コンビニはおろか、店の一軒もない駅前から細い坂道を上ること10分
古い平屋の住宅が整然と並ぶ一画
旧横須賀市営田浦月見台住宅(以下、月見台住宅)が整備されたのは1960(昭和35)年
最寄り駅は横須賀線田浦
駅周辺には自衛隊や港湾関連の施設が集積しており、スーパーやコンビニエンスストアといった生活利便施設はほぼない
駅からはひたすら坂道が続く
そんな高台にある月見台住宅には1万4000㎡弱の敷地に長屋建て、平屋の22棟、58戸が敷地内を走る3本の道に沿って整然と並ぶ
この時代に作られた他の団地同様、各棟間はゆったりと広く、周囲には緑が広がる静かな地域で場所によっては眼下に長浦湾が望める
住環境としては抜群だが、住宅は荒廃が進んでいる
2020年度に市が老朽化を理由に廃止を決定し、2022年に最後の入居者が退去
その後は空き家になったままだった
だが周囲から
「広大な無人の団地が放置されているのは不安」
実際、窓ガラスが割られるなどが発生したため市は活用を決意
2023年度に活用事業者として選定されたのが鎌倉を本拠とするまちづくり会社、エンジョイワークス
用途地域は第一種低層住居専用地域
住むことが最優先される場所だが、住居だけで考えるには難しいところもあろうとエンジョイワークスが提案したのは“なりわい住宅”
住みながら家の一部を利用した小商いなどが可能な兼用住宅
エンジョイワークス事業企画部の髙才ゆきさん
「暮らしながら働く人を対象に考えました。具体的には緩くブロック分けをしてテイクアウトを中心とした飲食店、工房やスタジオ、古着やレコード、アンティーク家具などのショップ、広い庭を活かした農業やパーマカルチャーを意識した店舗などを配することを想定。夏から現地でイベントを開催するなどして募集を開始しました」
過去に2回開かれた紹介イベントでは年齢、性別、家族構成もさまざまな人達が集まり、熱心に建物、敷地内を見学
入居自体は2025/4〜2025/7になる予定で、現地を訪れても見られるのはエリアの自然環境と改修前の手の入っていない状態の住戸だけ
だが、年7月と9月に行われたイベントにはそれぞれ120人と170人が主に都内近郊から参加
11月初旬までに52戸中45戸以上の仮入居申し込みが入っており、中には2戸続きで借りたいという人もいる
現時点ではレザークラフト、陶芸、菓子工房、カフェ、古着店、バイクのメンテナンス、古物商、フードトラック、整体、織物、金継ぎ、鮮魚店、私設図書館、子どもの居場所など、入居を希望する人のやりたいことは多種多様
しかも、申し込んだ人たちの熱量の高さは担当者も驚くほど
「駅からの距離や不便さなどへの質問を想定していたのですが、その点についての事前の問い合わせはゼロ。また、仮申し込みした人たちには週に1回、公式LINEグループで進捗状況などの情報を発信しているのですが、そこに返信してくる人がとても多く、双方向のやりとりになっています。皆さんの“参加している感”、ポジティブさは私たちが関わる他の事業ではなかなか見られないほど。非常に期待されていることがわかります」
ある意味こうした物件を待っていたという人たちが集まっている
実際、現地を訪れた瞬間に「こういうのを求めていた」と言う人も少なくなかったという
その理由は
1つはコロナ禍を経て暮らし方、働き方が多様化し、副業、複業や週末起業したい人、小さく独立したい人、在宅で働く人、好きなことに時間を割きたい人などが増えているのに対し
住宅はそれに追いついていないことがある
例えば、アトリエや工房などとして使える空間を持つ物件は世の中にはそれほど多くはなく
しかも好きにDIYでき、好きなように使えるとなるとほとんどない
加えて音を出してもいい物件はレア中のレア
ところが月見台ではそれらがすべて叶う
店舗も同様で高い保証金を出さなくても、ここなら住宅なので礼金、敷金1カ月ずつからで自分らしい店を始められる
住戸は広さ30㎡弱から37㎡の2DKで店舗などとして使えるのはそのうちの2分の1の面積まで
家賃は6万~7万5000円(税別)、管理費は5000円(税別)でけっして広くはないが、副業、複業などを試みるには手頃なサイズ
住みながら始められるのでうまくいかなくても店舗を別に借りることに比べるとハードルははるかに低い
また、敷地内に58戸がまとまっている点も心強い
すべてが店舗などになるとは限らないが、少なくとも孤軍奮闘でないことは確か
ある程度の数が集まっていればそれだけで人が集まってくるようになるはず・・・
空間の豊かさとそれが生む緩さも魅力
車の入ってこない広い敷地内では子どもが自転車で遊んでいても、道路でお絵描きをしていても安心
住宅同士が離れていることもあって都市の住宅街のようにあれをしちゃいけない、これもダメなどといった厳しいルールはない
「訪れた方からは『子どもの頃に住んでいた団地を思いだした』という声を聞きました。今、申し込みされているのは30~50代が中心ですが、彼らにとって団地はノスタルジックな存在なのかもしれません」
元々の住戸内は和室中心の、いかにも昭和の団地といったもの
駅からの道のりを含め、それを不便と感じていない人も多い
現地は自然が近く高い建物がないため、空がとても広いなど都心から1時間圏とは思えない風情だが
実際のところは坂を下りていけば駅があり、東京駅や成田空港までの直通便もある
少し南に行けば商業施設も揃っている
都市の賑わいをうっとうしく感じ、どこか郊外に拠点を持ちたいものの、そこまで遠いところに行きたいわけではない
という人からするとほどよい距離感の場所と感じるらしい
「当社の拠点である鎌倉に長く住んでいる人の中には今の鎌倉は賑わい過ぎていてここじゃない、違うという感覚をお持ちの方々がいらっしゃり、月見台はその方々にも好評です」
それほど離れているわけではないのに都市の賑わいからすっぱり切り離された異空間それが「今いる場所ではない、どこかに行きたい願望」に火をつけているのかも
もう1つ、このところ町づくり関連の取材先でよく聞く
村を作りたい願望 も秘められているのではないかと
村といっても地方自治法でいうところのものではなく、もう少し小さな、顔の見える関係で成り立つ集落といったようなイメージだろうか。
もう1つ、このところ町づくり関連の取材先でよく聞く、村をつくりたい願望も
自治法でいうところのものではなく、もう少し小さな、顔の見える関係
従来の集落と異なるのは地縁、血縁でつながる関係ではなく
生き方や目指すものなどへの共通性、共感で緩くつながるような集まりであること
住所、年齢、勤務先や家族構成まで全部筒抜けの従来の地域団体とは違う
なんだったらハンドルネームだけの関係ながら皆で目指すものに関しては強いつながりを持って動く
ここ数年日本のあちこちの取材先で聞く村はおおよそそうしたもののようで
非常に雑駁な言い方をすると地方に多いとされる過干渉な関係、都市の特徴のように言われる没交渉な関係のちょうど中間くらいの関係性?
これまた雑に言うと
「ほどよい距離感の、居心地のいい人間関係のある集落を作りたい、そうした人間関係の中で暮らしたい」?
その観点からすると月見台は互いの顔と名前が一致するくらいの規模
そもそもこの場所に関心を持ち、何かやってみたいと思う時点で方向性は近しいと推察できる
これまでにない場所で、これまでと違う仕事に挑戦し、そこで新しい関係を紡ぎたい
月見台再生への期待がかなり大きい人たちが集まってくる・・・
・・・住み方への模索
いわゆる地方への移住とか
時に、初めに思ってたのと違う・・・とか
ならないとイイですね
今日は~
中国オニマメズタ/Lemmaphyllum pyriforme Ching
仕立てた時は、もっと細長かった
その後
何回か落とした
で、寸詰まり、丸く
葉重ね良くミチミチ
・・・裏が少し空いてるけど
その内、玉が縮小
仕立て直し
何かいい手はないものか・・・