2020年11月9日月曜日

かの国と平蔵さん

 竹中平蔵氏、中国で人気

2020/5/27国家戦略特区法の改正案、いわゆるスーパーシティ法案が国会で成立

このスーパーシティ構想の背景としてAIやビッグデータを活用して社会のあり方を根本から変えるような都市設計を目指す動き、すなわちスマートシティの建設が、世界各地で本格化していることが指摘されている。(1)生活を支える複数のサービスが導入されている(2)複数のサービスがデータ連携を通じて相乗効果を発揮している(3)その成果が住民に評価されるような事業になっている――の3条件を満たす世界に類を見ない都市づくりを目指すのが日本型スーパーシティ構想

そのようなスマートシティの代表的な例として、内閣府の資料にも挙がっているのが中国浙江省杭州市のシティ・ブレイン(城市大脳)。シティ・ブレインは、市街を走行中の自動車の情報をライブカメラを用いて収集、そのビッグデータをAIで分析してドライバーにフィードバックすることで都市の混雑を解消し交通事故の減少だけでなく、物流の高速化や市政サービスの簡便性の向上なども目的。

アリババ傘下のアリババ・クラウド社は、このシティ・ブレインが目指すものについて、ビッグデータそのものを都市インフラと位置付けることによってAIによるデータ活用が交通渋滞の解消、エネルギー損失の縮小、防犯体制の強化につながると。「ビッグデータの内部情報には一切触れずにアルゴリズム解析をし、要求された(あるいは、されているであろう)情報を自動的にアウトプットする」だけ。

・・・は?なにタワゴトを

このようなスマートシティの導入に当たっては、政府による個人情報の大規模な収集が不可欠になることから、プライバシーが十分に保護されない監視社会化を招くのではないかという批判も。特に杭州市のような中国のスマートシティには強権的な国家による監視社会に対する懸念がどうしてもつきまとう。

・・・もう、してるし

この法案の参議院の審議過程で、日本共産党の大門実紀史議員「日本を中国のような監視社会に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性がある反対の最大の理由は、日本を中国のような監視社会に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があるからです」「中国では政府・大企業が膨大なデータを分析し、国民への監視や統治に活用して、ウイグル族弾圧や民主化を求める活動家の拘束にも監視カメラや顔認証技術が用いられてきました。政府がスーパーシティ構想のお手本としてきた杭州市は、街全体のIT化が世界で一番進んでいますが、裏を返せば、街中に監視カメラが数千台もあるなど監視社会の最先端です」

これまで政府が進めようとする規制緩和や都市開発の構想に対して、野党の政治家や政府に批判的なメディアがアメリカの真似をするな、と批判を行うという現象はしばしば見られた。しかし、このスーパーシティ構想のように自民党政権が進めようとするプロジェクトに対し、左派政党の政治家が中国の真似をするなという理由で強く反対する、という現象はこれまで見られなかった。

・・・自由民主党が中国を目指す

スーパーシティ構想の実現に向けた有識者懇談会の座長は現パソナ会長の竹中平蔵さん

・・・またかよ

平蔵さん、聖域なき構造改革の旗振り役として小泉政権経済に経済財政政策担当大臣、IT担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣を歴任。第二次安部内閣の誕生に当たっては、日本経済再生本部の産業競争力会議の民間議員ならびに、国家戦略特区諮問会議の議員。スーパーシティ構想はその国家戦略特区の目玉として構想された。

小泉政権で閣僚に任命されたころから、平蔵さんは中国の改革派知識人やメディアから常に高い注目を集めてきた。中国の代表的なIT企業、百度(パイドゥ)が運営する百度百科(中国版ウィキペディア)の竹中平蔵の項目では、彼が小泉政権時代に行ってきた様々な改革を中心に詳しい人物紹介がなされており、しかもその記述のほとんどは彼の経済改革の手腕を高く評価している。日本の著名な経済学者で百度百科で紹介されているのは故・宇沢弘文氏、故・青木昌彦氏、野口悠紀雄氏など数名しかおらず、いずれも竹中氏ほど詳しい記述はない。さらに彼が2007年に北京大学で行った講演録とその後の学生との対話が書籍化された『竹中平藏:解読日本経済与改革』(新華出版社、2010年)のほか、すでに多くの著作が中国語に翻訳されているほか、有力なメディアや、中国で開催された国際的なシンポジウムにも数多く登場。

中国メディアが竹中氏を形容する際には日本経済を最もよく知る人物、改革の総指揮者、経済改革の皇帝、日本の王安石(中国宋代に大胆な改革を成功させた官僚)、中国で最も人気の高い日本の経済学者etc

中国での竹中氏の高評価のキーパーソンといえるのが財新メディアグループの社長である胡舒立(こ・じょりつ)氏。胡氏は1998年に独立系の経済誌『財経』を創刊、経済問題を主としながらも地方の汚職事件などにおける大胆な調査報道で中国の真実を描き出すメディアとして評価を高めていった。そして2003年のSARS流行の際に政府の対応を批判する報道で国際的にも注目をあびた。その後『財経』誌への当局の規制が強まる中で2009年に同誌とは袂を分かち、財新メディアを創刊、同社が発行する『財新週刊』は中国経済や社会に関する鋭い分析で高い評価。特に2020年のコロナ禍の際には、昨年末に武漢市における新型肺炎の流行にいち早く警鐘を鳴らし、自らも新型肺炎で命を落とした李文亮医師の独占インタビューを掲載、都市封鎖の状況及び経済的な影響に関する精力的な調査報道を行った。報道の自由が大きく制限された中国社会で胡氏は、政府ににらまれてつぶされてしまうような事態を独特の嗅覚で慎重に避けながら、できるだけ事実に迫るような質の高い報道を行ってきた。中国社会ができるだけリベラルな方向に向かうよう、ソフトな形で世論の喚起を図る、いわば体制内にとどまりながら中国社会の改革を権力者の耳にも入る形で行いながら社会を変えようとするのが胡氏のスタンス?

胡氏は『財経』誌の編集主幹だった時から竹中氏、および彼が行おうとする経済改革について注目し、記事としてたびたび取り上げ、二度にわたるロングインタビューを行っている。メルクマールとなったのが『財経』2006年1月23日号の日本の改革を解読するという日本経済の特集記事。この特集は、竹中氏以外にも田中直毅氏、加藤寛氏といった経済評論家、および何人もの財界人に対してインタビューを実施し、さらに胡氏らによる詳細な解説が加えられるという、非常にボリュームのある特集。この際の竹中氏に対するインタビューは、胡氏の後日の記述によると、2005年の暮れに彼女が日本を訪問した際に、彼女のたっての希望で行われたものだという。小泉内閣の時期、首相の靖国神社参拝などの問題もあり、中国各地で大規模な反日デモが起きるなど、日中関係は険悪なムード。また、日本人の対中感情も大きく悪化。しかしその一方で小泉内閣が進める構造改革路線への中国の改革派メディアや経済学者の関心はかなり高かった。中でも改革の先導役としての竹中平蔵氏に注目が集まっていた。

インタビューのトピックは、不良債権処理から郵政事業民営化まで多岐にわてってる、特に1997年のアジア金融危機以降の日本経済に関する見解を問われた際の発言

「(この10年)日本経済の動きは非常に緩慢で、安定した停滞を経験してきました。 これはある意味で非常に危険なことです。 日本経済が(アジアの)他の国のような危機に陥らなかったことは、幸いでもあり、不幸でもあります。(中略)もし日本が東南アジアのような危機に見舞われていたら、多くの政治家や国民は改革の重要性に気づいていたかもしれない。 しかし、日本にはそのような危機はなく、1990年代における「失われた10年」においてさえ、成長率は非常に低いものでしたが、とにかく日本経済は成長を続けていた。すなわち、危機が存在しないところに、改革への圧力は存在しないということです。」

胡氏も、経済学者たちは、日本の経済衰退は周期的なものではなく、構造的なものであると明言している。構造改革が非常に困難であることが、日本経済の回復を遅らせてきた。(中略)日本は産業界・金融界・政府が一体化した強大な社会的利益集団を形成してきた。また従来からの終身雇用制度が、日本国民の伝統的な体制への依存をもたらしてきた。このため、『小さな政府』を実現し、より一層の市場化を推進することが国家の長期的な経済発展にとって有益であるにもかかわらず、これまでは誰も改革のコストをだれも分担しようとせず、実行に移せなかった。

注意しなければならないのは、このような胡氏らによる竹中氏への高い評価は、あくまで中国国内の状況を念頭に置いたものということ。上記のように胡氏が発言するとき、日本経済自体に対する興味もさることながら、やはり政府による市場への非効率な介入が横行する中国においても市場志向的な小さな政府を目指す改革の断行が必要だ、という中国国内の改革派としての主張が見え隠れする。胡氏のような中国国内の改革派はあくまでも、市場から退場しようとしない国家をメインのターゲットにしている。それに対して竹中氏がいう構造改革は、国家の役割の縮小を主張するだけではなく、それ以上に終身雇用制度や、特定郵便局制度に代表される、日本社会に残る様々な古い慣習や、中間団体の一掃をねらったものだ、という重要な違いがある。

第一次安倍政権以降、竹中氏は政治の世界からは離れるが、その後も著名な経済学者として中国のメディアにはしばしば登場する。トピックも人民元の自由化問題であったり、財政再建問題であったりさまざまだが、竹中氏の発言が小さい政府を志向する改革派の経済学者の意見として取り上げられる。

たとえば第二次安倍内閣における財政問題に関するインタビューでは、日本の法人税の高さが海外との競争力を低くしていることに言及し、財政再建は必要だが、そのためには増税よりも政府支出の抑制が重要と。周知のように、2012年に成立した第二次安部政権で竹中氏は産業競争力会議の民間議員、国家戦略特区諮問会議の議員として、アベノミクスの”第3の矢”の旗振り役の一人として政治的なプレゼンスも増していく。

・・・アベノミクスの”第3の矢”実態がナニも無かった

それに伴い、再び中国のメディアでの登場も増えていく。その中で、竹中氏と中国との関係にも微妙な変化がうかがえるようになってくる。中国メディアが竹中氏を取り上げるときには、依然として中国の改革を進めていくうえでのヒントを彼の言説に探すものが多いことには変わりはないのだが、一方で竹中氏の経済思想や改革の方向性が、中国で現に行われていることとシンクロするような現象が目立つようになってくる。その際の重要なキーワードが2015年より中国政府が、中国経済の持続的な成長を模索する中で提示された供給サイドの改革だろう。過剰生産能力の削減、過剰在庫の削減、デレバレッジ(企業債務の削減)、企業のコストダウン、脆弱部分の補強という一連の構造改革政策を通じて、経済の効率性を向上させ、これまでの資源投入型の成長に代わる持続的な経済成長を目指す、というもの。

上海交通大学副教授の黄少卿(こう・しょうけい)氏は、習近平政権下の中国が供給サイドの改革を進めるにあたっては、国有企業を中心としたいわゆるゾンビ企業の退出が必要だと述べたうえで、その際に財政投融資にメスを入れる、竹中氏が主導した小泉政権下の改革が参考になるのではないか、と。

また、それより少し前のことになるが、2010年に竹中氏が中国を訪問した際に胡氏と行った対談で、彼が政府と市場との関係について述べた次のような発言も興味深い(胡、2010)。すなわち、政府支出には救済型と根本治療型があり、これまでの日本の財政支出は救済型であった。その代表的なものが失業者に対する給付金である。しかしこのような救済型の支出を続けていく限り、財政収支が悪化するのは避けられない。したがって経済成長自体を加速させて自然に財政収入が増加するようにする根本治療型の財政支出を行うべきである。この点、中国は日本を反面教師にすべきだ、と。なぜこの発言が注目すべきなのか。全世界がコロナ禍に見舞われた2020年、日本を含めた多くの主要国が、企業や個人への救済型の財政支出を積極的に行い財政赤字を膨らませている一方で、武漢市での感染拡大を徹底した都市封鎖で抑え込んだ中国は、その後の経済対策において、竹中氏のいう根本治療型の政府支出を優先する政策によって、いち早くコロナ・ショックからの回復を実現しようとしているから。武漢市・湖北省をはじめとして、2020年初頭に中国全土を襲ったコロナ禍は、都市封鎖等を通じて人・モノの流れを停止させ、中国ならびに世界経済に大きな影響を与えた。

コロナ禍がもたらす需要・供給両面のショックに対して、中国政府がまず打った手は資金繰りに苦しむ企業への潤沢な流動性の供給。2/1には、中国人民銀行や財政部など経済政策を管轄する5つの部署が連名で新型肺炎流行の影響を最小限にするために金融政策を強化する通知を発表した。この通知を受けて中国人民銀行は直ちに、湖北省など肺炎の流行が深刻な地域の企業、医療品や生活物資を生産する産業、さらには都市封鎖の影響が大きい小売り、宿泊、飲食などの産業、小型零細企業などを対象として、人民銀行が定める貸出市場報告金利(ローンプライムレート、LPR)の水準を大幅に下回る低金利融資を実施。さらに政府は、期限付きの社会保障費や住宅積立金の免除、さらに特にコロナ禍の影響が大きい地域などの中小企業を対象とした減税などの財政出動を次々と行った。そのほか、感染症防止のための財政出動、人民銀行再貸出に対する金利補填など、これまで行われたトータルの財政支出規模はGDPの1.2%とされる。ただ、この財政支出のレベルは他の主要国の対応と比べると、極めて抑制されたもの。2020/3以降、全世界への感染の広がりを受けて日本や米国も含め世界の主要国は相次いで市民の生活を支える現金給付や休業を余儀なくされた企業や店舗への補償をこれまでにない規模で行ってきた。一方で、中国政府は、そういった財政支出による市民や企業への直接補償をほとんど行っていない。もちろん、さらなる財政出動の必要性は中国政府も認めている。例年よりも大幅に日程を遅らせて5/22に全国人民代表大会が開幕した。5/28 に報告された2020年の国家予算案では、コロナ禍に対応するためのさらなる財政支出拡大のために地方特別債の発行枠を、昨年(2.15兆元)に比べて1兆6000 億元増やして3兆7500億元と大きく増加させることが明記された。さらに、感染防止対策の費用に充てるための1兆元規模の特別国債を発行することも盛り込まれるなど、財政赤字は対GDP比の3.6%以上と、これまで事実上の上限と考えられていた3%を大きく上回り財政赤字の額は2019年に比べ1兆元増加することが見込まれている。地方特別債の発行によって調達される資金は5Gに代表される次世代情報ネットワークなど、いわゆる新型インフラの整備、新型都市化の建設の推進、都市部の古い住宅地の改築、交通・水利などにかかわる重要プロジェクトの建設などのような用途に用いられることが見込まれている(中国投資銀行部中国調査室、2020)。中でも、景気刺激策の目玉になると考えられているのが、5Gなど高速通信網の整備、さらにはデータセンターやAI、スマートファクトリーなどのイノベーションが著しい分野を中心とした、いわゆる新インフラ建設(新基建)への投資である。そこには、リーマン・ショックの際の4兆元規模の景気対策が、特に地方政府によるなりふり構わないインフラ建設と不動産バブルを招いたことの反省から、あくまでも供給サイドの効率性を重視し、成長部門に重点的に財政資金を投入しようという姿勢がみられる。

以上のようなコロナ禍に対する中国政府の経済政策の特徴は、1.個人の所得補償よりも企業への低金利融資を重視する、2.供給面のショックが大きい局面では総需要を刺激する政策を控える、3.財政出動による景気刺激策では効率性に配慮したインフラ投資を重視する、などの点。これは資源の効率性を重視し、需要面よりも供給面のショックへの対応を優先させる、経済学の主流派の考え方に沿った対応だといえる。その結果、6月の工業付加価値は対前年比4.8%の増加を記録するなど、文字通りのV字回復を遂げた。

たとえば、2020年3月にかつて竹中平蔵氏が理事長を務めたシンクタンク、東京財団研究所が発表した新型コロナウイルス対策に関する緊急提言でも、感染拡大が懸念され、供給面のショックが大きい局面と、感染が終息した後の局面を分けたうえで、個人への現金給付などの総需要刺激策は前者の局面では有効ではなく、後者の局面において、しかも生産性の向上が見込まれる分野にターゲットを絞って行うべきことを主張。しかし、上記のような中国の対策は、資源配分の効率性を重視するあまり、失業率が大きく上昇する中、零細な事業者や不安定な雇用環境に置かれている労働者への救済が不十分になっている側面がある。生産が回復するなかでも、サービス産業などでは、むしろ失業や賃金カットなどの需要ショックが生じていた。2020年2月の都市調査失業率の数字は6.2%と統計が公表されるようになってから最高の数値を記録したが、現実の失業をめぐる状況はこの数字をはるかに超える深刻なものだという指摘が相次いで行われている。民間エコノミストらの推計によると、3月期の都市における失業者数は7000万~8000万人、失業率にすると約20%に達していた。また、その70%以上は最もセーフティネットが脆弱な農民工であるという。サービス業を中心に需要ショックに見舞われた産業、特に零細な中小企業は政府からの援助を全く受けられない中で高い技能を持たない周辺的な労働者の雇用を減らすことで危機をしのいでいる。

中国の労働問題に詳しい石井知章氏「感染拡大の影響が比較的大きな飲食、ホテル、娯楽、卸売り、小売りなどの業界では、すでに大規模な人員削減が行なわれ」 「違法な労働契約の解除や労働契約の解除の条件と手順に合致しないなどの事態に至って」おり、結果として労使間の紛争も頻発していると指摘。ただ、このようにコロナの影響による深刻な雇用問題を抱えながら今のところ中国社会はそれほど顕著な社会の不安定化に見舞われてはいない。その背景には、もちろん政府による抑圧により問題が顕在化しないという可能性もあるが、それだけではない。中国社会における労働市場の流動性の著しい高さが、コロナ禍による失業問題の深刻さを覆い隠している?中国における労働市場の流動性の高さを象徴するのが従業員シェアリング。上述の石井氏によれば、コロナ化による労働市場の需給の矛盾が広がる中、業務の爆発的拡大によって労働力不足に悩む企業の問題を解決すべく従業員シェアリングモデルが生み出され、異業種間で直面する労働力の需給ギャップを一時的に解決する有効な手立てとなった。

・・・出向?

これは製造業やIT系の大企業が、一時休業している飲食店、ホテル、大型スーパーなどの従業員を一時的に雇用するものであり、財政による休業補償が得られない中、労働者の生活を一定期間支える上で効果を上げた。一方で、一人の労働者が複数の雇用者と契約することで労使間の矛盾がさらに複雑な形で顕在化しつつある。

このような労働市場の流動性の高さが失業問題がもたらす社会不安を和らげるカギであることは中国の指導者層にもよく理解されている。5月には李克強首相が山東省煙台を訪れた際に露天商のたくましさを称賛し、露店経済すなわちインフォーマル・セクターが失われた雇用を吸収することに期待する発言を行った。ここ数年のシェアリングエコノミーの普及に伴うギグ・エコノミー、すなわちインターネット・プラットフォームを通じた短期的な雇用・労働形態の広がりも、コロナ禍の需要ショックに伴う失業者の増大のショックを緩和するのに寄与したと考えられる。

・・・一時は露天商排除に血道を・・・

このような労働市場のさらなる流動化の促進が、単にコロナ禍による一時的な失業問題の解決だけではなく供給サイドの改革を掲げる今後の中国経済の持続的な経済成長のために要請されていることは、2020 /3/30に中国共産党が発表した”生産要素市場のより完全な配置体制とメカニズムの構築に関する意見”土地・労働・資本・技術・データといった5大生産要素について、(1)市場メカニズムに従い、効率性の高い配置を実現する、(2)要素のスムーズな移動を阻害する制度的要因を撤廃し、生産要素市場の構築と発展を促進する、という方向性を強調。

”過剰生産能力の削減を伴う供給側の改革”の実施は、予想される多くの企業倒産によってあふれ出る失業者を、より効率よく吸収するための労働市場の流動化が必要、ということ。コロナ禍における従業員のシェアリングやギグ・エコノミーによる雇用吸収はそのための予行演習。中国政府の労働問題への対応は雇用の流動化を重視するという意味で新自由主義的なもので、竹中さんが日本経済が真っ先に取り組むべき課題として雇用の流動化を挙げていることともシンクロしている。

竹中氏は、小泉政権期から日本における雇用の流動化の必要性を語っており、自らも2003年の労働者派遣法成立など、それを促進する政策の実現に関与してきた。近年では外国人労働者の受け入れの緩和にシフトしつつある。竹中氏は日本経済が直面する問題として労働力不足を挙げ、労働市場を対外に開放して移民を受け入れることが今後の成長に必要だと語っている。中国メディアの取材に答える際には、きわめて率直に人材派遣会社パソナグループの経営者としての立場を前面に出した発言を行っている。「一般的に、人々は短期雇用を不安定なものだと考えています。しかし興味深いことに、システムに登録している人たちのうち、そう考えているのは全体の4%に過ぎません。70~80%の人々は自ら希望して短期の雇用形態を選んでいるのです。なぜなら、長期間雇用が固定されていなければ、引っ越しや旅行もできますし、子供の面倒も見ることができるからです。人々が短期雇用に対して抱いている印象や偏見は、その多くがマスメディアによる歪んだ報道によって作られたものです。」

・・・へ?安定しない雇用と収入、これで子供を生めと・・・

このような雇用の流動化を究極まで進めたものが、配車サービスの運転手もしくはウーバーイーツのようなデリバリーサービスの配達員といった、プラットフォームに登録しておいて空き時間を使って労働するようなギグ・エコノミー。このギグ・エコノミーの世界的な先進地域の一つになっているのが中国。労働者がプラットフォーム企業を通じてエントリーし、企業などと直接契約を結ぶわけではないギグ・エコノミーは労使間の雇用契約を骨抜きにし労災や超過労働のリスクを高めることが指摘されている。しかし、中国社会においてはギグ・エコノミーの広がりは基本的に肯定的にとらえられている。その背景にあるのは第一にそれが高収入をもたらす、という点。大卒のホワイトカラー層と非熟練労働者の給与にはもともと大きな格差があった中国において、場合によっては一般的な工場労働の二倍以上の収入をもたらすギグ・エコノミーの隆盛は非熟練労働者に新たな仕事の選択肢を与えて生活水準を引き上げる効果を持ってきた。もともと中国社会は短期雇用が労働契約に占める比重が高く、そこに請負、すなわち企業と労働者の間に仲介者が入ることも多かったということがあげられる。公務員や国有企業をのぞけば中国の労働者は転職が多、雇用の流動性が高い。農民工とよばれる出稼ぎ労働者も、春節の休みに地元に戻ったときに各地で働く仲間たちと情報交換し、より条件の良さそうな職場を求めて新たな土地に移動する。さらに、李克強首相が称賛した屋台や露店商などの自営業、街の便利屋などの零細業者はさらに流動性が高いが、このようなインフォーマル・セクターの分厚さも、社会全体の雇用の流動性を高めている。このように中国における労働の流動性の高さが、コロナ化による労働市場へのショックが社会問題として顕在化しないためのバッファーの役割を果たしている。ことはすでに見た通り。日本がコロナのようなパンデミックに強い社会になるためには、中国なみに雇用の流動化を進めることが必要だ、と考えるのは?

・・・共産党の”労働者独裁”はドコに?・・・より階層化が進む・・・主権者である中国共産党のための人民

それを日本で目指す平蔵さん、その内、かの国で国賓待遇?

今日は~


アスパラガス

砕石んトコに生えてきたコ

裏の畑?に移植・・・喰えるようになる?



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