2023年10月11日水曜日

あらゆるサービスを1つのプラットフォームで

「客が店を評価するだけでなく、店が客を評価できる。無断キャンセルや低評価を2回以上つけた『好まざる客』は店側から排除されてしまう」
中国の街中では、黒地に黄色のロゴのデリバリーバッグを背負った自転車やバイクをよく見かける
一見、ウーバーイーツのようにも見えますが、これは中国最大手のフードデリバリーサービス メイトゥアン(美団)の配達員
中国国内におけるフードデリバリーの利用者は約4億7000万人(2021/6末時点)
全人口の1/3
長引くコロナ禍と中国当局によるゼロコロナ政策の影響もあって、この数年で中国国内のフードデリバリー市場は大きく成長
そのフードデリバリー大国の中国で、市場をほぼ独占しているのがこのメイトゥアン

メイトゥアンは市場の67.3%と圧倒的なシェア
もともとグルーポンのようなオンライン共同購入型クーポンを販売していたメイトゥアンと、食べログのような口コミ型のグルメサイトを運営していた大衆点評が、2015年に合併して誕生

ウーラマから遅れてフードデリバリー事業に参入したメイトゥアン
信頼性の高い口コミが集まるグルメサイトと、短時間で配送するフードデリバリーの相乗効果によって、総合グルメプラットフォームとしての地位を確立
ウーラマを大きく引き離した
近年では、食の総合プラットフォームからホテル検索・予約サイト、自転車シェア事業、タクシー配車事業、生鮮食品のEコマースなど、事業領域をライフスタイル全般に拡大
2018/9には香港証券取引所に上場
2022/6時点での時価総額は$1496億で、中国テック企業の中でテンセント、アリババグループに続く第3位
BATの三強を脅かす存在と・・・

日本の場合ウーバーイーツのようなデリバリーサービスで選べる店舗はそう多くありません
特に深夜帯などはぐっと選択肢が狭まる
しかしメイトゥアンは、チェーン店のような大規模店舗だけでなく
個人で経営している店舗や、店舗がない飲食店(宅配専門店)も登録でき店舗数は膨大な数
そのうえ各店舗が会員向けに独自のサービスを提供したり、タイムサービスなどで思い切った割引を提示したりするため、選ぶ要素が多いのも特徴

日本では、ファミレス、牛丼、ファストフード、ピザなどの大手チェーン店が席巻しています
特に地方に行くと食べログに上がってくる地元のパン、ラーメン店がほとんどですが、中国は店舗数が多いので、一品で攻めてくる多種多様な飲食店が掲載されている
メイトゥアンを利用するには会員登録が必要
日本の食べログのように無料・有料会員の差別化はないものの、使った金額や頻度によって優待度合いが上がる仕組み

また検索要素が豊富
日本の食べログは、ジャンル、位置・距離、シチュエーション、金額、キーワードですが
メイトゥアンではさらに細分化されて、利用者のニーズに合わせた検索が可能
検索要素としては
・ジャンル
・位置・距離
・シチュエーション
・キーワード
・割引率 ※ここが日本と違う
・オンライン共同購入型クーポン(グルーポンみたいなもの)のフラッシュセール
・タイムセール
・飲食する場所――テイクアウトか店舗か
・商品券の先買い(前集金型ビジネス。4500円の券で5000円のコースが食べられる)

店舗に行くのであれば、メイトゥアンの中でタクシーの手配や席の予約まで完結できる仕様
掲載店舗数も多く、店舗の中でも細かくメニューによって割引率などが分かれているため、利用者にも検索スキルが求められる
高齢者や、スマホ操作、検索スキルに長たけていない人に優しくない?
という声があるかもしれませんが、そういった方にはAIによるサジェスト機能や、プロモーションでレコメンドされる店舗があるため、そんなに悩まずともお店を選ぶことができる

メイトゥアンと食べログのもう一つの違いは
検索できるサービスの幅広さ
メイトゥアンは飲食店だけでなく、宿泊施設、クリーニング、家の修理、カラオケ、電子書籍などおよそ生活に必要なものはすべて検索・調達できる
初回会員は無料などの特典や割引を伝えるだけでなく
サービスやメニューの売上実績も記載されているた
どのくらい利用者・購買者がいるのかが一目瞭然
中には店内飲食の評価は低いのに、テイクアウトの実績数が飛び抜けて多い店舗が
そういう場合はテイクアウトの割引率が非常に高いことも多い
ライブの動画配信で商品を手に取り、性能を説明する店舗も
どれだけ美味しそうな写真を掲載しても、実際に店で注文したら肉の量が少なかった、彩りが悪かったという経験は、誰にでもあると
中国では、これに厳しい目が向けられている
動画配信はユーザーから信頼を獲得する重要なツールとして活用されてる

メイトゥアンにある多くの店舗では、チャットで問合せすると10秒以内に返信が
深夜であっても同様
この迅速性も利用者からの評価対象
飲食店ではこのほか、味はもちろん、店員の応対、サービス、店舗の清潔さなども対象
当然、利用者は評価が高い店舗を選ぶため熾烈な争いが
その結果、優良な店舗・サービスだけが生き残る

ユーザーが店を評価するのはもちろんですが、メイトゥアンのグルメサイトでは
店側もユーザーを評価(ユーザーの評価は非公開
予約したのに来店しなかった、不正なキャンセルをした、2以下の低評価を複数回つけた、などの利用者を店側が拒否できる機能が設けられています
評価の低いユーザーが検索してもヒットしないようにしたり、店が表示されても割引が一切つかなかったり、いつも休業の表示をすることもできる
そうすると低評価のユーザーは、その店に来店しなくなります
結果、好まざる客が排除され、その店にとっても大きなメリットがある
メイトゥアンのプラットフォーム上では、店舗も守られる

グルメサイトの域を超えて、ライフスタイル全般において、ほしいものをすぐ届ける社会インフラを確立したメイトゥアン
そのビジネスモデルのポイントはいくつかありますが、特筆すべきは最小1km四方の細かいセグメンテーション
メイトゥアンの口コミサイトでの評価ランキングは、基本的に1~2km四方の範囲で常に並び替えが行われ
有名な店舗でなくても上位にランクインされるチャンスが
中国は日本とは比較にならないほど飲食店の数が多く、2km四方でも2000軒超の店舗が
競合店がひしめく中で上位にランクインされるのは容易ではない
そこでメイトゥアンは、飲食店の稼働率が下がる深夜や、定休日が多い曜日に営業している店舗のランキングが上位に表示される独自のアルゴリズムを構築
すると上位にランクインされたいがために、ライバル店の空白の時間を狙って深夜などにオープンする店舗が増えた
細かくセグメントされているため、小規模の店舗でも収益性の高い、効果的な広告を打てる
そのため稼働率の低くなる空白の時間に、ユーザーを誘導することも可能
たとえば、22時から半額!と付近のユーザーにプッシュ通知を送ります
「21時くらいに夕食を食べよう」と予定していたならば、「半額になるなら1時間待ってみよう」と思わず誘導されてしまう
こうした仕組みを活用し、あらゆる空白を埋めていく
しかも店に行かずとも短時間で自宅まで届けてくれる
24時間すべての時間帯で需要と供給がうまくマッチングされ、「空白が埋まる」仕組み


ビジネスパーソンに人気の前集金型クーポン
メイトゥアンの強力なアルゴリズムは、先々の未来の空白までも埋めようと
未来とは? 
ここでスポットの取引ではなく、先々のサービスも含めてバルクで一括購入する前集金型のビジネスが台頭
たとえば
「管理栄養士が監修した栄養バランスのよい弁当をオフィスまで届けます」
というサービスをうたっている飲食店があるとします
その飲食店は、メイトゥアンのアプリを通じて
「1カ月分の前金を支払ってくれたら、1食800円のところ600円でご提供します」
とプッシュ通知で呼びかけます
この前集金型のクーポンが、都心に出勤するビジネスパーソンに人気

個人情報を提供する代わりに“お得”が手に入る
あらゆる空白を需要と供給で次々に満たしていくメイトゥアン
そのマッチングを可能にしているのが、スマートフォンのアプリを通じて収集されたユーザーデータ
メイトゥアンでは決済システムも自前で保有しているので、個々のユーザーごとに
「誰が、いつ、どの時間帯に、どの飲食店を利用したか」というユーザーの消費行動を細かいレベルまで把握
同じ飲食店でも、店内で食事をした情報と、デリバリー注文した情報がバラバラでなく、ユーザーIDを軸に常に同期されてる
こうした取引に関するデータだけでなく、自転車やバイクで配送する際の路線データまで収集
そのデータも日々AIで解析されラストワンマイルを常に最適化し、配送ルートの精度を磨き上げている

メイトゥアンは、豊富なユーザーデータを武器に「ほしいものが気軽に見つかり、お得なクーポンで購入でき、短時間で自宅まで届く」という体験価値を生み出すプラットフォームを確立
2018年にはスーパー・コンビニ向け配送サービス、美団閃購
2021年には医療・ヘルスケアサービス、百寿健康を立ち上げるなど、サービス領域を飲食から生鮮食品、美容、医薬品へと拡大
領域が広がるほど多くのユーザーデータが蓄積され、さらに詳細なユーザーのペルソナを把握できる
メイトゥアンを利用すればお得に飲食できますが、それは利用者のデータがプラットフォームに取得されていることでもある
24時間365日、プラットフォームに監視されている
一方、利用者はその時の気分や費用感に合った商品、サービスを膨大な店舗の中から自分で選び、見つけ出す喜び?を体験
あまりアプリを活用していない人、クーポンの割引率だけ見ている利用者にはプッシュ通知が届き、アプリに選ばされる
利用者の中には、初めて買う人は1個無料、半額などの、初めてサービスだけを渡り歩く人も
そんな中でも、美味しかった、安く買えたなどの成功体験からお気に入りの店舗ができる
過当競争を強いられる店舗側にとっても、少しでも多くの顧客を獲得できるメリットがある

中国はサービスが悪いというイメージを持っている人がまだいるかもしれません
しかしそれはすでに過去のものになりつつある
態度が悪い配達者、接客が悪い店舗は、アプリを通じて低評価がつけられ、淘汰とうたされる
その結果、サービスの質は全体的に向上

いまではホテルでも出前が取ることができ、高級ホテルの前には出前専用のロッカーがあるほど
こうしたサービスはコロナ禍で一気に加速
日本だと持ち込みNGの概念がありますが、そんなことはもう利用者のニーズの前に消し去られている

・・・監視されるのが
アタリマエな社会だから、できる?

今日は~
キロスキスタ パリシー/Chiloschista parishii

ハッパが2枚に・・・
ヘゴにコケをつけたんで
根っこに光が当たりにくい?
コケを使わなければ良かった?

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