2024年8月20日火曜日

水の安全保障

水道管の劣化や、進まない耐震化など、日本全土における水道の脆弱性
水道管の耐震化を進めるにしても、人口減により水道収入も減少しており、多くの自治体で水道料金の値上げが必要とされている
水ジャーナリストの橋本淳司氏は水道管の劣化や、進まない耐震化による、日本全土における水道の脆弱性を指摘
「多くの水道管が経年劣化でボロボロになってきています
法定耐用年数を超えた管路は2021年度時点で22.1%
そして、上水道の漏水・破損は年間2万件以上、下水道の破損に起因する道路陥没は年間2600件も発生している状況です
お金と人手が足りず、対応が進んでいないのです
また耐震化も進んでおらず、送水管や配水本管(給水管を分岐しない配水管)といった、水道を支える重要な基幹管路の耐震化状況は2022年度末時点の全国平均で42.3%
地震の揺れに強い耐震管の普及率が低いうえ、土砂災害警戒区域内に位置しながらも土砂災害対策が実施されていない水道施設もまだ多くあります
全国にある水道施設のうち、土砂災害発生時に1日平均給水量以上の給水が確保できない水道施設は2068施設と、全体の10%を占めている(※2019年時点)のです
2024年1月の能登半島地震でも、断水は解消したものの、長期で水道が復旧しないとされている地域も一部あります
その中には、液状化によって到達できなくなっている浄水場なども含まれているのです
自分が住んでいる地域で今は断水していないだけで、いつどこで能登のような状況になってもおかしくない状況にあるといえます」

日本の上水道普及率は2022/3末時点で約98%(簡易水道、専用水道を含む)
下水道普及率は約80%と広範囲でカバーされている
一方で、今回の震災で露呈したように、災害に強いとは言い難い一面もあり、災害に備えて設備を更新するのにも膨大な費用が必要となる

2024/4/24に発表された、コンサルティング企業EY Japanと水の安全保障戦略機構の最新の共同研究結果 人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024版)によると
2046年度までに水道料金の値上げが必要と推測されるのは、全体の約96%となる1199事業体
また、約4割は今後3年以内(2026年度まで)に値上げが必要と考えられている

橋本氏
「水道料金は、水道設備の維持や施設の運営にかかるコストを、利用者(人口)で割って計算されるので、事業者(主に自治体)によって異なります
つまり、コストの増加と利用者数の減少が料金値上げの主な原因なのです
水道管を新しいものに交換すればそのぶん水道料金も値上げされます
工事のしやすさにもよりますが、目安として、1キロメートルの水道管を直すのに1億~2億円かかると言われています
さらに、人口減少も相まって、水道料金の値上げは避けられません
水道料金の自治体間格差は、現在の8倍から、20年後には20.4倍になると言われています」
「日本は水に恵まれていると思われがちですが、実はそうではありません
降水量は世界平均の約2倍ですが、それを人口で割ると世界平均の3分の1程度になってしまいます
ですから、限りある水資源をみんなで使っていくためには、インフラをみんなで支えることが非常に重要なのです」
「2024年1月の能登半島地震で改めて感じたのが、水道のことを意識する時代がやってきたということです
これまで水道について、“無意識”になるような政策がとられてきました
『365日24時間、安全な水が送られてくるので、水道のことは心配しないでくださいね』と
しかし、これからは水道のことを意識して、どういう水インフラを整備すべきか市民自ら声を上げ、選択することが重要な時代になってきていると考えています
水インフラには、浄水場や下水処理場などの水処理施設と水道管によって成り立つ従来の『大規模集中型』と、集落や集合住宅、家庭ごとに水を処理する『小規模分散型』の仕組みがあります
『大規模集中型』は様々なところにつながっているので、浄水場や水道管など、どこかに不具合が生じると全体に影響を及ぼす可能性があります
一方で『小規模分散型』は、なにかあっても範囲が限定的で、復旧も比較的早い
その上、様々な手段があります
たとえば、従来の水インフラの原水は、河川水や湧水、地下水ですが、小規模システムでは、雨水や排水を利用する技術もあります
原水だけでなく、浄水方法や配水方法、管理方法など、水を利用できるまでのプロセスごとに、様々な選択肢があり、その組み合わせ次第で、従来の水インフラよりもコストを下げられる可能性もあります
こうした選択肢を知り、ライフスタイルや防災の観点から、自分たちにとって最適な手段や組み合わせを選ぶことも可能なのではないでしょうか」

大規模な水道インフラに頼らない暮らしを実現する、小規模分散型の仕組みにはどのようなものがあるのか
今回の能登半島地震において活躍した水システムの一つに、WOTA株式会社の水循環型シャワーWOTA BOXと水循環型手洗いスタンドWOSHがある
排水を再生・循環利用するシステムで、提供した数は合計で300台以上にものぼると同社執行役員の越智浩樹氏は語る
「『WOTA BOX』も『WOSH』も、使った水をフィルターや紫外線、塩素などにより安全な水質基準まで処理することで、98%以上の水を再生し、循環利用できるシステムです
能登半島支援の特徴の一つは、すべての設置場所で自律運用型の仕組みを展開したこと
断水が広域かつ長期化することが予想される中、避難所の利用者に自ら運用していただくことで、各避難所への展開スピードを上げ、持続可能な支援につながると考えました
フィルター交換などのメンテナンスは専門的な能力や知識を必要とせず簡単に行うことができ、設置避難所で生活している中学生が自ら運用に協力してくれるなど、多くの方々の協力を得て支援を続けています」

1/4から現地での提供を始め(協力会社含む)、同月末には能登半島全域をカバーしたというWOTA
断水地域でいち早く生活用水の基盤を構築した
災害時に必要となる水と聞くと、まず飲み水をイメージするのではないだろうか
実は、長期の避難において最も大きな課題となるのは、シャワーやトイレ、手洗い、洗濯等に必要な生活用水だという

越智氏
「飲用水は物資として迅速に十分な量が届いていましたが、生活用水が圧倒的に足りない
例えばシャワーは1回あたり50ℓ使うと言われています
100人の避難者がいれば、シャワーだけでも1日5000ℓの水が必要になる計算です
使った水を再生循環利用できるシャワーは、100ℓの水で約100人がシャワーを浴びられるため、限られた水量でも多くの方に入浴を提供することができました
また、生活用水は日々の生活や衛生だけでなく、精神面でも重要な役割を果たします
シャワーを浴びたり手を洗ったりできないことは大きなストレスとなり、手洗いスタンドを設置するだけでも避難所の方々から拍手が起きるほどでした
自衛隊が提供する集団風呂は非常に重要ですが、生理中の方や要介護者には利用が難しい場合があります
そのため、各避難所ごとに設置が可能で、プライベート空間となる個室シャワーは、被災地の方々にとって必要であり、衛生面だけでなく精神面でも安心をご提供できると考えています」

暮らしや衛生、精神面でも大きな支えとなる生活用水
どこでも水がある日常がどれほど私たちに欠かせないものか、改めて思い知らされる
一方で、断水時にはただ水さえ用意できればいいというわけではない

越智氏
「断水時に生活用水をすぐに使うためには、十分な水量、利用設備、排水処理がそろっていなければなりません
飲み水の数十倍にもなる量を用意できるか、小学校などの避難所でも利用できるか、利用した後の排水を処理できるか
この全ての要素を備えて初めて、生活用水を供給することができます」

WOTAでは災害時だけでなく、日常給水における水道財政改善策として住宅向け小規模分散型水循環システムの展開を複数の自治体で始めている
人口減少が加速し、老朽化した水道の更新投資が困難になってくる過疎地域や、水資源に乏しく給水コストが非常に高くなる島嶼地域を中心に、愛媛県や東京都で水循環システムを実際に設置し、一般の住民が生活する社会実証を2023年から行っており、2024年度は広島県や他の自治体でも展開を拡張させる予定だ
使った水をその場で再生循環利用することで、大規模な水処理設備や水道管などの建設費用を抑制し、水道事業における赤字の改善が期待されている
小規模分散型の仕組みの活用の重要性が増す今、こうした生活用水システムは様々なものがあり、既に日常的に利用している地域もある

その一例が、ヤマハ発動機株式会社の小型浄水装置ヤマハクリーンウォーターシステム(以下、YCW)を導入した長崎県五島市福江島半泊地区
YCWは川や湖などの水を砂で物理的にろ過し、さらに水中の微生物の働きによってより細かな物質を浄化する緩速ろ過という自然界の仕組みを応用した浄水装置
専門家によるオペレーションや大きな電力、特別な薬品等を必要としないため、住民らがメンテナンスをすることができる

YCW
同地区では、宿泊施設Philosophers in Residence GOTO(フィロソファーズ・イン・レジデンス・ゴトウ)めぐりめぐらすで実証事業として2022/10にYCWが設置された
2024/4の実証事業の完了にあたって寄付され、引き続き宿泊施設と近隣の住民に利用されている
五島市役所地域協働課によれば、同システムの導入によって単に水を得る手段が増えただけでなく、水道未普及地域での新たな産業が可能になったという
「福江島半泊地区は水道未普及地域で自治体が管理する上下水道施設がなく、民間の方が山の湧水をろ過して管理してきました
生活には基本的に困ってはいなかったのですが、廃校を活用して宿泊施設をつくるプロジェクトが始まり、浄水設備が必要となったため、YCWを導入したのです
現在は宿の方が管理されていて、住民の方も何かあればそこの水を使えるようにしています
2022/12にはジンを製造する『五島つばき蒸溜所』もできたのですが、水道未普及地域でありながらそうした産業ができ、おかげさまで『GOTOGIN(ゴトジン)』は人気商品となり、地域活性化にもつながっています」

私たちが生きるためにも、より豊かな生活を送るためにも欠かせない水資源
蛇口をひねればいつでも出てくるのが当たり前だが、実はその当たり前はいつ崩れてもおかしくないのだ

・・・外資が狙ってる水道事業
恐ろしいが、実際ヤってる自治体も・・・
分散タイプなら
商売にならなくて・・・

今日は~
ザミア プミラ/Zamia pumila
6月終わり
新芽が出てきたんで
古いハッパを切る前の
記念撮影

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