強力な重力によって、周囲にあるものを吸い込んでしまうブラックホール
2023/4イギリス科学誌natureで最新の観測結果が発表され、天文学者が沸いている
国内外から100人を超える天文学者が参加した国際共同研究を率いた国立天文台水沢VLBI観測所の秦和弘助教
「新しいことが分かっても、また分からないことが出てくる。底なしの謎の天体の研究から、脱出できない状態です」
2019年に公開された、地球から5500万光年先にあるM87銀河のブラックホールシャドウの画像
この画像は、史上始めてブラックホールの存在を直接的に捉えたものとして、当時世界中で話題となった
ブラックホールは、重たいわりにとても小さい、超高密度の天体
重力が極めて強く、周りにある光や物質が一度飲み込まれてしまうと、二度と出ることはできない
ブラックホールの概念は18世紀に提唱され、20世紀に入ってから現実に存在するかどうかを巡る理論研究が本格的に進みました
理論研究の進展に大きな影響を与えたのは、物理学者のアルバート・アインシュタイン博士
それまで物理学の中心だったニュートンの理論に代わり、アインシュタインが提唱した一般相対性理論を用いて計算すると
天体がある半径よりも小さくなった段階で、この世で最も速い光ですらも、その内側から脱出できなくなるというおかしな計算結果が現れた
太陽と同じ質量の天体の場合、その半径はたった3kmほど
その後、宇宙からやってくる電波を観測する方法が発達し、1960年代以降、ブラックホールの存在が確実視されるように
2019/4には、5500万光年かなたにある楕円銀河M87の中心部で、質量が太陽の65億倍もある巨大ブラックホールとその影の存在を証明したと国立天文台などが発表
実は、2023/4に発表された最新の成果の観測対象も、2019年の発表と同じM87銀河
ただ、前回は巨大ブラックホールの、ごく近くのみの撮影した結果だったのに対し
今回の研究成果では、巨大ブラックホール周辺のより広い範囲を調べています
論文の責任著者の1人である秦助教によると、ブラックホールは次の3点セットで構成される
・ブラックホール本体
・ブラックホールに、その成長の源となるガスを供給する降着円盤
・ブラックホールの近傍から高速で吹き出しているガスの流れジェット
「この3点セットは、ブラックホールのことを知るために欠かせない『三種の神器』なのですが、これまでは銀河中心部のブラックホールと、そこから遠く離れた場所にあるジェットをそれぞれ別々に撮影するのにとどまっていました。今回は、これまで直接撮影ができていなかった降着円盤の姿を初めて捉え、ジェットと併せて1枚の写真の中におさめることができたのです」
秦助教ら国際共同研究チームが捉えた画像は、次のようなも
中心部に明るく光るリング状の構造があり、右側には、そこにつながる3本のガス(ジェット)
この観測結果から、いったい何が分かった?
まず研究チームは、今回観測したリング状の構造が何なのかを検討
リングと言えば、2019年に撮影されたブラックホールの画像でも、リング状の構造が捉えられていました
ただ、今回撮影されたリングの見かけの直径は0.017光年(1光年は光が1年かけて移動する距離)に相当し、2019年に観測したリング状の構造と比べると1.5倍ほど大きく、厚みもぽってりと
今回見えた大きくて厚いリングについて、研究チームはコンピュータシミュレーションを用いてさまざまなシナリオを検討
その結果、2019年に観測したものと比べて大きくて厚いことは間違いなく、巨大ブラックホールの周りに広がる降着円盤であると考えるのが妥当だと
秦助教とともに記者会見に同席した八戸工業高等専門学校の中村雅徳教授
「今回、降着円盤という活動銀河核の最後のベールが、直接撮影で明らかにされました。ブラックホール天文学において、極めて重要な進展です」
ブラックホール3点セットの一つ、高速で吹き出すジェットについても、新しい発見が
M87のジェットは1918年に不思議な光の矢として発見され、古くから知られた存在
ただ何もかも吸い込んでしまうはずのブラックホールの重力をどのように振り切っているのか?
どうやって光速近くまで加速され、光の矢のような形状になるのか?
ジェットには謎が
その解明は天文学の大きな課題に
今回の観測画像で、ジェットの流れが、ジェットを形成する縁の部分と真ん中を貫く部分に
少なくとも3本あることが確認された
秦助教
「これは、研究者がとても注目している構造です。特に、真ん中の構造の正体が何なのか正確なところは分かっていませんが、もしかしたら巨大ブラックホールから直接、吹き出しているジェットなのかもしれず、今後詳しく調べていきたいです」
降着円盤の付近に確認された、ふくらんだ構造もジェットの謎を解く鍵に?
ジェットは細長い線状に放出されるものですが、そのためにはガスを細長く絞る仕組みが必要
理論的には、その仕組みには降着円盤と、そこから吹き出す円盤風の存在が不可欠であると考えられてきた
今回見つかった、くらんだ構造は、ジェットの覆いの役目を果たす 円盤風である可能性がある
中村教授
「想定していなかったものが、副産物として見えて驚きました。なぜジェットが細く絞られた形状になっているのかを解き明かすヒントになるかもしれず、非常に喜ばしいです」
今回撮影された画像は、2018/4、波長3.5mm帯の国際観測網によって観測されたもの
この撮影は世界各地にある電波望遠鏡をつなぎ、それらのデータを合わせることで高い分解能を得る技術(超長基線電波干渉計:通称VLBI)によっている
観測に参加した電波望遠鏡は計16台で、2019年に発表した画像を撮影したときから倍増
秦助教
「チリやグリーンランドの望遠鏡が参加してくれてデータの性能が上がり、観測の空白地帯がなくなったことは大きかったです。観測期間中、ほぼ全ての各地の天気が良いという運にも助けられ、質の良いデータを得ることができました」
日本には当時、3.5mm帯の波長を用いたVLBI観測ができる装置がなく、観測そのものには携わっていません
しかし、日本人研究者は計画立案や観測データの画像化、結果の理論的考察の面で大きく貢献
その結果、4人の責任著者のうち、2人が秦助教ら日本人となりました(もう一人は、台湾にある中央研究院天文及天文物理研究所の浅田圭一副研究員
秦助教
「今後、さまざまな波長を使って、巨大ブラックホール本体、降着円盤、ジェットの画像を撮り、コマ送りの形でつなげることで、動画として一連の動きを捉えることに挑戦したいと考えています」
水沢VLBI観測所では波長3.5mm帯の受信機を開発中で、早ければ2024年度からこの国際観測網での動画撮影に加わることになります
世界の天文学者や研究施設が協力し合うことで、巨大ブラックホールの姿がここ数年で少しずつ、着実に明らかになってきています
この先、更に研究が進めば、巨大ブラックホールが自身の成長の“エサ”となるガスを取り込んで大きくなっていく様子や
降着円盤やジェットが形成される仕組みが、動画の形で詳しく分かっていくかもしれません
不思議なことに巨大ブラックホールの質量と、銀河の中心部の質量には相関関係があり、重い銀河ほど、その中心にある巨大ブラックホールの質量は大きくなることが知られてる
中村教授
「我々が住む天の川銀河とM87銀河を比較することで、降着円盤の性質やジェットの様子の違いが分かるようになれば、天の川銀河がどのように成長したか、大きな宇宙スケールでの進化の過程に迫ることもできるのではないかと考えています」
ブラックホールの研究を含め、人類史に残るさまざまな科学の発見は
私たちの世界の見方を変える可能性を秘めている
・・・明日、明後日の飯には関係ないんだよな~
今日は~
ディスコレア エレファンティペス/Dioscorea elephantipes
やっぱ早い
一段とゴツゴツに
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