2024年1月10日水曜日

日本人気質


2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本では、「原発は安くて安全でクリーン」だという原発神話が
事故でその神話が一旦崩壊した後、急速に発展する再生可能エネルギーとの比較からも、今では「原発は高い」「原発は汚い」という事実はかなり広く理解されるようになった
しかし「原発は危ない」という点については、少し状況が異なる
福島第一原発の事故で原発の危険性を思い知らされ、「原発はいらない!」と強く思った多くの国民は、事故から12年を経て、あの想像を絶する原発事故の痛みと恐怖を忘れてしまったかのよう
原発推進論者が、「原発が動かないから電気料金が上がる」とか、(夏や冬のほんの一時期だけなのだが)「需給が逼迫して停電のリスクがある」とか叫ぶと、いとも簡単に、「それなら原発を動かしてもいいか」という反応

今回の地震の結果を見るまでもなく、日本の原発は「危ないから」止めるべきだと考える十分な根拠がある
「原発の不都合な真実」の中で、もっとも重要なのは、原発の耐震性に関する事実
原発の事故が起きても良いと考える人はほとんどいない
多くの人は、政府が、「世界最高水準の規制基準を満たしています」と言うのを聞いて、「福島の事故を経験しているのだから、さすがに動かして良いという原発は安全なものに決まっている」と信じている
日本の国土は世界のわずか0.25%しかないのに、2011年~2020年でみると全世界のマグニチュード6.0以上の地震の17.9%が日本周辺で発生するという、世界で最も危険な地震大国
その日本で世界最高水準の規制に適合していると聞けば、「原発は、ちょっとやそっとの地震ではびくともしない」と誰もが思っている?

真実は全く違う
日本の原発は地震に極めて弱い
それをわかりやすく説明したのが、関西電力大飯原発を止めたことで有名な樋口英明元福井地裁裁判長
日本の原発は、民間のハウスメーカーが販売する耐震住宅よりもはるかに耐震性が低い
三井ホーム、住友林業の耐震性は、各々最大約5100ガル(ガルは加速度の単位、大きいほど強い揺れを示す)、約3400ガルに耐える設計になっている・・・?

一方、四国電力の伊方原発の耐震基準は650ガル、高浜原発は700ガル
日本の原発の耐震性は民間住宅の数分の1しかない
北陸電力志賀原発も建設当時は490ガル、その後600ガルに引き上げられ、現在は1000ガルということで安全審査を申請している
なぜ、耐震性が上がっているかというと、さすがに3桁では信用されないということで、いくつかのマイナーな耐震対策を施して耐震性がすごく上がったと説明している

日本では2000年から20年までの間に、1000ガル以上の地震が17回、700ガル以上は30回起きていた
つまり原発の耐震基準を超える地震はごく普通に起きる
日本で記録された最大加速度は2008年の岩手・宮城内陸地震の4022ガル
2番目が2011年の東日本大震災の時の2933ガル
日本の原発の耐震基準の大半は1000ガル以下である(詳しくは、樋口氏の著書『私が原発を止めた理由』『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』〈いずれも旬報社〉を参照のこと)
このような事実を知る人が増えれば、そんなに危ない原発が動いていたのかと驚き、今すぐ止めてくれということに・・・

今回の能登半島地震の最大加速度は、原発のある石川県志賀町の観測点で、東日本大震災に匹敵する2828ガルだった
1000ガル以上も計7地点で確認されている
たまたま運が良かったのかどうか、あるいは計測に異常があったのかもしれないが、北陸電力の発表を鵜呑みにすると、志賀原発1号機原子炉建屋地下2階で399.3ガルだった
近隣に比べて何故かずいぶん小さな揺れだったということになる
1000ガルの基準地震動から見れば余裕というところなのだろうが、その割には、かなり深刻な被害が出たのが驚き
使用済み燃料プールの水が大量に溢れる、冷却ポンプが一時停止する、複数の変圧器付近で配管の破損による大量の油漏れがあり、その影響で外部電源の一部系統が使用不能になるなどかなりの異常が発生
これらの結果、放射能が外部に漏れたかどうかが気になるところだが
当初モニタリングポストでは放射能漏れは観測されていないと発表されて胸を撫で下ろした
だが、なぜか4日になって、原発の北15キロ以上離れたところにあるモニタリングポスト14カ所でデータが確認できていないことを発表
他のモニターの値が信用できるのか、より近くのモニタリングポストで計測不能になっていたらどうなったのかということも不安材料となった

これらの異常の他に何があったかはまだ明らかにされていない
特に敷地内で建物や道路に亀裂が入ったり、隆起や陥没があったりしたかなどはすぐにわかりそうなものだが、発表があったのは5日になってから
それも、1号機の原子炉建屋付近や海側エリアなどで最大35cmの段差やコンクリートの沈下などがあったという程度の簡単な情報提供だけだった
道路に段差があれば消防隊などの活動に支障が生じたりするので実は深刻は事態だが、そのようなことを連想させたくない?
何よりも気になるのが、北陸電力や政府の情報の出し方
地震の発生後最初に伝えられた「志賀町で最大震度7」という情報を聞いた私は、真っ先に、これは大変だと思った
志賀町といえば原発
それがどうなっているのか、住民はすぐに避難しなくて良いのかということが気になった
しかしテレビを見ていても、出てくる話は、津波のことばかり
それが最も重要な情報であることはわかるし、それを繰り返し流すことは必要
しかし原発の状況についても万一のことを考えれば、決して後回しで良いという話ではない
原発の状況について政府が具体的に触れたのは事故から2時間以上経過した後
林芳正官房長官が会見で
「現時点で異常なし」
だが記者の質問が飛ぶと
変圧器で火災が発生と驚くような話をして、すでに消火と言い添えた
変圧器で火災なら重大事故なのではないかと心配になる
現に外部電源が一部断たれたわけだから、「異常事態」であるのは疑いようがない
火災については、のちに北陸電力が否定したが、官房長官は訂正せずに放置
この官房長官発言が原因で、原発で火災という情報が拡散して混乱を生じさせた
北陸電力は爆発音と焦げ臭いにおいがしたことやスプリンクラーが作動して水浸しになったことは認めたが、それでも火災はなかったと主張

原発で火災があったという前提で、「異常なし」と語った林氏の意図はどこにあったのか?何か特別の意図があったのでは・・・
志賀原発については元々その敷地内に活断層があるのではないかということがずっと疑われてきた
今回の地震で異常があったということになれば、あらためて活断層への疑念が深まる
それがなくても基準地震動の見直しとそれに基づく対策の実施が求められる可能性も出てくる
コストの問題もありまた再稼働までの時間が延びることも必至
それは北陸電力としてはどうしても避けたい
だから異常はなかったと言いたくなる
むしろ今回の地震を奇貨として、これほど大きな地震でも「何の問題もなかった」と言えれば、いかに志賀原発が安全かを示していると言えるとさえ計算?

疑念はこれだけにとどまらない
政府にとってもっと大事なことが、それは東電柏崎刈羽原発の再稼働
東電は事故後倒産寸前に陥り、福島事故の後始末も自力ではできなかった
このため政府は巨額の出資で資金を注入し、東電を政府の子会社とした
その資金を回収するためには、政府保有の東電株を高く売らなければならない
だが東電は経営が苦しく株価が低迷している
柏崎刈羽原発が動けば発電コストが下がり、利益が大幅に増える
その結果株価が上がり政府も資金回収できるというシナリオを実現するために、何としても原発を動かしたい
しかし志賀原発で耐震性に問題があったとなれば、同じ日本海側の近県に立地する柏崎刈羽にも影響が及ぶ可能性が
ある。それだけは何としても避けたいというのが東電のみならず、政府の強い願い
特に嶋田隆首相秘書官は、次期東電会長とまで言われた経済産業省の元事務次官
柏崎刈羽再稼働は、官邸にとっても最優先課題となっていた
それに水を差すことなど・・・

しかし今回の原発での異常事態や周辺地域の壮絶な被害状況を見れば、日本のような地震大国で原発を動かす、いや、保有するだけでもいかに大きなリスク
3.11から12年経って事故の記憶が風化し、脱原発どころか原発新増設にまで踏み込む原発推進策に舵を切ろうとしていた日本にとって、これは天啓?
しかし、それは楽観的すぎるのかも
原発事故の被害を想像する能力を失い、驕りと強欲の塊となった日本が過ちに気づくには、原発事故を待つしかない?


・・・正常化バイアスというか
喉元過ぎればというか
忘れやすい・・・
どこかに不安がアっても・・・
そういう気質
なんで政治が・・・


今日は~
きのこ
グリーンファームで
ショウゲンジ
別名コムソウ
ウマい
煮物か汁物で

画が少ないんで・・・
1つづつ

2023/1/13
加筆

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