2020年10月7日水曜日

マン マシーン

 人間の脳の適応力は非常に高い。脳は心拍数を制御したり、悪夢を見たり、短いメロディから数十年前に聴いた歌を思い出したり、全く新しい言語を習得したりすることもできる。こうしたことができるのは脳が可塑性を持つから。脳の可塑性とは、新しいスキルを習得したり、環境の変化に順応したりするときに使う伝達経路を再配線できることを指す。神経可塑性によって、脳は環境あるいは身体そのものの変化に対応している。

ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を介したコンピューターとの接続

は、これにより世界や自分の身体に対する見方、さらには世界に変化をもたらす速度さえ変わる可能性がある。ほとんどの侵襲的(つまり、頭蓋骨の内部に侵入する)BCIインターフェースは脳の表面に電極を置き、細胞組織を通過する電気信号を拾い上げる。ただ脳はシリコンチップを接続するようにはできていない。脳は電極の周囲に線維性組織と呼ばれる小さな瘢痕を生成する。脳が瘢痕を生成する反応はヒトが心配しなければならないような大きな障害を脳にもたらすことはないと考えられている・・・ほんと?BCIを使うことでもたらされる脳の瘢痕以外の変化は、より広範で魅力的に・・・

脳は一般に変化への順応性があり新しい道具や新しい環境に順応する。例えば、鉛筆の持ち方を学ぶ時、脳は自分自身に対する考えと鉛筆によってできるようになる新しいスキル(字を書いたり絵を描いたりすること)を習得するためにできることの範囲を広げる。運転でも、スマートフォンを使うことでも、針仕事でも、ガスバーナーを使うことでも同じ。新しいスキルを習得するごとに何ができるかという考えが拡大する。

バテル記念研究所のテクニカルフェロー、Justin Sanchez氏

実際に手に道具を持つこととBCI(これも基本的には道具の1つではあるが)を頭に埋め込むことの違いは、BCIは外界と関わる役割を担う神経にダイレクトにつながることだと「したがって、BCIが直接接続した神経の可能性は(手に道具を持つ場合よりも)かなり高い。(中略)BCIを使うと脳の可塑性が生じ、その可塑性は人によって様々な広い方法で変化する可能性がある」

2019年に発表された論文によると、非侵襲的BCI(頭の中に埋め込むのではなく、頭の表面に装着するセンサーで脳信号を読み取るBCI)を短時間使うだけでも、脳の可塑性が誘導されるという。この研究では非侵襲的BCIを使った人に特定の動作について想像するよう求めたところ1時間後には変化が見られた。この方法で脳を再配線する機能は、例えば脳卒中や脊髄損傷などで神経系に損傷のある人々にとって特に役立ちそう。

可塑性はBCIにとって特に重要だ。研究者たちは、このシステムで脳や脊髄に損傷のある人が手足の麻痺や触覚喪失を克服できるようにしたいと考えている。神経系を地域公共交通網に例えると、脳卒中は大渋滞のようなもので何も出入りできなくなる。BCIは脳卒中を起こした人が、この大渋滞を回避する別ルートを見つけるのに役立つ。そうすることで、神経が伝達すべき情報は本来つながるはずだったトコに届く。

ウィスコンシン大学マディソン校で神経インターフェース技術を研究する生体医工学教授、Justin Williams氏

「脳卒中からの回復にこの技術を使える。既に存在はしていたがそれまで使ったことのなかった別の接続ルートを見つけることができる。BCIの支援で、脳卒中のリハビリの黄金律とみなされている試行錯誤よりはるかに早く、新しい接続ルートを見つけられる」

この再配線機能は身体の各部分が脳とやり取りする方法にも影響を与える可能性がある。将来的には、BCIはロボット人工装具を使う四肢まひの人のために使われるかもしれない。BCIは、例えば、腕がまひしている人の神経信号を復号し、この信号をロボット義手の操作に使うかもしれないロボット義肢をBCIで制御し続けると、身体の各部位に対する脳のマッピングが書き換えられ、ロボット義肢があたかも自分の身体の一部であるかのように適応するよう調整される。健常な2本の腕を持っている人がさらに2本(もしくはそれ以上)のロボット義手をBCIで制御し続けたら、4本腕を制御できるように脳のマッピングが書き換えられるかもしれない。

Williams氏

さらにBCIを使うと、自分の身体の見方にも変化をもたらす可能性がある。「BCI制御義肢を長く使い続けると、ある時点でそれが肉体の一部になる。BCI義肢が神経システムにあまりにも密接につながっているため、BCIのユーザーは義肢を自分の身体の一部だと考え始める」

また、BCIを使うために変わる必要があるのは脳だけではなくコンピューター側も、人間に適応することを学習しなければならない。

アメリカ国立神経テクノロジーセンターのディレクター、Jonathan Wolpaw氏

「互いにやり取りする2つの適応制御装置がある。1つは非常に洗練されているがあまり理解されていない適応制御装置、つまり脳だ。もう1つはこの不器用な装置(コンピューター)だ。コンピューターでは、何をインプットするにせよ、正しいアウトプットや効果的なアウトプットを得るためには適切な方法でやり取りしなければならない。両者は相互作用し、促進し合い、高め合わなければならない」

BCIの用途が広がるにつれ、BCIが脳に与える別の影響も明らかになりそうだ。例えばアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)は戦争用BCIの研究に投資している。実現すれば、兵士は念じるだけで戦車やドローンを操作できるようになる。またFacebookはBCIで思考を電子テキストに変換できるかどうかを研究している。いずれもBCIによって、コマンドを入力したりボタンを押したりという、手を使うユーザーインターフェースが不要になり、システムを思考でコントロールするようになる可能性を持つ。

そうなると人間が思考してから、その思考をリアルな世界での行動に変換するまでに要する時間が飛躍的に短縮できる。情報処理能力は、かつてないほど高速化する可能性がある。

Sanchez氏

「コンピューターは、生物学的神経系よりはるかに高速に信号を処理でき、時間を短縮できる。人は、自分の神経系を使うよりもはるかに速く動作コマンドを実行できるかもしれない」「また、脳がそうした状況にどう適応するかも興味深い点だ。人間の知覚と外界との相互作用は、神経系の基本的な速度によって制限されている。脳に相互作用の速度を上げる何かを与えたら、脳はその状況に適応し、より速く働くようになるだろう」

これが乱暴に思えたり、自分の脳が神経より速い入力についていけるのか疑問に思ったりするかもしれないが、テクノロジーが人間を変えることに疑問を持つのはあなただけではない。BCIは、これまで学ぶ必要のなかった方法で機能するツール――行動を起こすのに筋肉を必要としないシステム、目や耳を経由せずに脳に直接伝わる情報――を提供する。

Wolpaw氏

「BCIのユニークな点は、脳信号から出力される新しい種類の出力を脳に提供することだ。筋肉を動かす代わりに、人は脳のある部分に直接行き、何らかの方法で動きを測定し、それをある種の行動に変換する。われわれの理解では、筋肉に目的の行動をさせることに関係する脳内のすべての独立した部分は、BCIでは出力そのものになる」「BCIに関する基本的な疑問は、脳が本来は実行するように設計されておらず、進化するようにもなっていないこの新しい事をどれだけうまく学べるかだ。今のところ、その答えは、学べなくはないが、現在の方法ではそれほどうまくいかないというものだ」

人間の脳は、言語、火、車輪という三大発明の時代から、書籍やあらゆる種類の新しい技術ツールを使いこなしてきた。BCIも、こうした適応の旅の新たなステップにすぎないようだ。脳はBCIにも適応するだろう。ただしどのように、どのくらいうまく適応するかについては、もう少し待つ必要がありそうだ。

・・・う~ん、それでドウしようと、できるコトは増えるけど・・・幸せ?

今日は~

アナカンプセロス サブヌーダ/Anacampseros subnuda


このコも茶色くなってヤバい?

ってなったけど今では緑が戻ってきた

イけそう・・・

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