2024年1月22日月曜日

肉体労働が至高?

生成AIは単に人間の模倣や代替ではなく、人間と共に新たな価値や可能性を創り出すパートナーになりえます
その可能性について、東大・松尾研究室所属のAI研究者・今井翔太氏による最新刊『生成AIで世界はこう変わる』より・・・

”ポランニーのパラドックス”という有名な説が
これは哲学者マイケル・ポランニーの言葉をもとに提唱されたもの
その内容は「人は言葉で表現できる以上のことを知っている」
この言葉で表現できる以上のことを暗黙知と言います
このパラドックスは、人間の作業の機械化を阻む障害を表すものとして、よく引き合いに出されていた
コンピュータは人間がプログラミングして初めて動く
つまり、人間が言語で表現してプログラミングコードに落とし込むのが難しい動作は、そもそも機械化のしようがない
機械化においては、このパラドックスをどうやって乗り越えるかが課題だった

AI以前にコンピュータの基本的な性能から考えて、定型作業が機械化によって置き換えられることは、昔から共有されてきた認識
定型作業とは作業内容があらかじめ決まっており
人間の言葉で作業内容を記述できるようなもの
つまり単純な行動の繰り返しで実行できるようなもの
このような作業は、人の手でその内容をコンピュータにプログラミングできる
コンピュータは人間によって書かれたプログラム、つまり動作するためのルールに従って動作すれば、定型作業を完了できる

2013年は機械学習・ディープラーニングの本格的な性能上昇が認知され始めた時期
この時期には、機械学習によって非定型作業の一部も機械で置き換えられるという期待が大きくなりった
非定型作業とは作業内容が決まっておらず、しかも人間の言葉で作業内容を明確に記述できないようなもので、まさにポランニーのパラドックスで言う暗黙知が関わる作業
たとえば運転は交通状況や天候などに左右され、同じルートであっても作業内容は毎回異なる
もっと簡単な例で言うと猫と犬を見分けるといった識別も非定型作業
人間はこれを簡単にやってのけますが、実は犬と猫を見分けるルールを言葉で明確に表すのはかなり難しい
異常検知も非定型作業の1つ
人間の「なんか変だなぁ」という感覚の「なんか」は、言語で表すことの難しさを端的に表しています

機械学習・ディープラーニングは、人間が作業をプログラミングするのではなく
データから自ら学習することにより、このような非定型作業の一部を可能とした
これらの非定型作業は確かに言葉で表すのは難しいのですが、作業の実例や正解データ自体はいくらでもある
作業の過程はともかく作業で達成されるべき目標や成果は明確
それらをAIに学習させれば言葉にできない作業過程も自律的に学んでくれる
つまりポランニーのパラドックスで言う暗黙知の一部分は、機械にも学習可能であることが明らかになった

ここまでは、ディープラーニング登場直後の2013年に発表された、オックスフォード大学のカール・フレイとマイケル・オズボーンによる世界的に有名な論文 雇用の未来 においても、AI/コンピュータによって代替できることとして前提にされていた部分
ただしこの論文でも、AIには将来的にも難しいとされていた能力が
論文内では創造的知能と社会的知能とされていた能力
創造的知能とは作曲や科学研究など、新しく価値あるアイディアを思いつく能力
社会的知能とは交渉や説得のように、人間の感情を重視した対人コミュニケーションを行う能力
これらの能力が扱う作業は、非定型作業であるうえに、そもそも何が正解であるかが明確ではない
ヒットする音楽の正解を誰が定義できる?
感動させる詩のつくり方とは?
どんな人も納得させる説得術とは?
ノーベル賞を取れる研究のやり方とは?
受ける広告のコピーとは? 
etc
いずれも正解を用意することは不可能
確かに、過去にヒットした曲や成功した研究、人の会話や文章のリストなど、正解データらしきものは集められる
これらを学習することで過去に存在したものを模倣することはできる
しかし、こうした作業で求められているものは、本質的に
今まで存在しなかった現象に対応することや
これまでにない価値のあるものを生み出すこと
過去に存在したものをデータから学習して模倣するだけでは、あまり価値がないし、未知の事象に対応できない

ポランニーのパラドックスは部分的には否定されたが、少なくとも短期的には機械化できない部分が残るだろう
そして、これらの能力を必要とする職業の大半は、高学歴で長いトレーニングを積んだ者が担う高賃金の職種
これが2013年から生成AI革命前までの大多数の考え

ところが生成AIは、この考えをひっくり返した
OpenAI社らが2023年時点で問題にしているのは言語生成AIだけですが
言語を扱う職業だけで見ても、生成AIが創造的かつ社会的な能力を必要とする仕事を実行できることは明らか
現在の生成AIも、2013年時点で登場していた機械学習・ディープラーニング技術の延長

では、その技術をもってしても”できないだろう”と思っていたことが、生成AIではなぜできてしまったのか
まだ研究途上の部分も多くありますが、現時点である程度説得力のある説は
人間の創造的な作業とされてきたものの大半は
実は「過去の経験のなかから、価値のある新しい組み合わせを見つけること」
生成AIは膨大なデータ学習からこれを見つけられるようになった
というもの

また社会的知能についても
人間のフィードバックを加えた強化学習などの調整を行えば、ある程度は実現可能であることがわかってきた
それでも、依然として生成AIの影響をほとんど受けない職業も

”モラベックのパラドックス”
ロボット工学者のハンス・モラベックの名を冠したこの主張は
「AIにとっては、人間がよく考えて行う高度な作業は簡単だが、人間が特に何も考えず簡単にこなしていることは難しい」
たとえば、プログラミングコードを使ってシステム開発をしたり、高度なアルゴリズムを書いたりすることは、かなり頭を使う作業
将棋や囲碁といったゲームをプレイしてプロを打ち破ることは、普通の人が頭を使ってどうにかなるレベルではない
これらは人間のなかでも一部の天才や高度なトレーニングを積んだ者にしかできない
しかし、すでに見てきたように、現在のAIはこれを簡単にできてしまう

では服を畳む、食べものを箸でつまむ、散らかった部屋で移動する、ものを探して持ってくる、スキップする、といった作業は?
これはほとんどの人間が簡単にできること
多くの人にとってプログラミングは難しい作業ですし、藤井聡太さんを将棋で倒せる人は、少なくともアマチュアでは一人も存在しないかも
それに対し、箸を使ったりスキップしたりすることを難しいと感じる人は・・・
人間であれば小学生か幼稚園児でもできる

しかしAIにとってはこれが大変困難
現時点では、これらの作業を実行できるAIは存在しないか、相当に限られた範囲のことしかできない
成AIが登場したあともこの点は変わらず、モラベックのパラドックスはいまだに健在
GPTs are GPTsで示されていた生成AI登場後のAIの影響を受けにくい職業とは
まさにこのあたりの能力を必要とする作業、つまり肉体労働を中心にした職種
皮肉なことに人間にとっては一般的に賃金が低い傾向にあるこれらの職業は、AIで代替するのが最も難しい職業だった
頭脳労働は生成AIなどを実装した機械に奪われてしまい、創造性を発揮する余地はなくなるのでは?・・・

・・・そうなる?
利を追い求めるなら・・・
なんかディストピアが目前?

今日は~
ネオレピソラスsp/Neolepisorus sp?
溶岩着け
今回は上から
少し雪が乗ってる
気温自体は0℃より高いんで
問題ない
まだまだちいさいけど
もっと成長すると思う


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