2020年11月7日土曜日

イスラエルによるパレスチナ自治区の併合と占領の合法化プロセス


イスラエルによるパレスチナ自治区の併合と、占領の合法化プロセス

3度の繰り返し選挙を経てようやく今年5月に成立したイスラエルの新政権、連立合意としてパレスチナ自治区の一部にイスラエルの主権を適用するための立法手続きを7月1日以降に開始することを掲げていた。具体的にはヨルダン川西岸地区の一部と、ヨルダン渓谷沿いの土地が対象と想定される。イスラエルの占領地を拡大し、国内法的に合法なものとするためのステップ。
こうした併合の開始をネタニヤフ首相は「1948年(のイスラエル建国)以来の歴史的な機会」と
トランプ政権の成立以後、エルサレムを首都と認められアメリカ大使館がエルサレムに移転し、イスラエルにとってはまさに歴史的な喜ばしい展開が続いてきた。
アメリカ大統領選挙で結果は見通せない。だが、万が一政権交代が起きた場合、アメリカの全面的な支持を期待しながらイスラエル政府が動けるのは今年いっぱい?
イスラエルがアメリカ大統領選挙の動向を見据えながら行動に踏み切った例は、これまでにもある。2008年の大統領選挙で民主党のオバマ氏が大統領に選ばれたとき、年末の12月から1月にかけてイスラエル軍はガザ地区に大規模な攻撃をかけた。3週間余りに及んだキャスト・リード作戦は、オバマ大統領の就任式2日前に一方的に停戦が発表された。この戦闘でパレスチナ側には1,100人以上の死者と5千人以上の負傷者が出た。オバマ大統領が就任直後、中東和平への関与に積極性を示し、6月のカイロ大学での演説で中東イスラーム世界に歩み寄りを示したことからすれば、イスラエルにとっては正しい戦略的判断だったということになるだろう。
とはいえネタニヤフ首相が言うように、占領地の併合については、今回が建国以来の転機というわけではない。イスラエルによる占領地拡大は、実際には1967年の第三次中東戦争でエルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区を軍事占領し、1981年にはゴラン高原を併合するなど、段階的に進められてきた。今回は、39年ぶり(ゴラン高原併合以来)の大規模な領土併合ということになる。また1993年のオスロ合意締結後も、和平交渉のかたわらで入植地の建設は着々と進められてきた。イスラエルの平和運動団体ピースナウによると、西岸地区には現在、132か所の入植地(東エルサレムを除く)があり、約42万7千人のユダヤ人が住んでいる。これはイスラエルの総人口の5パーセントに満たないが、西岸地区に住むパレスチナ人約290万人から見れば大きな脅威。
ヨルダン渓谷に住むユダヤ人は1万人程度とされるが、隣国ヨルダンとの境界地帯を成すため、この土地自体が軍事的要衝となる。この渓谷の併合は、第三次中東戦争後に当時のイスラエル労働相だったイガル・アロンが提唱しており、ある意味では宿願の達成といえる。長らく境界設定の際にはあまり言及されてこなかったが、今年1月のトランプ大統領による世紀のディールでは分割案として、この渓谷地帯をイスラエル側に含めることが提案されていた。
今回の併合によって、何が変わるのか。そもそも7月1日現在、イスラエル側はまだワシントンの顔色をうかがっている状態で、その日のうちに何かの決定に踏み切ってはいない。1日当日にはイスラエルでこのための閣議が開かれる予定もなかった。しかし、リクードの高等教育相ゼエブ・エルキンは30日にイスラエル軍ラジオに対して「明日から時計は動き始める」と話しており、機を伺いながら法的な併合を進めるためのプロセスが始動したことは間違いない。
実際に併合が実行に移されるとして、想定されるのは、目に見える動きとしての人の追放や占領というよりはむしろ、イスラエル国内法における制度上の変化だろう。ワシントン近東政策研究所の分析によると、併合が完全に達成されたとしても、直接影響を受けるパレスチナ人は西岸地区住民全体の4.5%と推定されている。約11万人のパレスチナ人が、イスラエルにより新たに併合された土地に居住することになる。しかしイスラエル政府が求めているのは土地であり、人への管轄を主張しているわけではない。ネタニヤフ首相は、併合地域に残されたパレスチナ人は、ひき続きパレスチナ自治政府に対して選挙権をもち、イスラエル国民としての権利は付与されないと述べている。一方で彼らを居住地から物理的に追放することは限定された規模ではあり得ても大規模な動きは国際世論が許さないだろう。
それでは何が変わるのか?BBCの解説記事では今後の入植地建設への影響が指摘されている。これまでは西岸地区内で入植地建設のための用地を決定するには、首相と国防相による承認が必要で、そのために数カ月から数年が費やされていた。それが併合後は、イスラエル領内の一地域の問題となるため、入植地の新たな建設が比較的容易となるという。つまり、法改正によって将来的に入植地を増設する予定地を広範囲にわたり確保することで、ヨルダン川西岸地区の一部に対して実効支配を強化していくということだろう。
こうした占領の拡大はパレスチナ側にとって脅威であり、すでに実現可能性が著しく損なわれている紛争の二国家解決案の実現を妨げることになる。オスロ合意後の中東和平交渉は、パレスチナ側にヨルダン川西岸地区とガザ地区における独立国家の樹立を認め、イスラエルとの共存を図るという方向性で進められてきた。日本を含めた国際社会の多くは、この案を支持している。しかし1月のトランプ提案や今回の併合計画が進められれば、パレスチナ側に国として体を成す地続きの領土は残らない。すでに死に体だった交渉プロセスにとどめを刺すことになり、パレスチナ自治政府は強く反発している。
併合をめぐる動きに対して反対するパレスチナやアラブ側の反応は統一感と力強さに欠ける。パレスチナ自治政府のアッバース大統領は5月、併合案に抗議して、オスロ合意の遂行と、イスラエル側への協力を停止することを発表した。6月30日にパレスチナ政策調査研究所(PSR)が行った世論調査では、こうした停止決定への支持が7割を上回った。またイスラエルを支持し、世紀のディールを発表したアメリカとの政治交渉の再開に反対する声も7割を占める。だが同時にアッバース大統領自身の辞任を求める声も6割程度と変わらず高く、自治政府が長引く分裂と腐敗によって支持を失っている。市民レベルでの抗議デモは、エリコやガザ地区などで千人単位の規模のものが起きているがリーダーシップに欠ける感は否めない。
アラブ諸国では、アラブ連盟のアハメド・アブルゲイト事務局長や、ヨルダンのアブドゥッラー国王、アラブ首長国連邦のオタイバ駐米大使などが6月に抗議の声明を出した。とはいえ、ガザ地区が攻撃されたときに出された声明のような勢いはなく、今回の併合計画に対する反応は全体的に鈍い。具体的に何が起きるかまだ分からない段階では、反論もしにくいのかもしれない。国連は6月24日にグテーレス事務総長が安保理のオンライン会合で、併合を批判し撤回を求め、ベルギー、英国、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、そしてノルウェーの欧州7か国が、併合は中東和平協議再開の可能性を大きく損なうとする共同声明を発表した。日本でも新宿、大阪、札幌で抗議集会が開催された。国際社会の声はネタニヤフ首相に届いているだろうか。
今回のイスラエル政府による併合は、大きくとらえて占領を合法化するものといえる。合法化と言うと、何か事態が正常化され正しいことが行われるかのように響くが、実際にはそうではない。建国直後にイスラエルが制定した法律で、難民となったパレスチナ人の所有地は不在者財産として没収され、イスラエルの国有地として統合されたことを思い返すべきだろう。強者による法の制定と執行が、弱者の権利を侵害し、剥奪を固定化する危険は大きい。併合の合法化が、今後のさらなる占領地の拡大の足掛かりに・・・

・・・ジワジワいく・・・かの国みたく

今日は~
モナンテス・ポリフィラ/Monanthes polyphylla

植えなおした時 外れた芽?が
を別に植えた

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