouTubeでその意図を語っている
参考)Леонид Ивашов и Общероссийское офицерское собрание “Путин должен уйти в отставку”
彼は書簡の中で、ウクライナ侵攻の結果
「ロシアは間違いなく平和と国際安全保障を脅かす国のカテゴリーに分類され、最も厳しい制裁の対象となり、国際社会で孤立し、おそらく独立国家の地位を奪われるだろう」

3/14時事通信
〈 ウクライナ侵攻後、ロシアのプーチン大統領が在籍した旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、連邦保安局(FSB)内部で異変が生じているもようだ。〉
〈 プーチン氏にウクライナ情勢を報告する立場にあったFSB幹部が自宅軟禁されたとの見方が浮上。事実なら、戦況が思うように進まない「誤算」の責任を取らされた可能性が高い。「侵攻から2週間。プーチン氏は第5局に対する弾圧を始めた」。ロシア独立系メディアは12日、FSBに情報筋を持つ著名記者2人の話を基に伝えた。〉

〈 独立系メディアは「第5局は侵攻に先立ち、プーチン氏にウクライナの政治状況を報告する任務にあった。第5局はリーダー(プーチン氏)を怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告したもようだ」と分析している。〉
自宅軟禁されたといわれているのは、FSB第5局セルゲイ・ビセーダ局長
彼は、「全ウクライナが、解放者としてのプーチンを待ち望んでいる」
などと報告していた
プーチンは、2~3日でゼレンスキー政権を打倒できると確信
ウクライナ侵攻を決断したといわれ
この判断は、第5局の間違った情報を基に下された?

新興財閥は、ウクライナ侵攻で甚大な被害をこうむっている
ヨーロッパ・アメリカでは、新興財閥の銀行口座、豪邸、高級マンション、プライベートジェット、スーパーヨットなどを差し押さえる動きが広がっている
そんな中でも、譜代新興財閥のプーチン支持は揺るいでいない
しかし、外様新興財閥は公然と反旗を翻すように
ウクライナ侵攻に反対している新興財閥
ルサルの元CEOデリパスカ
彼は2008年時点で世界10位、ロシア1位の大富豪だった(2020年時点、ロシアで41位まで資産を減らしている)
ロシア石油2位ルコイルのアレクペロフ社長
彼は2020年時点で、ロシア5位の富豪
ロシア4位の銀行アルファバンクなどを傘下におさめるアルファグループの創業者フリードマン
彼は2020年、ロシアで8位の富豪だった
2020年ロシア1位の富豪だったポターニン(インターロスグループ会長)
ロシア政府の政策を厳しく批判している
具体的には、政府が
「ロシアからの撤退を決めた外国企業の資産を没収すると決めたこと」
に反対した
〈 ロシアで最も裕福な実業家ウラジーミル・ポターニン氏は10日、大統領府がウクライナ侵攻を受けロシア事業撤退を表明した企業の資産差し押さえを示唆したことに触れ、国を100年あまり逆戻りさせる措置だと警鐘を鳴らした。〉
〈 ポターニン氏は金属大手ノリリスク・ニッケルの社長で、同社の筆頭株主を務める。欧米企業や投資家に対して門戸を閉ざせば、1917年の革命以前の混乱した時代に逆戻りする恐れがあるとして、資産接収に関しては極めて慎重に対応するようロシア政府に促した。
ポターニン氏はテレグラムに投稿したメッセージで、資産接収に動けば「今後数十年にわたって世界の投資家からロシアに不信感が向けられる結果になる」と指摘した。〉
新興財閥にとってプーチンは自分の富を守ってくれる存在だった
ところが、ウクライナ侵攻後のプーチンは、資産を没収される原因を作った迷惑な存在に
彼らはウクライナ侵攻やロシア政府の政策に反対することで反逆者?
果たして外様新興財閥は、プーチンに黙ってつぶされる?
彼らの立場に立ってみれば、プーチン打倒を目指しても?

・・・いや逃げるだろ

3番目の支持基盤メディア
3/14、国営テレビ 1カナルのニュース番組中、同局の女性スタッフ が
反戦プラカードをもって現れた
そこには、「戦争反対」「プロパガンダを信じないで」「あなたは騙されている」
と書かれていた
女性はマリーナ・オヴシャンニコヴァ
彼女は、YouTubeに投稿した動画の中で
「今ウクライナで起こっていることは犯罪だ。ロシアは侵略国だ。責任はプーチン一人だけにある」
「1カナルで働き、クレムリンのプロパガンダを行ってきたことは、とても恥ずかしい」
「テレビでウソをつくことを許してきたことが恥ずかしい」
「ロシア人をゾンビ化することを許してきたことが恥ずかしい」

同じように考えているメディア関係者は、少なくない
ウクライナ侵攻後、キャスターや記者が続々とテレビ局を去っている
ロシアの民放最大手NTVで、ニュース番組シヴォードニャのキャスターだったリリヤ・ギリデェーヴァは辞職
即座にロシアから脱出
国営1カナルでは、在ニューヨーク、在パリ駐在員を務めたジャンナ・アガラーコヴァが辞職

仮にロシアがウクライナ戦争に勝利すれば、しばらくはプーチン政権がつづく
だが世界中からの地獄の制裁は解除されず
ロシア経済は沈みつづけていく

3/16プーチン大統領、テレビ演説で
豊富な資産を背景に西洋化された暮らしをするオリガルヒを非難する発言
これを受けて、翌日には複数のプライベートジェットがロシアから国外に向けて飛び立った

プーチンは演説で
「(アメリカの)マイアミやフランスのリヴィエラに別荘を持つ人々、またはオイスターやフォアグラや『ジェンダーの自由』がなければ生きていけない人々」
「問題は彼らの精神がここロシアに、ロシア人と共にあるのではなく、あちら側にあることだ」
西側はロシア内の裏切り者を利用してロシア社会を分断しようとしており
「ロシアの破壊を狙っている」
その試みに対抗するため、国民に自浄を呼びかけた

翌17日、アナリストのオリバー・アレクサンダー
ロシアから複数のプライベートジェットが離陸したことを発見
これらの追跡データをツイッター上に公開
これまでにもアレクサンダーは
「みんなモスクワからウラル山脈に遠足に出かけているようだ」
「飛行機に、実際には誰が搭乗しているかは分からないが」
「モスクワから北ウラル山脈やシベリアに向かう、ロシア連邦上空における活動が激しくなっている」
こうした動きについて、一部の人は核攻撃からの避難?
だがオリガルヒたちは彼らが忠誠を誓うプーチンから報」されるのを恐れて安全な場所に逃げ出していると?

ただオリガルヒたちにとって、自身の安全や資産を保証してくれる場所は地球上からなくなりつつある
西側諸国はもちろん、最近ではイスラエルもプライベートジェットやヨットによる入国を監視・制限していると宣言
安全な逃避先ではなくなってしまった

イギリス プロサッカーチーム チェルシーFCのオーナーであるロマン・アブラモビッチ
イギリスとEUの両方から制裁対象とされ、資産を凍結された
彼は、一度はプライベートジェットでイスラエルに渡ったものの、すぐにモスクワに引き返している

・・・目まぐるしい
お腹イッパイ

0 件のコメント:

コメントを投稿