2025年11月8日土曜日

夢物語 ビットコイン

最近刊行された『サトシ・ナカモトはだれだ?』(ベンジャミン・ウォレス著、小林啓倫訳、河出書房新社)
が暗号資産に関心の高いひとたちのあいだで話題になっていると
ネタバレしてもかまわないと思うが、本書を最後まで読んでも謎は解明されない
2008/10/31サトシ・ナカモトはビットコインの仕組みを説明するホワイトペーパーを発表したあと
何人かの支援者とメールやメーリングリストで交流し、2009/1にビットコインの最初のソフトウェアを公開
だがその翌年の末頃から開発の中核的な役割を協力者たちに譲るようになり
11年初頭には活動をやめてしまう
その後、14/3/7『ニューズウィーク』誌が
ドリアン・ナカモトという日系アメリカ人をサトシだと報じたとき
SNS上に「私はドリアン・ナカモトではない」
というメッセージを投稿したとされるが、それ以降、完全に姿を消してしまった

サトシが創造したビットコインは、2010年にピザ2枚に対して1万ビットコインと交換されたが、その後の15年間でこのピザの値段は$12億になった

創造主であるサトシのウォレットには推定110万ビットコインが保有されており、その時価総額は1350億ドル、日本円にして¥20兆ちかくになるが、この莫大な資産は2010年以来、$1たりとも動かされていない。
この要約でもわかるように、サトシの物語はイエス・キリストによく似ている?
ホワイトペーパーはビットコイナー(熱狂的なビットコイン支持者)にとってのバイブル(聖書)であり
その創造主は何人かの弟子とともに布教に努めたが、ほどなくして身を隠してしまう
3年後に一瞬だけ“復活”したものの、それ以降はいっさいの痕跡を残していない
そして(すくなくともビットコイナーにとっては)、サトシはイエスと同じく人類を新たな世界へと導いたのだ?

ジャーナリストのベンジャミン・ウォレス氏
「革命的な技術を考案し、それを世に送り出しながら名声を求めなかった人物というのは、近代科学史において前例がなかった」
なによりもひとびとの好奇心を刺激し、魅了するのは¥20兆という天文学的な富(Google創業者のセルゲイ・ブリンと並んで世界10位の富豪に匹敵する)に
なんの興味もなさそうに思えることだろう
このことは、人生にとって、あるいは幸福にとって、富とはなんなのかという根源的な問いを突きつける

ウォレス氏はビットコイン草創期の2011年6月に、『ワイアード』誌の取材でサトシについての調査を始めたが
この謎にのめり込んだきっかけは
21年末にサトシはイーロン・マスクだと信じるスペースXの元インターンからメールを受け取ったことだった
未知の感染症が世界に広がるなかでビットコインはわずか1年で8倍に高騰
暗号資産界隈は熱狂に包まれていた
そこで、この謎には挑戦する価値があると思うようになったのだ
本書の魅力はサトシとともにビットコインを開発・普及させたさまざまな人物(その多くが奇人変人)が次々と現われることだ
そしてウォレス氏は、コード・スタイロメトリー(プログラミングの筆跡鑑定)
という手法を使って候補者を絞り込み、真相を確かめるためにオーストリアの片田舎に向かう

ここではビットコインの背景にあるサイファーパンクの思想について書いてみたい
サイファーパンクは暗号(cypher)とサイバーパンクをかけた造語で
1992/2の第1回クリプト会議で誕生した
クリプトはcryptograph(クリプトグラフ)の略で、日本では仮想通貨と誤訳されているビットコインなどは
英語ではcrypto(クリプト)と呼ばれる
ブロックチェーンを使ったデジタル通貨が暗号から生まれたからだ(したがって訳語としては暗号資産が正しい)

カリフォルニア州オークランドにある数学者エリック・ヒューズの自宅で開かれたクリプト会議に参加した20人は、原理主義的なリバタリアンであり
暗号アナキストでもあった
彼ら(そのほとんどはきわめて高い論理的・数学的知能をもつ男性)は国家による支配・統制を忌避し
西部開拓時代のアメリカのように、完全な自由と自己責任の世界に生きることを求めていた
在野の研究家フィル・ジマーマンは、情報機関でも解読できないRSA暗号を簡単に使えるフリー・プログラムPGP(Pretty Good Privacy:プリティ・グッド・プライバシー)を公開し
そのことによって連邦政府に刑事告発された
その当時PGPは米国内では自由に使えたが、政府武器輸出管理法によって輸出禁止にされていたため
このプログラムが米国外でダウンロードされると開発者が罪に問われるのだ
国家が個人の自由に介入すべきではないと考えるリバタリアンにとって、これはとうてい容認できない暴挙だった
そこでサイファーパンクたちは、PGPのコードの印刷物やデジタル版を国外にばら撒いて米国政府の規制を無意味なものにした
(同様に、輸出禁止となった暗号プログラムをTシャツにプリントして国際線に乗り込んだり、タトゥーとして彫る者もいた)

リバタリアンが暗号にこだわったのは
政府が国民を管理・統制するためには、個人を単位とする情報(誰がいつなにをしたか)が必要になるからだ
それを暗号によってすべて秘匿してしまえば、政府はなにもできなくなる

同様の理由で、リバタリアンは国家が発行する通貨を深く疑っていた
とりわけ(通貨と金との交換を保証する)金本位制が廃止され通貨が国家の信用のみによって発行されるようになると
そもそも国家を信用しないリバタリアンたちは、中央銀行や金融機関のような中央集権的組織のない分散型の通貨の開発を目指した
この第一次暗号革命は1990年代のITバブルの頃に盛り上がったものの
2001/9/11の同時多発テロを機に
実験的に使われていたデジタル通貨が、テロリストのマネーロンダリングの道具になっているとして規制されたことで頓挫
だが2008年のリーマンショックとその後の世界金融危機によって国家への信頼が揺らぐと、ふたたび国家に依存しないマネーが注目されるようになった

サトシ・ナカモトは暗号アナキストの積極的な活動家ではなかったものの
1990年代からサイファーパンク運動のきわめて近くにいて、ビットコインの開発を(おそらくは一人で)続けていた
それが公開できる水準に達したと考えたときに、暗号技術のメーリングリストを選んだのは当然だった
サトシはネットワークへの投稿で
「仮想的で、地理的な制約のないコミュニティが、新しい経済のパラダイムを実験していくというアイデアが、私は大好きなんです」
最初期のビットコインの協力者へのメールで
「90年代にはもっと多くの人々が興味を持っていたと思うのですが、10年以上にわたる『信頼できる第三者』をベースとしたシステム(デジキャッシュ)などの失敗によって、諦めてしまったようです
私は今回の取り組みが、信頼に頼らないシステムに挑戦する初めての試みだと思っています」
ここでいう「信頼できる第三者」とは通貨の信用を担保する中央集権的な組織のことで
そうした中心のない(分散型の)通貨をはじめて開発したのだという自負が感じられる
ウォレス氏が何度も繰り返すように
不可解なのは
暗号によって国家のない世界をつくるという奇妙奇天烈な目標(妄想ともいう)に夢中になるのは、ごく限られた人間だけにもかかわらず
その関係者をどれほど取材してもサトシの正体にたどり着けないこと
ここまで徹底して匿名性を守ってきたのは
ビットコインの今日の成功(それにともなって創始者である自分が世界的な注目を集めること)を
ブロックチェーンのアイデアが影も形もなかった1990年代から予見していた?
サトシは莫大な富に関心を示さず、俗世の喧騒から逃れて静かな暮らしを選んだ賢者や仙人のような人物として、今後もますます神格化されていくだろう

・・・その崇高な?志にもかかわらず
ビットコインは投機の対象となり
ナネ-ロンダリングetcの手段に
そして銭とエネルギーの浪費を引き起こしてる

今日は~
デンドロビウム ロディゲシー/Dendrobium loddigesii

8月終わり
矢が外れた
なんかねが2段に生えてる
で、前に乾かし気味に・・・ということで
バーク小粒で植える

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